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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月30日

特集 LGBT-映画にみるゲイ113
私の愛情の対象(1998年 ゲイ映画)

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監督 ニコラス・ハイトナー
出演 ジェニファー・アニストン/ポール・ラッド

「3分間の情事」 

 ヒロイン、ニーナ(ジェニファー・アニストン)の考え方って、どこか都合よすぎない? つまらない映画ではないし、単純なストーリーにしては登場人物が多くて、そのわりにうまくまとめたと思うのだけど、だから感動したかといえばちょっとね。物足りないというより、まあとどのつまりこうするよりほか、この映画は着地しようがないかという、非常に消極的な認め方になってしまうのが残念です。おもしろそうだと思って手にとった通販カタログをくっているうちに、結局気にいったもの載ってなかった、と思ったときがこんな感じね▼どこがこの映画のレベルアップを妨げているのかと考えると、登場人物の魅力のなさにいきつくのよ。ニーナはつきあっている弁護士ヴィンスと結婚する気はない。いい人なのだけど安らぎがないそうだ。本気で結婚の対象と考えていないのなら「いい人」だとかヘチマだとかいってつないでおく必要はないでしょ。スペアとして持っておきたいだけの女のミエね。それにこの弁護士。これで弱者の弁護ができるのかよ。発言がいちいち配慮を欠いているわ。ジョージ(ポール・ラッド)がゲイだと知っているから、自分がマジョリティであるだけで他に理由のない優越感をもつのね。小学校の教師をしているジョージに対し(安給料の教師風情)という蔑視がありあり。こんな男といっしょにいて安らぎが得られないのは当たり前でしょう。ヒロインは自分の判断力を疑ったほうがいいわ▼ヴィンスはニーナが自分とは同居しないのに、ゲイのジョージにあっさり部屋を貸したことがおもしろくない。ニーナはなににおいても執着せず、さらさらと風を受け流すようなジョージの自然な生き方に惹かれていく。ボーイフレンドにふられたジョージは失恋中だが「あなたを振るなんて、彼の趣味はよくないわ」と力づける。ダンス教室にいっしょに通ったり(学校の先生ってこんな時間けっこうあるのね)、気のあう友達同士として友情が育つはずだった。でもニーナはジョージが好きになり、しかもヴィンスの子供を妊娠したことがわかる。どうするの。答えはこうだ。ヴィンスとは結婚しない、でも父親だからおつきあいはする、そばにいる家族としてはジョージがいい、あなたがわたしといっしょに子供を育ててほしいと頼む。なぜそうなるのか「?」が点滅しながらいくつ並ぶだろう。ジョージはさすがに迷ったものの、父親と男の子が公園でキャッチボールとしているのを見て胸キュンとなる。自分もあんなことをしたいと。するのはいいけどそれで代理パパになるのとはちょっと違うだろ。そういう理屈はニーナとジョージには通用しない。ジョージはパパ役を引き受ける▼このへんから映画は迷走する。ジョージの弟やらその恋人や、ニーナの義姉とその夫やら(彼は出版界の大物で、劇中名前が出される作家はノーマン・メイラーだ)、別れたジョージの恋人が復縁をもちかけるわ、ジョージに新しい恋人ができるわ、ニーナのお腹はどんどん大きくなっていくわ。ニーナがジョージといっしょに暮らすとヴィンスに言うと、ヴィンスはジョージをにらみつけ憎らしげに言う。「ゲイは厚かましい人種だな。女も抱けないくせに出しゃばるな」。ニーナは思い余って自分と結婚してほしいとジョージに頼むのだがジョージは愛する人に男の名前をあげる。ニーナは絶望。ヴィンスとよりをもどす(ように見える)▼無事出産。ヴィンスが病院にかけつけるとニーナは「ジョージが一晩つきそってくれたの」。ヴィンスはジョージが恋人を得たことを知っているからもはや敵でもライバルでもない、にこやかに礼を述べる。そこから10年か15年後。ジョージは小学校の校長に。男の恋人と、彼の元恋人と三人の男の友好関係がなりたち、ニーナはヴィンスとは結婚せず、昔彼女を助けてくれた警官と仲良くおつきあいしている。セレブの義姉は相変わらず豪勢ではなやかな暮らしを。要はだれひとり不幸にならず、だれも傷つかず、めでたく現実を謳歌しているではないですか…もはや(あっそ)といって退散するしかない。おっと、ひとつだけ。このセリフだけが光っていた。ニーナとジョージがダンス教室でレッスンを受ける。ダンスの先生が言います「ダンスとは3分間の情事よ」1分間の情事もなかった映画にしては、ここだけが粋でした。

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