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映画監督特集

2014年11月7日

特集 ホラーの貴公子 アレクサンドル・アジャ P2 (2007年 ホラー映画)

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監督 フランク・カルフン 脚本 アレクサンドル・アジャ
出演 レイチェル・ニコルズ/ウェス・ベントリー

イブの夜の惨劇 

 「P2」とは地下2階駐車場のこと。オープニングのメルヴィル・ブルー、駐車場のコンクリートの壁、車、無音。アジャの好きな「静けさが支配する蒼い色の世界」から映画は始まります。ヒロイン、アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)がクリスマス・イブに残業している。場所はニューヨーク。ニュージャージー(車で30分足らず)の姉の家で母や姪たちとパーティーがあり、アンジェラがサンタクロースの役だから早く帰ってと催促された。今から出ると電話し駐車場に来た。エンジンがかからない。サンタの衣装やプレゼントの箱やクマのぬいぐるみなど両手にかかえて警備員室に行き、タクシーを呼んでくれと頼む。警備のトム(ウェス・ベントリー)はバッテリーがあがっているのかもしれない、充電しましょうかと聞く。さっさと帰りたいアンジェラは車を呼んでくれと再度頼むが「イブだから道が混んでいる、時間がかかるかもしれない、バッテリーの充電はすぐすみます」とトムはアンジェラ引き止め、食事の用意があるから「いっしょにどう」アンジェラは内心気色悪くなって丁寧にことわり、ロビーにあがってケータイでタクシーを呼ぶ。タクシーが来て、ビルから出ようとするとドアが開かない。トムに開けてくれと頼むが応答なし。タクシーはしびれをきらして去ってしまった。音もなく近づいたトムはアンジェラを気絶させ警備員室に閉じ込める▼彼はアンジェラと話をしたかったが「君は口をきかなかった」と言い出し、いつのまにかアンジェラは白いドレスに、彼はサンタの赤い服に着替えていた。テーブルにはワインと皿と薔薇の花。「なにが望み?」と鎖で繋がれたアンジェラ。トムは「君の故郷はどこ」とかヘミングウェイの「日はまた昇る」を読んだかとか「愛とは不条理だよ」とか「恋人はいるのか」とか一方的にしゃべる。ドライブしようとアンジェラを連れ出し駐車場のP3に来た。そこに口をテープでふさがれて椅子にしばりつけられているのはアンジェラの上司パーカーだ。彼はエレベーターのなかでアンジェラにキスしようとしたのをトムは監視カメラでみていた。「彼は君をレイプしようとした、ぼくがこらしめてやる」。冗談ではない。トムが変質者であることはまちがいない。なにをするかわからない。アンジェラは「彼は悪気があったわけではない、ちゃんと謝った」ととりなすがそんなまともな意志が通じる相手ではない。トムは「あいつは変質者だ。思い知らせてやれ」お前に言われることか、と思うが彼は車を何度もパーカーにぶつけ頭も内臓もぐちゃぐちゃにする。アジャの好きな「血まみれメーキャップ」のシーンです。本作は「R18」指定ですが、これじゃ無理ないな▼100分足らずの映画ですが、ホラー・アディクトとでもいうべきアジャの凝り方がよく出ている映画です。前作「 ヒルズ・ハブ・アイズ 」は砂漠という隔絶した場所が「密室」でしたが本作では駐車場。予告編によれば「大都会の死角」です。隙をみて脱出したアンジェラは警察に電話が通じたもののトムが遮断、もう少し、もう少しというところでトムが邪魔します、常道ですが(いい~)とさせるいやらしいシーンの連続はアジャならでは。彼のプロットの積み重ねってヒッチコックに似ています。ものすごい粘着質です。いちばんの変態はお前だろ、アジャ。ヒロインがやっと脱出して避難したエレベーターには先に殺されていた社員の遺体があるし、エレベーターの扉をヒロインは死んでも開けないと悟ったトムは、なんと階上から消防ホースで水攻め。アンジェラは耐えきれず扉を開き大量の水と死体と共に床に投げ出される。クリスマス・イブですよね。アンジェラは薄いドレスに水を浴び、暖房のない駐車場で変質者と対決する。トムはシェパードを放し、車に隠れていたアンジェラを襲わせる。アンジェラはレンチで犬を殴り、血まみれにして殺す。怒り狂ったトムはアンジェラを追いつめた…アンジェラは緊急避難用に備えてあった工具箱の斧で、監視カメラを壊しトムの目をくらましながら警備員室から車とビルのカードキーを手に入れる。あとは脱出あるのみなのだけど、そうはトムが、いやアジャが許すはずはない▼唐突ですが「強い女が好きな監督ベスト3」として、わたし密かにリドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、そしてアレクサンドル・アジャを考えています。アジャはああ見えて最後に必ず女を助ける、それも強烈に暴れまくって敵をやっつけさせる、という着地点があるのです。この映画でもスリップドレス一枚、顔も体も脚も(犬に噛まれた)血まみれになったヒロインが、真冬というのに水浸しになり脚を引きずり、失神しても不思議ではないのにアジャは彼女を復讐に駆り立てる。逆ギレしたアンジェラは情け無用、トムに手錠をかまし車のハンドルに固定し、流れでたガソリンに「ポイッ」と着火。あとはどうなときゃあなろたい。雪降る街はすでに夜明けです、薄明の蒼い無人の街を、スリップが肩からはずれかけたヒロインがよろめきながらたどる。遠くから聞こえるパトカーのサイレン。摩天楼を俯瞰するシーンでラストです。主演のレイチェル・ニコルズはコロンビア大学で経済と数学の学位を取得した秀才。最新作「トカレフ」(2014)でニコラス・ケイジと共演しています。

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