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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月14日

特集 LGBT-映画にみるゲイ97
エデンより彼方に(2002年 ゲイ映画)

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監督 トッド・ヘインズ
出演 ジュリアン・ムーア/デニス・クエイド/デニス・ヘイスバート

「エデンより彼方」ってどこにあるの? 

 1957年コネチカット州。ヒロインのキャシー(ジュリアン・ムーア)は一流企業の重役の夫フランク(デニス・クエイド)と子供二人、地域の奉仕活動に従事し家事にいそしみ、理想的な家庭の主婦であるとして、インタビューを受け新聞や雑誌にとりあげられる女性、幸福を絵に描いたような昔ながらの主婦です。ある夜残業で会社に居残る夫のために、夕食を届けに行ったキャシーはオフィスで男と抱き合う夫をみる。ものもいえず弁当箱を放り出してキャシーは逃げ出す。やがて夫は帰宅し、リビングの暗がりにひとりすわるキャシーを見る。話しかけようとすると「近寄らないで」妻の強い拒否。ゲイであることはこの時代病気とみられた。妻は「だれかに相談しなかったの? お医者さまとか」思いつくアドバイスをし、医師のところへ連れて行く。医師がいうには「同性愛が治る確率は5~30%、完治は難しい、週2、3回カウンセリングに来なさい」。夫は「こんなことで人生を破滅したくない、自分が惨めで情けない、必ず治ってみせる、神に誓って」▼キャシーはしっかりもので気立てのやさしい女性だ。降って湧いたような災難としか思えないが、やさしく夫を支えようとする。でも一言なにか尋ねると「早く治して忘れたいのだ、いちいち聞くな」と逆上する。キャシーはとりつく島もない。女房に八つ当たりして、いやな男よね。ゲイって自分自身が恥ずかしくなるくらいショックなわけ? 当時としては社会から受け入れられないことは事実だったとしても、妻は気持ちをきりかえようとしているのに、あまりの夫のうろたえぶりに、そっちのほうがショックだったのでは。たぶんそうなのよ。だから冷静に自分を受け止めてくれた黒人の庭師レイモンド(デニス・ヘイスバート)に惹かれていくのね。キャシーという女性には偏見とか差別意識があまりないのね。皆無ではないけど、自分が黒人と話していて、奥様たちから仲間はずれにされても(彼女らのほうがおかしい)といなす冷静さを持ちあわせている。でもね、この場合ちょっとレイモンドのほうが軽率だったと思う。自分がキャシーに惹かれるのはいいけど、いっしょにバーに行き、踊り、親密に振る舞うことがどんな結果を導くか容易に想像できた。白人の黒人に対する攻撃より、白人と仲良くする黒人に対する黒人の攻撃のほうがひどいのだ。レイモンドは毎晩のように家に石を投げ込まれ娘はイジメにあってケガをする、妻を失くして娘と二人暮らしのレイモンドはとうとう町を出る決心をする▼キャシーは親友のエレノアに打ち明ける。「レイモンドと話していて心が軽くなるような気がしたの」。もうこれは時間の問題だとエレノアは察する。ただではすまない。キャシーの最大の理解者であったエレノアさえ去る。夫は会社から一カ月の休養を言い渡された。彼はまるでこうなったのは妻のせいのように当たり散らし、そのあげく泣きながらこんなことを言う。「別の人を愛してしまった。彼はぼくと暮らしたいと…キャシー、ぼくは生まれてはじめて愛がどんなものか知った。むごい言い方とはわかっている。君や子供のためにこの思いを消そう、忘れなくてはと努力した。でもできないのだ、どうしても。離婚してくれ」ああ、そう。どこまで勝手な男なのよ。慰謝料ふんだくってさっさと別れることだわ▼でもいいたくないけど、この映画の男たちって夫といい、レイモンドといい、いったいどこで力をふりしぼろうとしているのか、もうひとつ、よくわからない人たちなの。レイモンドはキャシーの夫とは段違いに知性的よ。「肌の色や形を越えて、全てを越えて真実を見ることが可能だと?」キャシーはレイモンドに聞く。彼は「エデンより彼方に永遠に輝く場所を見つめて」と聖書のことばを引用し「自分はちがう世界にかかわった代償を払いました。あなたは誇り高い人生を送ってください。約束してください」約束などしたところで女が満足できるか? キャシーにとったら結局不倫一歩手前で無事に終わった安堵が半分、燃焼しなかった恋情が半分、でもふっきれたのはあの煮え切らぬ身勝手な夫と、さっさと離婚手続きして自分に新しい人生の可能性が生まれたためか。結局「エデンより彼方」という場所は、だれにも頼らず生きていくことに至ったキャシー自身にあったのね。人生すべて塞翁が馬ね。旦那にもレイモンドにも感謝すべきかしらね。よかったと思うわ。 

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