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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月15日

特集 LGBT-映画にみるゲイ98
アタック・ナンバーハーフ(2000年 ゲイ映画)

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監督 ヨンユット・トンコントーン
出演 ジェッダポーン・ポンディ/シリタナー・ホンソーポン

同じ夢を追うことがなくなっても… 

 タイで実在したLGBTのバレーボールチーム「鋼鉄の淑女(サトリーレック)」(原題)が差別と偏見を乗り越えて国体で優勝するまでを描いた実話。邦題は一大バレーボールブームを巻き起こした漫画「アタックNo.1」から原作者・浦野千賀子さんの了解をえたうえでつけられた。「オカマ」であると指差され笑いものにされてきた男たちの土性骨、同じくゲイであると嘲笑されながら彼らを優勝に導いた女性監督の気概。優勝というゴールにたどりつくまでの全員の勇気とチームワークだけでなく、弱気や責任転嫁、内輪もめにチームメイトの戦線離脱など、負の部分をたっぷり盛り込んだ。特に盛り込まなくても事実を追うだけでそうなったのだろう。劇的というよりむしろ淡々とした全体の叙述が、コメディタッチのドキュメントみたいな味になっている▼大会委員長の男性がホモファビア(同性愛嫌悪者)と女性蔑視の最たるもので、なんとか「淑女たち」を排撃しようと、いいがかりに近いクレームで出場停止にもっていこうとする。大会役員たちさえ委員長の差別が目に余るとみる。ビー監督(シリタナー・ホンソーポン)が反撃する。「あなたはわたしたちに対してだけでなく、今まで女性の市長やパイロットをみるたび苦々しく思っていたはずです。あなたが思い描くのは台所とベッドの上の女性だけ。そうでない者や思い通りにならない者は排除しようとする。そんな頭の硬い人より、うちの選手たちのほうがよほど立派です。あなたは考え方も人間としても最低です」。委員長は激昂し「オカマチームに出場する資格などない」と宣告する。ところがサトリーレックの選手のひとり、ジュンがマイクのスイッチの音量を最大にしたものだから彼の一言は体育館中にアナウンスされた。サトリーレックを応援しようと観客席につめかけていたファンは「なんだとバカヤロー、サトリーレックを出せ」とスタンディングしてシュプレヒコール。大会委員らは委員長をひっこめ、サトリーレックの決勝戦出場を認めた▼ジュンは陽気なオカマだ。腰をふりながら町を歩いていてからかわれると「両性具有ってミステリアスでしょ」とさりげなくいなす。モンはバレーボールが大好きで、才能も力量もあるのにオカマだという理由で国体予選出場の選抜チームに入れてもらえない。ジュンはいっそ自分たちでオカマチームをつくろうと提案、友人たちを訪ねて回る。美貌のピアはオカマ・キャバレーのナンバー1になっていた。ピアは口説かれ店から1週間の休みをもらう。ピアが合流することになってジュンは強気だ。「ミツバチに来てほしくない花なんて世界のどこにもないわ」と豪語してスカウトに。ノンは軍人だ。ボールがつぶれるほど強力なスパイクを放つ。ジュンがつけたアダ名は水牛。ウィットを訪ねると彼は親が決めた婚約者と結婚するという。ホテルの部屋でウィットを囲み、昔のオカマともだちがゴロ寝しながら勝手なことを言う。ピアは「あの平面顔の女と本気で結婚するつもり? ウィット」。チャイ(ジェッダーポーン・ポンディ)はチームでただ一人のストレートでありキャプテンだ。オカマを差別しないいい男だが、試合の最中でもマニュキアだ、口紅だとメイクを欠かさない男たちに業を煮やし、ゲーム中はスッピンを命じた。彼らはテレビ中継されるのにシミ・シワが見える、ヒゲが目立つ、老け顔になると意気消沈、たちまち2セットをとられ追い詰められた。チャイと監督は「メイク解禁」を言い渡す。オカマチームは俄然精彩を取り戻し逆転勝利、決勝に進出した。決勝戦で対決する敵チームのキャプテンが、これまたオカマ蔑視の典型で、サトリーレックなどこの世から抹消しようとする男だった。彼の「死のスパイク」を受けてつぎつぎ倒れるチームメイト。コートはいまや戦場と化した▼いくつかさわやかなシーンがあります。試合をひかえたある夜、監督の誕生日だった。全員はケーキを用意し監督に言う「わたしたちは世間から白い目で見られ、人の温もりを知らない弱い人間です。でも監督のような温かい人がいて幸せです」これに応え「自分に勝つことはだれに勝つより立派なことです。わたしも以前は勝つことだけを考えていたが、今はみんなが力をあわせるところを見たい」。彼らがかわす会話はほろ苦さとユーモアにあふれています。恋人にふられた美人のピアは「オカマはどうせ遊び相手よ。こうなったら男とヤリまくってやる」ジュン「そんな言い方やめなさいよ。彼氏が心変わりしたとたんサセ子になっちゃうわけ?」「オカマにハッピーエンドはないわ」モン「わかっているならもう落ち込むなよ」ノン「バレーボールがあるじゃない。悲しみも涙もコートに捨てるのよ」ジュン「筋肉バカの水牛かと思っていたら、いいこというわね、ノン」「このゲロブス」。逆にあるときピアは「男って勝手ね」と吐いて捨てるモンにこういいます「男でも女でも人間はみな勝手なものよ。モン。愛せなくても憎んじゃだめよ」。チャイはキャプテンではあるものの、どうしても彼らの性的アイデンティティに溶け込めなかった。悩むチャイに恋人がこう聞きます。「あのひとたちのこと、男じゃないから嫌いなの? 女じゃないから嫌いなの?」チャイはハッとして自分がなんの根拠もない、影法師のような思い込みにしばられていたことに気づきます▼国体で優勝した彼らのその後は、ビー監督は性別のへだてなく指導に全力を注いでいる。チャイは恋人と結婚し二人の子供が生まれ、生涯の友となったモンに子守を手伝わせている。一流ダンサーとなったピアに元恋人は花束を捧げる。ジュンは銀行員になっても華麗なスパイクを放つ。ノンは日常のなかで小さな幸せを噛みしめる。ウィットは親の過干渉からやっと自分の道を歩み始めた。エンディングに流れる歌はちょっとジンときますよ。「すべてが過ぎ去り、もうわたしたちが同じ夢を追うことが二度となくなっても、この素晴らしい時を育んだ絆は永遠だ」

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