女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月5日

特集 LGBT-映画にみるゲイ88
少女たちの遺言(1999年 ゲイ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 キム・テヨン/ミン・ギュドン
出演 イ・ヨンジン/パク・イェンジ/キム・ミンソン

愛しき人、愛しき日々

 思春期独特のはかなさが詩的な映像で語られる。時間軸が頻繁にいれかわってわずらわしいが、これは女子高校生ゲイふたりの報われなかった愛と心中の話。シウン(パク・イェンジ)は陸上選手。ヒョシン(イ・ヨンジン)はコーラス部のピアノ担当。二人はお互いに大好きだ。そんなふたりの仲がおかしくなったのは、ヒョシンが教師と寝たからである。ヒョシンは美貌なうえに早熟だ。走ってばかりいるシウンよりすっと大人びている。それでもヒョシンが教師に別れを告げて教室を出ると、暗くなった廊下でシウンが待っていた。ヒョシンは黙ってシウンを抱きしめる。妊娠していたことをどっちもまだ知らなかったみたいだけど▼シウンがヒョシンの手を引っ張ってトイレに行く。クスクス笑いながら抱き合っていたら教師に見つかり、水を抜いたプールの掃除をいいつけられた。「ヒョシン、あんたのせいだよ」とシウンがブータレている。優等生のヒョシンが黙々とプールの壁を洗っていると「ヒョシン、壁ばかりみていたらバカになるよ」で、自分はどうするか。シウンは「うわ~ん」大声を張り上げモップを二本持ってプールの端から端まで走る。交換日記をつけようとこのときヒョシンが提案する。ヒョシンは書くことが好きだ。そんなの興味ないとシウンはいうが、授業の退屈しのぎになるとヒョシン。掃除を終えた二人は校舎の屋上にあがり昼寝をする。「ねえヒョシン、起きて」とシオンが揺り起こす。二人でくだくだつまらないことをしゃべる。「シウン。陸上選手はラーメン食べたら早く走れるらしいよ。でもシウンはラーメン嫌いだったよね」ヒョシンの膝枕で、目を閉じて聞いていたシウンは「ティッシュを取って」ヒョシンがわたしてやると「耳がよく聞こえない。医者は走るのはよくないというけど」「シウンに初めて会ったとき大きな鐘の音が聞こえた」ふたりは日がくれるまで屋上でテコンドーをしたりじゃれあって遊んでいる。世間の酷薄さをまだ知らない年頃の純粋な思慕がきれいだ。この映画のもっとも印象的なシーンだろう▼身体検査の日、体調が悪いので早退させてほしいとヒョシンが担任に頼んでいる。職員室に陸上部の申請に来たシウンがいあわせて、ふたりはテレパシーで会話する「ヒョシン、ひさしぶり。まだ通じるね」「使わない約束なのに」「元気そうだね」「31日と8時間ぶりだわ」1カ月前になにがあったのか。授業にヒョシンが遅れて入ってきた。シウンと手をつないでいる。「シウン、よその教室でなにしていた」と教師。つないだ手を放さないので教師はいらつきシウンをなぐりつける(すごいのね、韓国の高校って)。教室を走ってでたヒョシンはこのあと戻り、クラスの全員がいるところでシウンにキスする。シウンは抱きとめようかどうかためらいがある。ヒョシンは勉強はできるし美人だし、嫉妬を買っていじめられている。シウンだけが唯一心を許す存在だった。そんなとき若い教師から悩みを打ち明けられやさしくしてしまった(普通逆だと思うけど)。シウンはヒョシンの日記を読んで「それで、やったの?」「仕方なかったの。けっこう気持ちよかった。でもあなたとは別れたくない。黙っていてごめんね。わたしにはあなたしかないの」シウンはブスッとしていたがその言葉を聞き「ヒョシン、鼻が赤くなっている」あっというまに仲直りしている▼こんなシーンがある。どこか知らんが暗い部屋でシウンとヒョシンが寝転がっている。ヒョシン「あなたがそばにいないと不安なの」「どうする。背中をくっつけるの?」「少しでも姿が見えないと消えてしまった気がする」「心配なのはあんたのほうよ」「でもわたしみたいに心配にはならないでしょ」「信じているから」「うそ」「信じられないなら証明する。みんなの前で堂々と」こう言っていたシウンだけど、ヒョシンに強烈なキスをされてびびっちゃうのね。ふたりで牛乳を飲もうと昼休み時間、シウンの教室にいったヒョシンは自分をみて顔を隠したシウンにぐさっと傷つく。自分のクラスに帰ってきて日記帳に書きつけているとシウンが来る。「牛乳を届けたらすぐ帰るつもりだったのに」というヒョシンに、残酷にもシウンは「もう牛乳は飲まない」と言い、日記帳を引き裂いて放り投げる。ヒョシンがシウンの誕生日プレゼントにランニング・シューズを用意していた(これを履いて優勝してね、ほかのプレゼントもあるわ)とメモが入っていた。ヒョシンが屋上から飛び降りた日、シウンが「誕生日おめでとう」とヒョシンにテレパシーで伝えるのはふたりの誕生日が同じ日だからだ▼ヒョシンはこう言っていた「人には自分の音があるわ。だから時々不協和音が生まれる。わたしたちは素敵なハーモニーよ。新しい音が生まれるはずよ。ひとりが死んだら雨の日にもうひとりを迎えにくる。そのときこれが役に立つの」それが自殺用の薬だ。シウンは屋上で「わたしたちやり直しましょう」というヒョシンを冷たく突き放す。「一カ月前に戻りたい?」とシウン「言うとおりするから」と。しかしシウンの冷たい対応に「わたし死ぬかもしれない」ヒョシンはギリギリの気持ちをいうのだが「勝手にしな。この恥さらし」「シウン!」シウンはテレパシーで(ヒョシン、あんたは悪い子だね。あきれたわ。あんたを憎んだことはなかったけど、今日から永遠に憎むわ。誕生日おめでとう)…どこか成熟したヒョシンに比べ、シウンはしばしば思春期特有の分裂気味の不安定さを示します▼ヒョシンは飛びおりてしまう。学校中はパニックになる。これからヒョシンの怨霊が跳梁跋扈するのだがそれはたいして意味ない。シウンはピアノの裏にヒョシンが別れてから一カ月の間に用意していた「シウン誕生日おめでとう」の贈り物の数々をみつける。引き裂かれた日記帳があった。雨は土砂降りになった。嵐の中でシウンは鐘の音を聞く。自分がどれだけヒョシンを愛していたかに気づく。ヒョシンが迎えに来たのだと知る。狂言回しの役で第三者のミナがいます。ミナが最後を見届けます。シウンはひとり屋上に上がる。幻のヒョシンがいる。具体的な形は映りませんが落下していく視点から地面がぐんぐんアップになり鈍い衝撃音がする。違う解釈があるかもしれませんがシウンも飛び降りたと考えるのが順当ではないですか。すると「少女たち」という複数の遺言の意味がわかる。画面にふたたび、茜色の夕焼けをバックに、屋上でたわむれる幸福だった少女たちが現れる。あまりにも早く移ろった愛しき日々。少女期の愛の季節を悼む、その叙情に成功している。

Pocket
LINEで送る