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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月11日

特集 LGBT-映画にみるゲイ94
エンジェル(2007年 ゲイ映画)

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監督 フランソワ・オゾン
出演 ロモーラ・ガライ/ルーシー・ラッセル/マイケル・ファスペンダー/シャーロット・ランプリング

彼女の夢みた人生 

 直接的なゲイの映画ではないです。ただね、ヒロイン、エンジェル(ロモーラ・ガライ)へのノラ(ルーシー・ラッセル)の愛情は献身としかいいようがない。それもまあはっきりいって鼻持ちならぬイヤな女エンジェルに対してです。ノラとはエンジェルを崇拝する大勢のファンのひとりであり彼女自身詩人だった。エンジェルを崇拝するあまり、そばにおいて仕えさせてほしいと頼みこむ。エンジェルは召使ならたくさんいると断りますが、ノラは「彼女たちは小説を読みますか」と訪ねる。当時(1900年初頭)である、奉公に来るメイドに小説を読む余裕などあるはずもない。ノラは「あなたに仕えるにはあなたの作品の価値がわかる人間が必要です」と断言し、影に日にエンジェルの身のまわりを世話する。普通じゃできないよね~▼ノラには画家の弟エスメ(マイケル・ファスペンダー)がいる。イケメンでエンジェルは恋してしまう。彼の描く絵をみたらどんな男か想像はつくだろうに、エンジェルという傲慢な女は奇妙な男が好きなのだ。そもそもエンジェルとはロンドンの下町で父親が遺した食料品を営む母と二人暮らし。作家になることを熱望するエンジェルは死んだ父にも、女手ひとつで自分を学校にやってくれる母親の苦労もまるで当然とみなす。なぜなら彼らは天才に仕える凡才だから、らしい。ついに出版社のひとつから「売れる要素がある」として契約しようとなった。ろくに勉強もせず想像力だけで書いたエンジェルの作品はまちがいだらけ。「シャンパンを栓抜きで抜く」というような物知らずの表現を書き直すよう指摘されても、コンマひとつ、単語ひとつ描き直さないと突っ張り、発行人が妥協する。発行人の妻ハマイオニ(シャーロット・ランプリング)はエンジェルの小説の脆弱さを危惧するが(うるさいおばはん)とばかり、ふてぶてしく反抗するエンジェルに黙る。ハマイオニは当時のジェンダーに冷静な判断をくだせる、知的な女性の代表です。エンジェルの驕慢で敵をつくりやすい性格と、望むものすべてを手に入れていく型破りな感性とバイタリティを、距離をおいて評価しています▼エンジェルと結婚したエスメの画業は進まず、彼の描いた妻の肖像はみるからに醜怪である。第一次世界大戦が勃発し、嘆くエンジェルを置いてエスメはさっさと出征してしまう。エスメは姉とエンジェルの濃すぎる関係が気に入らない。露骨なゲイの描写はないが、姉が心から妻を愛していることを知っている。エスメはエンジェルに「ふたりはいっしょに住めない」と苦い調子でいうが、エンジェルは「姉弟ふたりが住む充分な広さがある」と取り合わない。そういう意味と違うだろが。エンジェルの小説は人気が急降下していく。祖国のため国あげて戦う世情のときに、露骨に戦争を嫌悪する彼女の小説は市民の反感を買ってしまった。おまけに姉は、休暇で帰国していた弟がひそかに女性と会っている現場を見る。その女性はエンジェルがそこで暮らすことを夢み、ついに手に入れた現在の豪邸「パラダイス」の元所有者の娘アンジェリカだった。夫の借金、かけごと、本は売れない、トラブルとスランプでくたくたになり、それでも魔のように書くエンジェルをノラは見守る。ベッドでうつ伏せになって書きながら眠りこけた、裸のエンジェルの背をもむように、さするように撫でてやる。弟の情事を知っていたのだろうと責めるエンジェルに「あなたを守りたかった。あなたがいくら愛しても弟は変わらないから。彼には愛人がいたわ。弟があなたに頼んだお金は借金の返済じゃない。彼女を養うためよ。子供もいるわ。でも彼女は別の男性と結婚し弟は絶望に沈んだ」。エスメはある日豪華な居間で首を吊った。パラダイスは今や巨大な墓のようだ。自分は生き方を間違ったのかとエンジェルはノラに尋ねる「すべては夢でしかなくなにひとつ現実じゃないわ」ノラは答える「すべて現実よ。あなたは偉大な作家よ」「わたしのことを本当に愛してくれるのはあなただけ。わたしはエンジェルよ。死んじゃう!」この場合彼女が言いたいエンジェルとは、肉体を遊離したこの世のものではない存在というわけですね。その言葉通りエンジェルは死んじゃうのです▼ノラはエンジェルの墓の前で彼女が歴史に残る作家ではなく、そのうち名前も作品も忘れられるだろうと発行人に話している「彼女の本をだれも見向きもしない」と。発行人はエンジェルについて書いてみたらどうだと勧める。エンジェルの業績だけでなく人生を書くのだと。ノラは聞き返す「彼女の人生? どの人生? 現実の人生? それとも彼女が夢見た人生を?」こういう最後の台詞、幻想のプリンス・オゾンの面目躍如だと思いません?

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