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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月19日

特集 LGBT-映画にみるゲイ102
ガウディ アフタヌーン(2001年 ゲイ映画)

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監督 スーザン・シーデルマン
出演 ジュディ・デイヴィス/マーシャ・ゲイ・ハーデン/リリ・テイラー/ジュリエット・ルイス

人生いつも再出発 

 ジュディ・デイヴィスは「この作品に惹かれたのは、スーザン(監督)の仕事に好感を持っていたことと、男性との関係性のない女性のキャラを演じること。女はおしなべて恋人、妻、母などの機能を担わされその多くが男性との関係で語られるがこの映画はバッサリ裁ち切っている」ことを新しく感じたと。バルセロナで翻訳をするカサンドラ(ジュディ・デイヴィス)は一箇所に数ヶ月しかおらず、仕事が終われば別の土地へ移動、各国各地を転々としているデラシネ(根なし草)だ。フランキー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)はカサンドラの前に不意に現れたアメリカ人女性観光客。スペイン語が不自由だから代わりに人探しを手伝ってくれとカサンドラに頼む。やばそうな臭いがしたものの破格の報酬に目がくらみ、カサンドラは引き受ける。探す相手はベン(リリ・テイラー)という男性らしい。リリ・テイラーが演じるのであるからベンとはじつは女性である。そのベンが同棲している相手がエイプリル(ジュリエット・ルイス)だ▼粗筋を言うと、フランキーとベンは大学時代の親友同士。ベンはレスビアン、フランキーはトランス。なんとかなると楽観的にふたりは結婚し娘デライラが生まれた。娘が4歳になったときフランキーは性転換をして女になった。母親が二人になってしまいベンは怒って離婚し親権を争っている。娘を連れバルセロナに来たベンをフランキーが追ってきて、居所を探すためにカサンドラを雇ったという次第。タイトル通りガウディの庭園と建築が雰囲気を盛り上げる。オープニングのタイトルバックは原色のステンドグラス。身をくねらせる2匹の蛇。こいつがじつに太い。くねくねと丸太のような胴体を妖しげによじる。つぎはケバケバのインコ。これまた栄養充分でまるまる。と思うと目つきの悪いツル。ツルなのに脚が短く太っているから、ツルというよりイグアナが立っているようなものである。やや。ほんとにトカゲが出てきた。お腹がでっぱったメタボのトカゲだ。なんだかみな太っているので、妖しいというより怪しい感じになってきた。フルーツは南国らしい青や橙色、金色の蓮の花に目が光る蝶。やたら羽の大きい目の光る蝶が紫色の花にとまる。そこへなぜか出現した紅色のシーラカンスは「69」の体位でくねくねとユーモラスに魚体をよじるのだ▼カサンドラはバルセロナの裏町に潜入し、ベンを見つけ出したものの、フランキーに仕事料を踏み倒され憤怒に燃える。カサンドラの下宿の大家カルメンは毎日ろくでなしの亭主とケンカしている三人の子持ちだが、酸いも甘いもかみわけた大人の女である。下宿代が払えずやばそうな仕事を引き受けたカサンドラの事情を知っているから、催促はするものの見てみないふりをする。ベンが現在同棲しているエイプリルはベンとそろそろ潮時だと思っている。そこへ現れたカサンドラにモーションをかけるが、あいにくカサンドラは今のところその気がない。フランキーがそもそもバルセロナまでベンを追いかけてきたのは娘を取り返すためである。性転換したが娘は自分の子だといって譲らない。ベンはベンで自分が産んだ子は絶対に放さないと踏ん張る。娘のデライラはケンカばかりしている両親より、すっかりカサンドラになついてしまった。カサンドラは「パパとママがケンカするのはあなたのことを大切に思っているからよ」とさとす。ベンも「ママたちはバカだけど、お前のことを愛している」。ガウディの幻想的で陽気で、装飾的なグエル公園。曲線のやわらかい建物。地中海に沿った街を見下ろす尖塔。そんな情緒あふれるロケ地がスクリーンを色彩豊かに包みこむ▼監督は「この映画の人物はみなどこかずれているところに共感できる。女らしさ、男らしさ、つまり男女のジェンダー(性差)という今日的な問題を問う映画でもある。20年前家族の典型とは、父親がいて母親がいて子供ふたり、犬一匹だった。たった20年で家族の概念は劇的に変わった。男と男があり女と女もある。そろそろ家族という定義そのもの見直すべきだ」たしかに子供は人工授精で得られることもでき、代理母もある。女の生殖と母性と欲望は切り離して考えることが可能になり、それが女の自我を解放させつつある。でもそれらがどんな新しい位置づけを女にもたらすか、女自身はまだ過渡期にいるように思える。そんなことを考えると、一見ホームドラマの、ハートフルな形をとったこの映画には二重底がある。そのグレゾーンにいる女を代表するかのように家無し、子無し、夫無しで生きてきたカサンドラが、故郷に帰ろうと決心するのはアイデンティティー確立への回帰か。ともあれ女たちの再出発がさわやかでした。

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