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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月17日

特集 LGBT-映画にみるゲイ100
汚れなき情事(2008年 ゲイ映画)

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監督 ジョーダン・スコット
出演 エヴァ・グリーン/マリア・バルベルデ/ジュノー・テンプル

妖しのエヴァ 

 先生の片思いなのね。「制服の処女」とは逆のパターンだな。時代は1934年イギリス、なだらかな丘から海が見える小島、スタンリー島の聖マチルダ学園は全寮制女子寄宿学校…全寮制女子校というだけで立ち上がってくる雰囲気があります。「 翼をください 」やら「 小さな悪の華 」「 ピクニック・at・ハンギング・ロック 」学校の一種であった「 GO!GO!チアーズ 」「 恋のミニスカ・ウェポン 」。修道院では「 シスタースマイル ドミニクの歌 」。男子全寮制も負けていませんよ。双璧は「 モーリス 」「 アナザー・カントリー 」それにずばり「寄宿舎」もあります。思春期の男子や女子が寝食をともにする、悩みも打ち明ける、家族の話もする、親しくなる、お風呂にも入る、着替えもする、下着姿にもなれば裸も目に入る、食事もする、すぐそばにある夜のベッド…なにも起こらないはずがない▼それにしても女子会勢揃いみたいな映画ですよ、これは。ジョーダン・スコット監督はリドリー・スコットの娘、製作のトニー・スコットはリドリーの弟ですなわち監督の叔父。主演のエヴァ・グリーンの母親は女優のマルレーヌ・ジョベール、叔母はかのエマニエルを振ったマニカ・グリーン。寮生のリーダー、ダイ(ジュノー・テンプル)は映画監督ジュリアン・テンプルが父親で母親はプロデューサーのアマンダ・テンプル。生まれたときから映画の空気を呼吸していたみなさんですな。ジョーダンは監督初作品だけど、そこはそれ、パパや叔父貴がせっせとアドバイスしたに決っている。リドリー・スコットはまさか、教えるにかこつけて自分でも撮ったのじゃないでしょうね、暗い寄宿学校の長い廊下や、光があふれるのに空虚な田園風景や、そこに建つ寄宿舎の典雅なたたずまいや、妙に静かな夜の湖からエイリアンが現れたって、驚きませんよ私▼ふつうなら先生と生徒の実らぬ恋になるところを、先生のミス・G(エヴァ・グリーン)が妖しいキャラで、一途にスペインから転校してきた貴族の令嬢フィアマ(マリア・バルベルデ)に恋する。これがまあ絵に描いたような美少女である。こんな小さな田舎の学校、外国の貴族が選ぶような歴史ある名門校でもないと思われるが。そこでは生徒の信頼とあこがれを一身に浴びているのがミス・Gである。とくにダイはミス・Gの忠臣である。ダイはフィアマを手なづけようとするが、このお嬢様は案外気骨があって下々のいいなりにはならぬ。おまけにミス・Gがフィアマの美貌に完全に参ってしまう。そうなるといきつくところは見えてきたが、ジョーダン監督、パパ譲りの達者な映画術で、けっこうはらはら観客をひきずっていきます。ミス・Gの世界をみてまわった博識と見聞に女生徒たちは他愛もなく感動しているが、フィアマだけは覚めている。なんとなれば彼女が言ってきかせる世界の文化歴史や観光地は、みな小説の受け売りであることを、秀才の読書家であるフィアマはみな知っているのだ。それをいいふらすようなはしたない真似など、お嬢様の品性が許すはずもないが、ダイにだけは耳打ちする。ダイにすれば〈落ちた偶像〉だが、もっとショックなことが生じた。コンパに酔っ払ったフィアマを介抱するといって先生は彼女を部屋に連れて行き、昏睡するフィアマに「わたしにさせないで」なんてささやきながら全部自分でやっちゃうのだ。何を? キスも抱擁もほかのこと全部よ。それをドアの隙間からダイが見ている。先生、戸締まりはしっかりしておかないと▼破滅である。ダイは愛する先生をフィアマに取られたと逆恨みし復讐のいじめに燃える。災難はフィアマである。彼女は先生の愛が暑苦しくてうっとうしくて仕方なかった。こんな田舎の学校、早く出て一刻も早く屋敷に帰りたいと思っているのに、愛していると迫る先生に押さえつけられ、とうとう「あなたのこと大嫌いよ」とホントのことを叫んじゃう。おののく先生。でも仕方ないよね。先生は喘息の発作を起こしたフィアマに呼吸器をわたしてやらずフィアマは呼吸困難で死んじゃう。ダイは自分が追いつめたことは棚にあげ、真実を校長に告白するが学校の体面を重んじる彼女はミス・Gに休暇と称して解雇する。ダイは「償いをする」と書き置きを残して島を去る。狂気を含む愛が嫉妬と事件を生じさせさらに殺人にまで走った。うら哀しい結末です。監督は情に流れた甘さを映画から排除したかったのでしょうが、ジョーダン監督のパパ、つぎはカタルシスのある映画を総指揮してあげてよ。とくにゲイの映画の場合、長い抑圧と差別の遺伝子を受け継いでいます、辛口であってもいいからどこかに救いがほしいですね。結果的には悲劇であっても主人公たちの気持ちが救われているパパの「 テルマ&ルイーズ 」のように。主演のスーザン・サランドンは「今から崖から飛び降りるふたりがセクシュアルなキスをしないわ」なんてコメントしていたけど、うそつけ。あれはやっぱりビターな愛の映画でした。

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