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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年10月31日

特集 LGBT-映画にみるゲイ114
スプリング・フィーバー(2009年 ゲイ映画)

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監督 ロウ・イエ
出演 チン・ハオ/チェン・スーチョン/タン・ジュオ

映画に必要な「香り」

 オープニングしてすぐ男同士の露骨なベッドシーンがある。ロウ・イエ監督は前作「天安門、恋人たち」によって5年間の映画製作禁止となった。「天安門」の過激な性描写に続いて本作はゲイである。主要人物は5人の男女。男対男、女対男、再び男対男。愛とセックスの構成図が転換していくが、どことなくこの映画、全体にとりとめがなくぼんやりしているのだ。人生なるようになる、というかなりいい加減な考え方は、わたし大好きなのだけど、だからと言って「なるようになる」をスクリーンで映されても困惑するのだ。もうちょっとなんとかしてくれよといいたくなるのだ。とにかくこの映画では登場人物たちの性的関係がつぎつぎ結ばれるのだが、それでもって観客は関心をつないでいってくれというふうで、事実ほかにはなにも起こりそうになく、それについて納得のいく説明もない。ただ平明に南京に春が訪れ、春の嵐が来て(風の吹き荒れるそれらしいシーンがあった)、初夏となり、いかにも蒸し暑くなりそうな南京の夜景で終わる▼夫の浮気を疑い、探偵ルオ(チェン・スーチョン)に調査を依頼した教師の妻は、夫のあいてが旅行社に勤める青年ジャン(チン・ハオ)だと知る。妻は旅行社に乗り込み勤務中のジャンに怒鳴りつける。すごい剣幕で「恥知らず、泥棒猫、夫とは離婚しないわ」とわめきながら机の上の文具をはたき落とし、書類は天井に放り投げオフィスは紙吹雪。「ただじゃおかないからね、わかっているの、あんたは男よ!」職場の同僚たちは呆然。ジャンは黙ってあたりを片付け会社を出る。彼がきたのはゲイバー。ジャンはゲイの世界では有名な女装のスターだ。久しぶりだからステージにあがれというマネージャー。ジャンを尾行してきた探偵はジャンの美しいステージ姿に見とれる。ミイラ取りがミイラである。ジャンは女房に怒鳴り込まれてから懲りたのか、教師に別れると引導を渡す。冒頭の濡れ場からすると、熱愛しているふたりだったわりにはあっけないのだけど、ジャンはさばさば。探偵には恋人リー・ジン(タン・ジュオ)がいるが、ジャンを忘れられなくなり、関係を持つ。教師の妻は冷たくなり、ジャンとの関係が終わった夫はかみそりで手首をかききり自殺した。探偵はジャンを友達として恋人リーに紹介する▼このあたりまでくると「なんなの、この薄っぺらな人間関係は」と思ってしまう。浮気調査を頼んだ妻は夫がゲイだと知り、相手の勤務先にまで乗り込んでいくが、愛を失った夫と関係を修復する様子でもない。夫は男同士の関係を貫くでもなく、ましてジャンはうまくいっているときはよかったが、いったんこじれた関係になると早くも逃げてしまい、古巣のゲイバーにやってきて女装してうさを晴らし、つぎなる探偵に乗り換える。探偵は探偵で恋人がいながらジャンの魅力に(キツネ目がそんな魅力的か)抗しきれず、かといって恋人と別れもせず、愛と友情の三人の関係を築こうとする。ありましたね、男ふたりと女ひとりが理想的な関係を維持しようとした、ニーチェとアンドレアス・ザロメとパウル・リーの〈三位一体〉が。数ヶ月しか保たなかったが、こっちはもっと早く数日で終わった。三人で旅行にいったものの、女は男ふたりの愛撫する姿を垣間見て姿をくらます。男たちは途方にくれリーを探すが、探偵は後悔丸出しでいったものだ「君についてくるのじゃなかった」ジャンは「じゃ、消え失せろ」そこで三人はバラバラに▼探偵と別れたジャンが街をあるいているとき、いきなりリーが切りつけてきた。首を来られたジャンは病院へ。数週間か数カ月後だろう、命は助かったジャンがとある建物に入っていく。階段を上り、部屋の前にいくと女が食事の支度をしている。思うにジャンの留守中にきて中に入れなかったから、廊下でカンテキを起こしているのである。「メシの支度はいいよ、どこかに食べに行こう、着替えよう」とジャンはおだやかにいう。入ってきて女が着替えると、やっぱり男だった…いったいこういう流れをどこまで書いたらこの映画は終わるのか。じれじれしてきたら、新しいパートナーを抱いてベッドに仰向けになった、ジャンのクローズアップから、夜の南京を背景に切ない朗読をする探偵に移り、男たちのうつろ状態でエンドだ。愛情とは身勝手ではかないものですね。この映画に登場する教師にせよ探偵にせよ、妻には気づかれず愛人との関係は続けたいのよね。虫のいいこと。中国の奥さんってみなこんなにすごいのか。会社には怒鳴りこむ、失意の夫には洟もひっかけない、リーにいたると白昼大通りで「思い知れ」とばかり斬りつけるのですよ。通行人たちは倒れて首から血を流しているジャンを(なにしてるの?)と見下ろして声もかけず通り過ぎるだけ、実行犯はとっくに逃走です。萌えどころが少しあるものの全体をみるとさっぱり活気がない、いい映画が放つ濃厚な香りというものがない、つまらないだけの映画ではないのに、そこが惜しかった。

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