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シネマ365日

2014年11月4日

フォー・ルームス (1995年 オムニバス映画) 全4話

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監督 アレクサンダー・ロックウェル他
出演 マドンナ/ジェニファー・ビールス/アントニオ・バンデラス/ティム・ロス

こういう時代もあったジェニファー

 「衝撃のデビュー」というありきたりの形容がかすんでしまうほど、ジェニファー・ビールスの「フラッシュ・ダンス」は圧倒的だった。彼女の理知的な美貌や長身の肢体、育ちのよさを現す性格などがぜんぶ合わさってハリウッドに新時代をもたらす女優だと思った。男性にも女性にも好印象をもたらすキャラで、ジェニファーこそオードリー・ヘプバーンの再来にふさわしかった(ちょっと顔が長いけど)。女優にありがちなエキセントリックな女を感じさせない、つまり男をへこまさない頭の良さ、という点でも男たちは好感がもてたにちがいない。彼女はイェール大学に入学したばかりだった。最近でこそ東大生が女優デビューというのも珍しくなくなったけど、デビュー初主演で世界的なヒット、そして1980年代に台頭してきた女性主権運動の波に乗ってアイドル的存在になったにもかかわらず、さっさと大学にもどり勉強に打ち込んで卒業。メリル・ストリープとかジョディ・フォスターに伍す優等生です。余談だけど連邦制度準備理事会のジェネット・イエレン副議長(当時)もイェール大だったわね▼ところが期待テンコ盛りの第二作「ブライド」。いくら頭がいいと言ったって映画界の経験のない新人女優に「フランケンシュタインの花嫁」という時代劇をあてがい、のけぞるほど悪趣味のコスプレで出演させたのじゃ、ジェニファーの持ち味もヘッタクレもないわな。本人が悪かったわけじゃないのにこの大コケに真面目な彼女はすっかり自信をなくし、以後20年鳴かず飛ばず。その間に結婚もし、映画には50本ほどでたがほとんどはジェニファーのジェも話題にならない愚作だった。本作はそのうちの一本です▼第二話の「間違えられた男」にいきなり、椅子にしばられ猿グツワをはめられた状態で出てくる。監督のアレクサンダー・ロックウェルが当時の夫です。彼とは「父の恋人」とか「イン・ザ・スープ」とかいい映画もとっているのですがいかんせん、ジェニファーは女優として弾けるものをみつけられなかった。そのせいでもないでしょうが本作のあとふたりは離婚しました。「Lの世界」のプロデューサー、アイリーン・チャンケンが主役のベット・ポーターとティナ・ケナードのどちらかをやってほしいと持ち込み、脚本を読んだジェニファーはベット・ポーターを選んだ、このとき彼女は弾けた。じつに「フラッシュ・ダンス」から20年後でした。その間くさることなく地道に女優業をこなし健康はもとより、容姿肢体を鍛え維持し続けたのは立派だと思います。自分のイメージに最適の役を選んだジェニファーは6シーズン5年にわたる「Lの世界」で茶の間を席巻します。一流大学卒、有名美術館ディレクター、UCLA学部長、ゲイのコミュニティにあってはたえずオピニオン・リーダーとしてなにかあるとき仲間はみな彼女を見る、それでいてパートナーのティナには浮気の現場をつかまれ三行半、半分命がけで失地回復した結果、貞節を誓い以後頭があがらないという役柄を、水を得た魚のごとくこなしました。これこそ自分の役だという役にめぐりあい全力投球した女優の幸せがオーラとなって放たれていました▼ひきかえこの「フォー・ルームス」。第一作はマドンナが魔女に扮し、魔女仲間の秘密の会合に魔女でないケアマネみたいな女を連れてきます、もちろんマドンナのパートナーという設定ですが役らしい役どころか、いてもいなくても全然さしつかえない存在なのに、自分のゲイ志向をこれだけ好きなだけもちこんではばからぬ女優もみたことない。笑いたくなるほどやりたい放題のマドンナがいなければ100%つまらん映画だった。これにより彼女はみごとゴールデン・ラズベリー賞最悪助演女優賞受賞。第二話パス。第三話。案外イカレ具合がおもしろい。監督はロバート・ロドリゲス。いちばん最近みた彼の映画は、そうそう手斧でバッサバッサぶった切る「マチェーテ」だったぞ。その前にギターケースに蔵した銃を撃ちまくる殺し屋の「デスペラート」、血しぶきが天井までドバーッとあがる「フロム・ディスク・ティル・ドーン」。殺しの小道具に血道をあげて情熱を傾けるこの監督が、本作ではベッドのスプリングに押し込まれた腐乱死体でアッといわせてくれる。死体の上でシャンペンを飲み「お姉ちゃん、足が臭いよ」「あんたの足よ」と言い合っている幼い姉妹。彼らのパパがロドリゲスのお友達アントニオ・バンデラスです。ティム・ロスは全編を通じみじめで卑屈な笑いを、細い腰と短い脚をくねくねさせながらふりまく。吐き気がしそうな彼の芸達者ぶりはさすがというしかない。これはもうタランティーノが仲良しこよしの仲間で作った映画ですね。であれば制作費400万ドルに収益425万ドルでもヨシとするか。

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