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特集「男前」

2014年8月27日

特集「男前」 スーザン・サランドン テルマ&ルイーズ (1991年 社会派映画)

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監督 リドリー・スコット
出演 スーザン・サランドン/ジーナ・デイビス/ハーヴェイ・カイテル

わたしの眼は何色? 

 リドリー・スコットの代表作を一本だけあげよと言われたら「 エイリアン 」か「テルマ&ルイーズ」か、迷うな。「 エイリアン 」は1979年だ。スコットはすでに「 エイリアン 」のときに本作の萌芽はあった、つまり「新しいもの」への挑戦はあったと語っています。彼が「新しい」と言うのは従来とちがう女をつくることでした。「 エイリアン 」にせよ本作にせよ、ひとつも古くならないのは、その映画が時代の変わり目を体現していたからなのでしょうね▼スーザン・サランドンと同時にジーナ・デイビスがいいですよ。彼女の代表作にアカデミー助演女優賞の「 偶然の旅行者 」がよくあげられるけど、「 ロング・キス・グッドナイト 」や「 プリティ・リーグ 」のほうがずっとよかった。それでもベストワンとなれば本作だわ。彼女のテルマがいなければ、スーザンのルイーズだって、あれだけ際立ったかどうか。女優ふたりの後半部のシーンは砂漠の逃避行だった。赤茶けた土に熱風が砂を吹き上げる、車を走らせる彼女らはスッピンで髪も顔も服もほこりまみれ。ルイーズはダイナーの中年ウェイトレス、テルマは夫に抑えつけられている主婦。このふたりが一泊二日の旅行にでる。たった一泊二日だ。それでもテルマは夫に気兼ねして家を留守にすると言い出せず、当日メモだけ残して出発する▼テルマは世間知らずなうえ男に目がない。言い寄ってくる下心ミエミエの男に隙をつけこまれ、強姦寸前をルイーズに助けられる。ルイーズは男を射殺したのだ。ルイーズは殺人を犯したのは自分だからひとりで逃亡するつもりだった。スコット監督と脚本のカーリー・クーリーは、ルイーズがそう決めざるをえない過去の傷を隠しながら、でもなんとなく見当はつくやりかたで観客を術中に落としこんでいく。ところがつぎからつぎテルマがドジを踏み、ルイーズの恋人が飛行機にのってわけもきかず届けてくれた現金6000ドルを、一夜を共にしたゆきずりの若い男に盗まれる。このチンピラにブラッド・ピットが扮しなかなかよく似合う。窮地に陥りなすすべもなくなったルイーズに「わたしのせいね」とテルマは一言、スーパーの前で車をとめさせ現金強盗で金を作る。テルマもルイーズも、ごくありふれた中年の女だ。テルマはダメ亭主から逃げる気力もなく抑圧され、ルイーズが過去の傷から人間不信に陥っている。いいことがひとつもなく、それでも健気に生きてきた名もない女たちを、監督は大げさにかばうことをしないが、ルイーズの射殺事件の捜査に当たった刑事ハル(ハーヴェイ・カイテル)に答えるウェイトレスにこう言わせる。「あいつは殺されて当然の男だったわ。犯人の心当たり? 別れた女じゃない。とにかくあのふたりは犯人じゃないわ」▼本作にはどうにもこうにも、いい男としかいいようのない男がふたり登場する。ハルとルイーズの恋人ジミーだ。ジミーはルイーズと一度は別れたものの、あきらめきれない。ルイーズが困っているとなると理由をきかず助けにくる。金の使い道も聞かない。そしてまあ「結婚してくれ」と差し出した小さな箱はもちろん指輪である。ルイーズは受け入れない。男をまきこまないため、ルイーズはジミーを帰らせる。スーザンの筋目が通った硬質な演技。ハルはハルで緻密な捜査から真相を把握していた。男たちに踏みつけられてきた、運の悪かった女たちにこれ以上犯罪を重ねさせたくない。射殺もやむなしとする捜査の責任者に言う。「考えてやれ、痛めつけられっぱなしの女なのだぞ」▼監督は女たちに泣かせることも嘆かせることもしない。強盗を働きタンクローリーを炎上させ、パトカーの警官をトランクに監禁し、「こんな目覚めた気分はじめてよ。未来に希望があるって気分よ」生き返ったようにテルマが言う。「浜辺でマルガリータを。ふたりの家を買うのよ」とルイーズ。「わたし働くわ、クラブメッドかなにかで」。メキシコ国境を前に、ふたりは捜索網に囲まれる。車の前は断崖だ。「このまま行って」とテルマ。「このまま?」「このままよ」「本気なの?」ここで投降したら待っているのは裁判と電気椅子だ。テルマはきっぱりと頼む「出して」断崖に向かって車を出せというのだ。テルマの気持ちをルイーズは一瞬で理解する。スコット監督もカーリーも、いくつかエンドシーンを考えあわせたが「どうしてもテンションを落としたくなかった」監督の決断でダイブするあのシーンが採択されました。映画史に残るラストシーンです。いい映画にはいいセリフがあるという見本みたいな場面があります。再会したジミーはルイーズと初めて会ったときの思い出を話す。「あのとき君はこう言った。目を閉じて、わたしの眼の色は何色と」「あなたはわからなかった」「今はわかる」。相手の瞳を深く覗きこんだことありますか。ちょっとやそっとの親密さでは成り立たない会話をきちっとおさえています。

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