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シネマ365日

2014年11月14日

特集 ビークル・ムービー ホラー・エキスプレス (1973年 ホラー映画)

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監督 ユージニオ・マーティン
出演 ピーター・カッシング/クリストファー・リー/テリー・サバラス

懐かしきホラー

 ホラーの名門ハマー・フィルム・プロダクションの製作にして、古典ホラーの名優ふたり、ピーター・カッシングとクリストファー・リーが共演。「刑事コジャック」でブレークする前のテリー・サバラスが加わっています。低予算ではあっても低級ではない見本のような映画です。オープニングの口笛の印象的なこと。この主旋律は劇中くりかえし使われ、典雅とさえ言える雰囲気をかもしています。ユージニオ・マーティン監督は「マドリード美女連続殺人 独身姉妹の歪んだ欲望」では、女の欲望をまるで変態扱いしてくれた人。本作でも出演する女優(男優も)が情け容赦なくつぎつぎ殺されます。本作には「ゾンビ特急地獄行き」という副タイトルがありますが「ノンストップ殺人列車」と言ってもいいくらいですな▼時代は1906年。四川省の切り立つ岸壁から北京駅へ。この映画はストーリーもさることながら、列車が北京駅を出るまでの描写は、鉄道ファンならずとも目が吸い付けられる。蒸気機関車独特の鋭い汽笛が鳴り響き、プラットホームを覆わんばかりに吹き上がる蒸気、巨大な鉄の車輪をゆっくり回すピストンは魔神の腕のようだ。石炭の匂いまでが鼻にツンとくるようなオープニングです。そこでさて、イギリスの考古学者サクストン教授(クリストファー・リー)は四川省の氷壁から人類の化石を発掘し、持ち帰るため列車に運び込んだ。シベリア鉄道を走る特急に同乗したのは医師のウェルズ(ピーター・カッシング)。やがて列車内で不審な殺人死体が連続して発見される。化石には太古に地球へ飛来したエイリアンが寄生していた。エイリアンは乗客、乗務員を襲い、そのたび姿を変え列車内にひそんでいる。目的は何だ。本作には以後のホラー、アクション映画が踏襲する技法がまるでオマージュのように使われています。死んだら目が白くなる「魚の目」は「ビヨンド」で、頭蓋骨を開頭する解剖学的なシーンは「 ハンニバル 」で、赤く光る目は「 ターミネーター 」で、地球創生期に遥かな銀河系からやってきた宇宙人は「 プロメテウス 」で。見ているうち、あれも、これもと思い当たります▼解剖シーンなんか具体的でしてね。頭蓋骨にノコギリをいれるギコギコした音入とか、パカっと頭蓋骨を開いたときの大脳が「赤ん坊のお尻のように」ツルンとしているのは「記憶を吸い取られたからだ」とか、なんでそんなことをするのかというと、エイリアンは地球上の生物の記憶や経験を吸収し自分の星に持って帰るためやってきたのですが、ミイラにくっついたエイリアンはたまたま円盤か宇宙船に乗り遅れ、地球に取り残されたまま氷河期を越冬し、教授の発掘で「200万年の眠り」から復活したのです。エイリアンが言うには「自分は異星から来た光と熱の塊だ。地球に取り残されてから恐竜や魚に棲みついて生きてきた。地球の歴史はわたしの歴史だ。逃してくれたらこの星から病気や飢えがなくなる」と言うのですが、エイリアンはでも「仲間を導きたい」と殺した死体をつぎつぎ生き返らせゾンビ化する。冗談じゃない。教授とドクターは「こいつの言っていることは地球を悪魔の手に取り返す異星人の計画だ」と判断し、ゾンビ一団の列車を切り離して鉄橋から墜落させ、列車は地上に激突し炎上爆発、なんて、この映画、ちょっとした映画賞を取った映画より、書くことかなりギッシリあるのです(笑)。コンパートメントの室内や寝台列車独特の長い廊下や、ゴトンゴトン響く枕木の音や、深夜特急が走るツンドラの青い氷原とかね▼クリストファー・リーは1922年生まれ。当年92歳にしてなお現役です。名コンビであり私生活上の無二の親友でもあったのがピーター・カッシング。彼もまた映画史に残る人物です。気品ある知性的な風貌。彼の演じたシャーロック・ホームズは「生きて呼吸する過去最高のホームズ」と激賞されました。カッシングが出演すると映画の格が上がるといわれるほどの紳士。謹厳でどんな低予算でも真摯に取り組み、妥協しない役作りで尊敬を集め、その姿勢は「プロップ・カッシング」(プロップ=小道具)と呼ばれるほどのこだわりで有名でした。後日「シネマ365日」シリーズで掲載することになりますが、カッシングの出演作のなかに「若妻・恐怖の体験学習」という一見トンデモ映画があります。これなどタイトルと内容が全然違う、カッシングによる「格上げ」映画の好例です。

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