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シネマ365日

2014年9月8日

ダイアナ (2013年 伝記映画)

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監督 オリヴァー・ヒルシュピーゲル
出演 ナオミ・ワッツ

ダイアナの愛情物語

 イギリスでこの映画が酷評だったというが、そら王室側に立てばそうなるわね。婚家で息苦しくなった嫁の葛藤とか、しきたりと伝統になじまない嫁を迎え入れた夫側の困惑とか、つまり生まれたときから帝王教育で鍛えあげられた夫にとって、結婚してみれば全然話があわないとわかった妻が、庶民派のプリンセスとして王室のだれよりも人気者になってしまい、それがまるで「お前の監督不行き届きだ」と父王はいたく不機嫌、嫁と父にはさまって悩んだ夫は、田舎の領地に引きこもりになったあげく昔の彼女とヨリをもどしたとか、それなら、と妻も不倫の仕返しをした(彼女はBBCのインタビューで告白している)とか、姑(エリザベス女王)との同居が長引き、夫に訴えてもラチが明かなかったのが別居につながったとか、そういう水面下の業火のようなしがらみはほとんどノータッチで、ダイアナのラブストーリーに焦点を絞ったのが本作だ。だから「元妃殿下」の実像を伝えていない、けしからんと怒っても、映画の狙いがちがうのだよ▼しかしどうみてもダイアナ寄り100%の映画ね。チャールズに関してはわずか一言の言及しかない。「こんなに愛している、男はみなそう言うわ。チャールズはそれさえ言わなかったわ。わたしを愛している、世界50億の人間がそういう、その中のだれがそばにいてくれるの」。ダイアナとは市井の女性には想像もつかぬケタちがいの単位で愛されておられるのですなあ。美人で母性豊かで気立てのやさしい妻のどこが皇太子は気にいらなかったのか、プロポーズしたのは自分だから自業自得でしょうが。しかしまあイギリス国王となる男性に普通の男の規範ややさしさを求めるのもちょっと無理があるのでは。夫の妻への期待のなかには国事と国務を補佐する能力というのも当然あったと思われる。ダイアナは「わたしは人を助けたい、助けるお手伝いをしたい」と劇中言うが「人助けよりオレを助けてくれ」とチャールズは言いたかったのでは▼さて肝心のダイアナのラブストーリーであるが、相手はパキスタン人の心臓外科医ハスナット・カーン博士。事故死したドディ・アルファイド氏と結婚を前提にダイアナが付き合っていたと言われていたが、映画が明かした真実は〈本命ハスナット〉だった。ところがパキスタンの習慣なのか宗教的な問題なのか、ハスナット家で最大の権力と持つのはハスナットの母親で、彼女は離婚したカトリック教徒の女性との結婚は絶対に認めない。ダイアナは二度もパキスタンに行きハスナットの大家族の実家を訪問し、理解をとりつけようとしているのに、肝心のハスナットが及び腰で、母親を説得した様子が全然ない。おまけに子供のころから目立つのがきらいな性格だったのに、ダイアナといると「世界を相手にするのと同じ」だと目立ちまくることを怒る。はじめからわかっていたでしょうとダイアナは言い一度は別れるのであるが元の鞘に納まり…イギリスを離れ外国で暮らしたいと、外科医としての就職先を斯界のナンバーワンに頼むと余計なことをするとまたもや男は怒り、ダイアナはデートのときは変装し、夜の夜中に公園で会うとか、八方手をつくして結婚の可能性をさぐるのだが、男がビビっていることと、それと、これは映画ではふれていなかったけど、26億円現金一括払いという莫大な慰謝料、ケンジントン宮殿での居住、一歩なかにはいれば出口もわからない宮殿だ。訪問した男が「ワインをもらってもいいかな」ときくとダイアナは「宮殿にないものはないわ」と答える。ウェールズ公妃の称号の使用、息子二人に4週間ごとにあう権利など、離婚したダイアナの条件は決して悪くなかった。再婚によってこれらは手放すことになるのか、ならないですむのか、どっちだったのか。もし手放すのなら再婚なんか考えものだと思っても、そう欲の深い女だということにはならないと思うけど▼「世界一有名な女性」と自他ともに許すダイアナの、結婚の精算についてまわる現実的な話がカットされ、世のため人のため尽くしたいダイアナばかり前面にでてくるから白ける。ナオミ・ワッツがそれをまた健気すぎるほどに演じている。超有名人ならみな背負わねばならぬ宿命があったはずだ。プライバシーのないこともそのひとつにちがいない。離婚して自分を束縛してきたものすべてからオサラバでき、生活と地位も名誉もすべてを保証された女と、そんな女を世間が放っておいてくれないと文句をいう男とのラブストーリーという設定に、感動しろというほうが無理だわ。ダイアナってほんとにこんなヤワな女だったのだろうか。ああそうか。彼女が劇中例えられたように「牝ライオン」をウサギみたいな女にしてしまったから、この映画と主演女優は袋叩きにあったのかよ。

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