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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月7日

特集 LGBT-映画にみるゲイ90
CHLOE/クロエ(2009年 ゲイ映画)

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監督 アトム・アゴヤン
出演 アマンダ・サイフリッド/ジュリアン・ムーア/リーアム・ニーソン

女の自己呪縛 

 「シネマ365日」で「クロエ」は書いたのですけど、書きたかったことを外してしまっていたような、どうにもそんな気がして落ち着かなかったものですから、もう一度見なおしたのです。するとよくわかりました。クロエ(アマンダ・サイフリッド)につきまとわれ、悪夢に追い込まれた女医のキャサリン(ジュリアン・ムーア)の強迫観念が悲劇を引き起こした、つまり原因はワルのクロエだと思っていたけどそうじゃなかった。そもそもキャサリンは夫が浮気しているものと思い込む、思い込んで娼婦であるクロエに夫を誘惑してくれと頼む。ここを、つまりキャサリンが、というより世のほとんどの女性が落ち込む自縄自縛の罠を見落していた。この映画は簡単にいうと、キャサリンの間違った思い込みのおかげでクロエというなんの罪もない娼婦が絶望し死んでしまう話です。もっというならキャサリンとはかなり自分勝手な女じゃないの。息子に対する支配欲なんか見ているとそう思えますね▼アトム・アゴヤン監督はキャサリンの落ち込む「自縄自縛の罠」を、劇中キャサリンに自分から説明させています。彼女が夫(リーアム・ニーソン)に言うこのシーンです。「年とともに魅力的になるあなた。白髪も中年男の魅力よ。身に起きることすべてに磨かれるあなた。わたしなんか消えてなくなりそうだわ。ただ年を重ねていくだけ。彼女(クロエ)と寝たわ。最初はあなたと1日に3回。そして1回に。週に一度になって出産したわ。わたしたちは親になりよき友になったわ。そして夜の生活もなくなった」「君からやめたのだ」「自分を見たくなかったからよ。昔とちがう自分を。鏡で自分の姿を見て思ったわ“誘惑なんかできない”と」…女が女でなくなる、いわゆる中性世代クライシス。若くてきれいでシミ・シワ・タルミのない女しか男を誘惑することはできないし、誘惑されるはずもない、とキャサリンは思った。キャサリンだけでしょうかね、そう思うのは。男の年齢は人生の勲章で、女の年齢は恥で醜いものなのか。男に誘惑されることが女の価値なのか。キャサリンがそう思っていたとしてもだれも彼女を笑えないですね。女は自分に対する自己呪縛からいつになったら解放されるのか、それを考えるとつくづく恐い。確かに男社会によって作り上げられた文化や制度は女の能力や才能や、いや、そんなおおげさなものでなくとも女の活動を制限してきたけれど、それはムチや拷問で女にいうことをきかせてきたわけではない。長い制度の歴史や教育、いわゆるしつけや道徳の規範が女のあるべき、理想的な肖像画を女自身に植えつけ、女が幸福に生きるとはこういうセオリーにのっとって生きることにほかならないと教えてきた。つまり意識下に精緻に構築された無意識の構造が女自身を呪縛してきた。だからってシミ・シワがあったって気にならないとは言わないけどね(笑)。そらエステにでもなんでも行くわよ。きれいなことはいいことだもん。それは自分のためにいいことだわ。どだい中年世代なんて、女が〈男の目に映る女〉の幻影にふりまわされていた過去の時代の話になりつつあるわよ▼すっかり自信喪失したキャサリンは、自分では夫に問い詰められずクロエを使う。クロエの背景は映画で叙述されないが、みるからに十代か二十歳そこそこの年齢で娼婦をやるのだから、恵まれた環境で成長したのではなかっただろう。孤独に育った美しく頭もセンスもいい娼婦が、自分にやさしくしてくれる知性的な女医の気をひきたくなった、うそっぱちを並べ会えるチャンスをふやし、息子まで誘惑してキャサリンとの関係を続けようとする。クロエが魔性の女? 自転車に乗って仕事に行き転んで破った網タイツは切らないで、脱ぐからと頼むつつましい娼婦が? 客と寝るときはどんな感じなのかとキャサリンに聞かれ「愛すべきなにかを探すの。小さなことでも笑顔を生む何かをね。そういうものって必ずあるはず。イヤな客もいるから心を広くするのよ。すると不思議なことが起こる。あなたみたいな人がわたしの日常に入ってくる」こんなクロエってけっこう性格のいい子だし、自分を助けようとするキャサリンの手をつかまず、自分から墜落していく魔性の女なんかいませんよ。アマンダはクロエを「愛を知らず他人と良好な人間関係を築いたことがない、壊れかけている女」と規定しました。大きな目を微妙に動かして(それでも面積が大きいから黒目が=青灰色だが=大移動したように見える)口数の少なさを逆に効果的にしました。アマンダっていい女優だと思いますよ。大女優と共演したとき、つぎのオファがでる女優と出ない女優がいるわね。制作後の公開インタビューなんかではだれでも共演者や監督のことをほめちぎるけど、あれは表向き。ホントはいるのよ、撮影中の態度やマナーの悪さに愛想をつかされ、あいつだけはもう勘弁しないってことになるやつが。あの子はいい子だから使ってソンはないわよと、何百人も女優を見てきたベテランスタッフの太鼓判や、脚本さえ書き換えさせるオスカー女優のお墨付きがあるのとないのとでは大違い。アマンダは大女優との共演が続いている。賢い子なのでしょうね。

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