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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月4日

特集 LGBT-映画にみるゲイ87
You and i (2011年 ゲイ映画)

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監督 ローランド・ジョフィ
出演 ミーシャ・バートン/シャンテル・ヴァンサンテン

確かめられる未来はない 

 ヒロインたちは年齢から言うとどっちも女子大生くらい。20歳になるかならないかでしょうね。ラナ(ミーシャ・バートン)はロシアの片田舎人口6万人のゴースクの食肉工場で働く娘。モスクワに行ってモデルになるのが夢だ。あたりは一面の麦畑。ぽつんとあるバス停にすわり、いつも持ち歩いている青い手帳に英語で詩をかきつける。隣にすわる母親が話しかけても母親が嫌いなので返事もしない。外国語を勉強すると夢に近づく気がするそうだ。「ここでやることは二つ。工場で働くこととウェンディと寝ること」ウェンディとは地元の有力者の息子でラナに惚れている。バス停の前をウェンディが取り巻き連中とチョッカイをかけるがラナは顔もあげず英会話のテープに集中。ガン無視である。英語で書いた詩の新作をSNSに投稿した。「あなたの詩は最高よ」と返してきたのがジェニー(シャンテル・ヴァンサンテン)だ。モスクワ在住のアメリカ人女子大生。ジェニーは週末の「t.A.T.u.」のコンサートにラナを誘う。ラナは大喜びで9時間バスにのってモスクワに到着。コンサート会場でジェニーに会う▼物語の展開は淡々としているのに、このふたりのやることがあぶなっかしくて退屈させない。生まれてはじめてモスクワにきたラナは珍しくて仕方ない。ジェニーが住む高級マンションも見たことがない豪華さ。でもジェニーは継母と仲が悪く、出張がちの父の留守中、母親といがみあってばかりいる。ジェニーはラナの詩に曲をつけ二人で歌い、動画サイトにのせた。コンサート会場でチケットは偽物だといわれ入場できない。モスクワでいちばん大きなクラブに行くことにした。そこでロシア・モデル業界の大物、エドワードにアタックしたラナは、ジェニーといっしょに入店。ラナに興味をもったエドワードが「ヴォーグのカメラマンを紹介する」と積極的に近づき自宅に誘う。行こう、行こうというラナに、ジェニーはそれがどんなことかわかっているのか、あんなやつにおもちゃにされるだけだと覚めている。豪邸に招かれたふたりは適当に男をあしらい「わたしたちに好かれたかったら消えてくれる?」エドワードを追い払う▼ふたりだけになってベッドイン。このあたりがよくわからないのですけどね。いったいいつこんなことをいうほど仲良くなったの。「数日だけだといって家をでてきたのに帰りたくない」とラナ。「ずっといて」とジェニー。モスクワについてまだ一晩もたってないだろ。ずっといて? 自分の家でもあるまい。たよりないことを大まじめにいいながら抱き合うのだけど、これがまた妙なラブシーンで、ふたりはシーツにもぐりこみモゾモゾ動くだけなのだ。お前ら修学旅行か。ジェニーが朝食を買いにいった留守にエドワードがラナをカメラマンにあわせると言って連れ出し、撮影中のスタジオにやってきた。有名カメラマンは本気で相手にする気なんかない。田舎者の娘だとハナからバカにし「自分のケツを鏡でみたか。大陸みたいなケツでモデルになるつもりか」とさんざん侮蔑し、泣きながらラナは出て行く▼監督はローランド・ジョフィ。カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した「ミッション」。「キリング・フィールド」もよかったですが、この人の緻密さというか、きめ細かさというか念入りというか、その感性がじつに如実にわかったのが「宮廷料理人ヴァテール」でした。料理はもとより衣装や庭園、室内と調度丁度など、史実の考証と再現の精密だったこと。こういう人がでもどうして(しつこいようだけど)ラブシーンだけ、アアもあっさり処理してしまったのだろ。それ以外この映画の重層的な構成って巧みなうえにも巧みです。世間知らずな女子ふたりがもてあそばれて棄てられ敗残者となり、サクセスも夢も無残に砕け散る人生、そんな危惧がヒロインふたりにはついてまわる、そんな失敗と頽廃と死のイメージを監督はていねいにヒロインの上に重ねていきます。オーバードースでみじめに死ぬ若い娘。華やかな世界の裏に横たわる軽薄な社会、残酷な闇。ケンカ別れしたふたりが再会したときラナは女囚、ジェニーは薬物中毒でした。ネット上の二人の曲を聴いた「t.A.T.u」のプロデューサーが「荒削りだが才能がある」とネット詐欺にもたぶらかされず、根気よくさがし続け、ラナの手帳にあったジェニーの電話にたどりついたのでした。彼のしっかりした大人の見識が、この映画の唯一の救いです。刑務所に面会にきたジェニーは「ロシア語を覚えた」と言い「愛している」と伝える。そして「この人達があなたをここから出してくれる」入ってきたのはほかならぬ「t.A.T.u」。彼女らは「あなたたちの歌を歌わせてもらう」と契約します▼プロデューサーはレコーディングに立ち会ったラナとジェニーに「幸せにな」。「これがわたしたちの結末?」とラナ。「いいえ。これは始まりよ」とジェニー。二人の愛情関係にもうひとつ綾がなかったように思うのですが、まあいいか「終わりよければすべてよし」。「t.A.T.u」は来日したこともあるロシアの女性歌手の二人組。彼女らが歌うラナとジェニー作詞作曲というのはこんな歌です。「孤独な夜わたしの唯一の希望は光/あなたの心が発する光/わたしたちの今と未来をあなたが信じてくれるから/わたしに力を与えて/いっしょにいられるように/確かめられる未来も否定できる嘘もない/絶望で不安も感じず恐怖で涙もでない/あなたとわたし/手と手を握って闘うの/いっしょに別れを告げるのよ/この関係は間違いじゃない/いっしょに人生を歩むのよ」確かめられる未来はない、というフレーズに、彼女らが選びとった人生の孤独がにじんでいます。みかけによらぬ辛口の映画です。

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