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シネマ365日

2014年11月17日

特集 ビークル・ムービー ダージリン急行 (2007年 家族映画)

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監督 ウェス・アンダーソン
出演 オーウェン・ウィルソン/エイドリアン・ブロディ/ジェイソン・シュワルツマン/アンジェリカ・ヒューストン

家族にもどる旅 

 紅茶のダージリンのダージリンです。つまりインドのダージリン行き急行列車が本作のビークル。冒頭からなかなかいいシーンです。その前に主演の三兄弟を紹介します。父親をなくした三人の息子たちはここ一年ほど音信不通。長男のフランシス(オーウェン・ウィルソン)はオートバイ事故で死にかけたのを期に、家族の絆を取り戻そうと弟二人にインド旅行を招集する。ヒマラヤの修道院にいる母親(アンジェリカ・ヒューストン)に会いに行き、年だからいっしょに暮らそうと説得するつもりだ。次男ピーター(エイドリアン・ブロディ)、三男ジャック(ジェイソン・シュワルツマン)がしぶしぶ承知、ピーターが車体をゴットン、出発しかけた「ダージリン急行」に飛び乗るシーンから始まる▼フランシスは頭を包帯でぐるぐる巻き。ピーターは父の遺品をひとり占めしたとふたりから非難され、妊娠中の妻と離婚を考えていると打ち明けたとたん、やっぱりお前は冷たい男だと批判集中。作家志望のジャックは小説をかきあげてばかりだが、かつての恋人が忘れられない、というが乗車したとたん女性乗務員を口説きにかかりトイレで行為に及ぶ。弟ふたりは旅を仕切ろうとする兄がうっとうしくて仕方ない。「パスポートを出せ」と長男が言う。「なぜだ」「失くすといかん。おれが管理する」一事が万事この調子である。不承不承、でも結局は兄貴のいうことをきく弟達がおもしろい。「このこと、あいつには言うな」と口止めする尻から、内容をたちまちバラしあう男たちに、肉親の親しさが滲んでいる。途中下車したバザールでピーターがコブラを買って箱にいれておいたところ、車中で蛇が脱走し大騒動。蛇をとりおさえた車掌は「毒蛇は持ち込み禁止。違反者は下車してもらう」と冷たく言い渡し、兄弟は砂漠のような赤茶けた田舎の駅に放り出される▼少年たちがあやつる筏が転覆。三人は川にとびこんで子供たちを救助するがひとりは助からなかった。縁あって葬儀に参列した兄弟たちは亡き父親の告別式を思い出す。兄貴は「そうだ、これは心を取り戻す旅だ」と今回のメーンテーマを繰り返し、内心(ウザッタイな~)と聞き流していた弟たちも殊勝に家族の絆を思う。が、「でもママはオヤジの葬儀に来なかったな」と息子たちは厳粛な事実に突き当たる。ママは来たくなかった、来る気がなかったのだとつぎつぎマイナスの連想の結果「ママはおれたちに会いたがっているだろうか」全員(ノー)に至る。さすがの長男も「もう帰国しよう」意気消沈し全員とぼとぼと空港に向かう。国際空港とは名ばかり、草の生えた飛行場で、妻に電話したピーターは産まれる子供が男の子だとわかる。口々に祝福する兄と弟。ピーターは離婚を妻に告げることをやめ、もういちどやり直そうと決める。しばらく三人は沈黙。我に返ったようになにやら言い出し、ピーターはチケットをとりだすとビリビリ引き裂いて空中に撒き、空港からUターン。やっぱり母親に会いに行こうと思い直したのだった▼なにしろ男兄弟ばかりですからね、やることがサバサバして単純なのです。はるばる瞑想の地ヒマラヤの修道院までやってきた。母親は「息子たちよ」と抱きしめ、かれらは内心(ホッ)、「心の旅」の甲斐があった、あすは連れ帰る話をしようと胸をなでおろすが、そんなやわな母親ではない。あくる日母親の影も形もない。どこへ。修道院では「ときどきいなくなる」と澄ましたもので慌てもしない。息子たちは、母親はやっと自由を手に入れたのだ、おれたちでさえ母親にとっては束縛になるのだ、姿を隠したことが母親の答えだ、もう何も心配せず彼女自身の判断に任せようと合意して山をくだり、今度こそ納得して帰国の途につく。それぞれ大なり小なり、生活と人間関係に葛藤をかかえていて、けっこういい加減なところもある息子たちの気持ちがもう一度結びつく。帰りの車中で兄貴がパスポートを出し「返すよ。自分で持っていたほうがいい」弟達は「やっぱり持っていてくれ。安心だから」と押し戻す▼ダージリン急行の内部が事細かに撮影されます。三等車は混雑していて荷物やヤギまで乗っている、棚にまで人が座っている、食堂車の椅子、木彫の仕切りはすべて手作り、更紗、吹きガラス、車窓から見える風景は実写であることなどがインドの風物をこまやかに反映しています。三兄弟はそれぞれ適役で芸達者揃いだった。ジャックの恋人でチョコッとナタリー・ポートマンが顔をだしています。それと母親役のアンジェリカ・ヒューストン。アカデミー助演女優賞受賞(「男と女の名誉」)云々よりこう言ったほうが早い。「アダムス・ファミリー」のママ、モーティシア。一度みたら忘れがたい顔です。ヒューストンという名前でおわかりのように、父親はジョン・ヒューストン、祖父、甥とも映画に携わる映画ファミリーです。

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