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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月13日

特集 LGBT-映画にみるゲイ96
蝴蝶 羽化する官能(2004年 ゲイ映画)

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監督 ヤンヤン・マク
出演 ジョシー・ホー/ティエン・ユエン

愛は傷つける 

 ヤンヤン・マク監督はインタビューで、本作はゲイの映画であるというより、ただひたすらラブストーリーであると強調していました。そらまあ男と女でも女と女でも、男と男でも、愛情に変わりはないですけど。でも本作のヒロイン、30歳になった美しい高校教師ディップ(ジョシー・ホー)は自分のセクシュアリティに悩んでいる。夫と幼い娘がいて、幸福に暮らしている。そこへイップ(ティエン・ユエン)と出会った。イップはスーパーで買い物するディップをみかけ、ひと目で惹かれて近づきたいと思った。何日も食べていないようなイップをレストランに連れていき、ディップは食事させてやる。むしゃむしゃ平らげながら、金主にことわりもなく「コーヒー」と追加するイップの図々しさにディップはあきれるが、おおむね好感をもった。ディップは自分がゲイであることを隠してきた。高校時代熱愛する女友達がいた。ディップの家庭環境は複雑だ。不仲な両親、自殺を図って入水する母に従って海に入っていった記憶、愛に傷ついた母親の娘への依存、自分ではなく母親との共存を選んだディップに、恋人は失望し海外を放浪する。彼女がマカオで出家したという情報を得たディップは、何回か訪ねていったことがある▼自分はゲイのシッポをつけている。うまく隠しているけど。美人だけどどこか鬱積をかかえて暗いディップに、イップは自分にはありのままで接してくれたらいい、もし自分が好きならときどきこの部屋にきてくれたらいい(彼女はディップと知り合ってから女性関係を清算し独立した部屋を借り、ディップの娘のために新品の子供ベッドを張り込んだ)、いつもいっしょにいたいと思うが、そうするとあなたのほうが失うものが大きいから自分が我慢する、ということを落ち着いた声で言う。年齢は18歳といったがじつは23歳であるとも。彼女はバーでギターを弾くシンガーソングライターだ。ディップは開店前のだれもいない店で練習するイップに会いに行き、彼女の歌を聴いて心安らぐのだ▼夫のミンは妻の性向を疑ったこともない。やさしくて誠実で、でもゲイのセクシュアリティについては理解があるとはいえない。夫には適当な理由をつけて、ディップは時間をひねりだしてはイップと会う。家にいて家族に囲まれながらいつのまにかイップのことを考えている自分に焦燥する。それにイップは娘を可愛がってくれるし。どうにも心のバランスをとれなくなったディップはマカオにかつての恋人チェンに会いにいった。チェンは尼僧となり老人介護施設でかいがいしく働いている。チェンを選ばなかったことで後ろめたさを残しているディップにチェンは、出家したのはあなたのせいではない、自分を解放するのは自分しかいない、そして「もうここへはきてはいけない」とディップを帰すのだ。だれにも依存せず、そろそろアイデンティティを確立しなさいといいたいのですね▼女を愛していることを夫に告白したら、ミンは怒り悲しみこう言います。「君が彼女を愛していてもかまわない。なにもなかったことにする。そしていっしょに暮らそう。君が彼女となにをしようとかまわない」ディップの条件はこうだ。「離婚してこの家を出て子供も連れていく」いや~マカオから帰っていっぺんに強くなりましたね。妥協の余地なし。ミンこそ踏んだり蹴ったりね。ミンはこの映画に登場するただ一人の男性なのですけど、ちょっと気の毒なくらい影が薄いわね。圧倒多数で女性側の映画だわ。マク監督も女性です。夫との結婚生活を清算したディップは娘を連れてイップの部屋に。ディップの精神状態が打って変わって明るくなったことが着るものでわかります。きっちりしたスーツもブラウスも脱ぎ、TシャツにGパンに素足で、のびのびと抱き合い、すこぶる行儀が悪い。建物の上階にある部屋のベランダから足をぶらぶらさせ、サンダルが脱げて落ちた。ちょっと考えたディップはもうひとつのサンダルも足を振ってポーンと落としてしまう。なんでそんなことするのかとイップがきくと、サンダルとは一対のものだから、こうしてあげなくちゃいけないのだとディップは答える。サンダルかあ。もうちょっとロマンティックなものであってもよかったと思うけど、愛を抽象する監督にすれば、サンダルでも犬でも猫でもそれこそカボチャでもよかったのかも。平坦な日常に組み込まれたこの愛の劇の推移は、終始淡々として過激なラブシーンもなく(多少はありますが)それがかえって、愛情とはここまでくるともうどんな解決もない、別れるしかない、だれかを傷つけるしかないという苛酷な面を反映させています。

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