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映画監督特集

2014年11月8日

特集 ホラーの貴公子 アレクサンドル・アジャ ピラニア3D(2010年 ホラー映画)

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監督 アレクサンドル・アジャ
出演 エリザベス・シュー/リチャード・ドレイファス/スティーブン・R・マックィーン

ピラニア映画の意外な歴史 

 アレクサンドル・アジャ監督と役者の顔ぶれのわりにはつまらん映画なのに、8300万ドルの興行収入とは、やっぱり「怖いものみたさ」なのよ。お化け屋敷に行きたがるのといっしょだわね。さてエリザベス・シューが三人の子持ち保安官ジュリーに。長男のジェイクが母親のいいつけをきかず、妹弟の子守をほったらかして自称映画監督デリックの、ビーチで開催される祭りのための周辺案内役を引き受ける。ジェイク役のスティーブン・R・マックィーンとはだれあろう、あのスティーブ・マックィーンの孫なのだけど、そう言われなければだれも気がつかないでしょうね。冴えないわ。祖父のマックィーンは小柄だったけど精悍だったし、肉体から野生動物のような体臭を発していた。それに比べこの孫は、どことなくスクリーンの中を影のように素通りしていくのよ。じっちゃま、泣いているかもね。それとリチャード・ドレイファス。あーあ。「 ジョーズ 」の海洋学者だった彼が、本作では好々爺のごとく湖で釣り糸を垂れグググ、手応えありと引き上げた魚がピラニアでこれがまたなんとバカ力。ドレイファスは水に引きずり込まれ、たちまちピラニア集団の餌食となって文字通りあたりは血の海。なにもこんな役引き受けなくてもいいだろ。エリザベス・シューは芯の強い、しっかりした女が似合うのだけど、この映画だけは彼女の好感度も見せ場がなかったな。徹頭徹尾ピラニアさまのワンマンショーよ。おまけに本作のピラニアときたら二の句もつげない醜悪な魚ときている。ゴツゴツした岩みたいに不格好な頭して、口をあけたらワニのような歯がズラリ。毒々しく口をあけ肉を食いちぎる魚。アジャ監督、なにもあなたがこんな魚を考え出さなくても、この世のグロテスクはクローネンバーグ(もちろんデヴィッドのこと)に任せておいたらいいのよ▼ピラニア映画には意外な歴史がある。そもそもピラニアが映画に登場するのはかなり古く、1954年にはイタリア映画の「緑の魔境」が作られている。肉食魚ピラニアを殺人マシーンとしたホラー映画にジョー・ダンテ監督の「ピラニア」があるが、彼を抜擢したプロデューサー、チャコ・ヴァン・リューウェンとは筑波久子のことだ。彼女地元名門旅館の娘として生まれ、恵まれた環境で慶應義塾女子校に進学、演劇部に属し日活にスカウトされた。同期に二谷英明がいる。「肉体の反抗」が大ヒットしたが肉体派女優というレッテルに苦労し、もともと丈夫でない体を壊し、人生を変えるつもりで渡米した。これが成功した。コロンビア大学に語学入学し、27歳のとき結婚、カリフォルニアに新居をかまえるものの映画への思いを捨てきれず、カリフォルニア大学の脚本コースに進学。勉強好きである。彼女が撮ったドキュメンタリー映画をロジャー・コーマンが認めた。1978年のジョー・ダンテ監督の「ピラニア」は1億円の低予算で40億円の大ヒットとなり、筑波はハリウッドの大プロデューサーとなった。1981年「ピラニア」のリメーク「殺人魚フライングキラー」で再び彼女が発掘した新人監督がジェームズ・キャメロンだ。こうみてくると、ピラニアは殺人魚どころか映画界の出世魚ではないか▼舞台はアメリカ南部のヴィクトリア湖。夏場の観光シーズンで湖畔はおおにぎわいだ。突如発生した地震により湖底に断層が生じ、湖の底に湖があることがわかった。地割れした海底から無数のピラニアが現れたのだ。岸辺に釣り人マシュー(リチャード・ドレイファス)の下半身が骨だけになった無残な死体が打ち上げられ、保安官ジュリーは海洋学者に調査を依頼し、ジュリーら調査団はピラニアを捕らえ、魚類学者にみせたところパイゴセントラスというピラニアの先祖で、200万年コロラド川を泳いでいた魚だった。氷河期を地底に眠っていた湖に棲息することによって生き延び、さらに凶暴化したというのだ。ビーチを閉鎖しないと大惨事になる。ジュリーらはビーチで始まったイベントの観衆らに避難を呼びかけるが、だれも警告に従おうとしない▼ピラニアが暴れまわって湖は大量殺戮で血に染まる。食いちぎられた腕や脚や、ベロンと皮が剥けて頭蓋骨だけになった頭部に目だけがギョロギョロしていたり、下半身が食べられてしまった女の体、元祖魚パニック映画「 ジョーズ 」も真っ青なえぐいシーンがこれでもか。ここまでやるか。殺すだけ殺したピラニアは爆弾で大量死。惨劇はおさまったかにみえたところに最後の一撃。魚学者が緊急報告するには「捕らえた魚は幼魚だ」つまり殺したのは子供の魚ばかりで親魚がいるはず、という説明が終わるか終わらぬうちに化け物のようなピラニアがスクリーンを横切り、ボートにいた人間の頭にかぶりつき湖に引きずり込んだ。再び恐怖の幕はあがる…というところでおしまい。200万年前の地底湖から出現した生きた化石のわりには騒々しい魚だったわね。好きなところへ消えてくれ、あばよ。

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