女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月9日

特集 LGBT-映画にみるゲイ92
華の愛-遊園驚夢(2001年 ゲイ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ヨン・ファン
出演 宮沢りえ/ジェイ・ウォン/ダニエル・ウー

耽 美 

 「すべては過去の物語。夢のなかではまだ彼女の阿片の香りがする。花々が咲き乱れる華麗な庭園。貴族に落籍された歌姫は舞う。わたしは尋ねた、あなたが望むものは。彼女は答えた。あなたがわたしを想うこと。わたしはジェイドに魅了された。体からただよう阿片の香り…あなたより強い絆で結ばれている」。これはヒロインのひとりラン(ジェイ・ウォン)の独白です。舞台は1930年代の水の都蘇州。名門貴族の第五夫人となったのがジェイド(宮沢りえ)。独白中「あなた」とあるのは、ランの男の恋人のこと。ランが英語教師をしている国民学校に調査にきた官吏シン(ダニエル・ウー)とランは恋に落ちたものの、やっぱり自分はジェイドと強く結ばれていると言ってランは男と別れ、結核が進行しつつあるジェイドに寄り添いともに生きることを選ぶ。以上のようなラブストーリです。薄幸の歌姫に扮した宮沢りえがモスクワ映画祭最優秀女優賞を取りました▼中国の1939年代といえば蒋介石と毛沢東の国共内戦の時代です。名門ロン家も時代の波には勝てず、ジェイドの夫は阿片に逃避し、ジェイドは娘パールをもうけたもののすでに夫婦関係は名ばかり。由緒ある家財道具は売り食いで徐々に少なくなっていく。ジェイドは元いた妓楼・得月楼に戻るしかないなあとか考えることがあります。とはいうものの、ロン家の当主が催す誕生日の祝祭は豪華極まる。祝意を述べに当主の従姉ランが訪れ、ジェイドとの間にただならぬ感情が交錯する。祝宴にきたランは颯爽とした長身のタキシードで黒髪をなでつけ、垢抜けた貴族の振る舞いでジェイドの心をとらえる。ふたりはひんぱんに会うようになり(なにしろ名目は親戚同士だからね)、ジェイドのひとり娘パールもすっかりランになつく。ランは報国の志厚く、国のために役に立つ女子育成が必要であると考える進歩的な女性です。ある日ジェイドはロン家を追い出された。はっきり理由はわからないがランとふたり若い男の芸人をよび、遊興にふけったことが当主の不興を買ったのかもしれない。家をでた母娘をランは自邸に招き入れる。ランの実家はなんせ貴族だ。ランとジェイドは充足した日夜を過ごすがそこへ現れひっかきまわす男がシン。あれほどジェイドを愛していたランが、井戸端で裸になり体を拭くシンの裸体に棒立ち。あっさり抱き合うのは(ん? もうそうなるの)と思うほどあっけないが、なっちゃうのだから仕方ない▼ジェイドは毎晩帰りの遅いランを心配し「きのうも夕食たべなかったわね」とやさしく話しかける。ランは期末試験がどうだ、こうだと苦しい言い逃れをするが、いつまでもごまかしはきかない。ときどき妙な咳をし、血痰を出すようになったジェイドは症状をランに隠している。たまたま気分がよかったので娘を連れ散歩に出た公園で、抱き合うようにして歩いているランとシンをみかけすべてわかっちゃう。それでなくともはかなげなりえちゃんが、風にかき消えそうに立ち尽くす。ランは非常にはっきりした性格ですが、ジェイドはどこまでも受け身なんですよね。男に囲われ庇護されて幼い娘を産み育てている。ナンバー・ワンの歌姫でちやほやされた時代はもちろん、家庭に入ってからも水仕事も台所仕事、およそ家事雑事に家計のやりくり一切合切、執事と乳母が受け持ってきた。ところが執事が戦争にとられ自分は離縁になり、暗い影がジェイドに落ちてきているのに、まだ足りぬとばかりランの浮気である。ジェイドにしたら足元の地面が崩れたのと同じだ。ジェイドは食事ものどを通らなくなる。ランは思いつめるジェイドの性格を知っているからえらいことになると悟った。で、前述の「あなたよりジェイドとの絆のほうが強い」と言って男と別れるわけ▼ともあれランがもどることで、ジェイドは心安らぎ、病気の進行は小康をたぶん得るのでしょうね。心満たされ、至福のときをすごしたふたりの情景が甘く叙情的にスクリーンに流れます。死期を前にしているのだから決してハッピーエンドではないけど、ヒロインの心のあり方としては救われたことを監督はいいたかったのでしょうね。りえちゃん、もうけ役だったと思うわ。だってランが浮気の現場を抑えられ(すみません)って戻ってきたからって普通なら口なんかきかないわよ。夕食のテーブルに申し訳なさそうに座るのはランのほうなのに、ジェイドが食欲なくして影のように席を立つ。あろうことか「わたしの望みはあなたに想われること」なんだから、腺病質を絵に描いたような姿よね~。まあいいか、なんてたって主演女優賞だもん。それとおんなふたり、というよりジェイドの妖しの雰囲気をひきたてていたのはいうまでもなく阿片です。ランの回想する「阿片の香り」とは幻影をかきたて耽美に心をたぶらかす絶妙の一言でした。

Pocket
LINEで送る