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シネマ365日

2014年11月20日

特集 ガーリー女子会 ブリングリング (2013年 事実に基づく映画)

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監督 ソフィア・コッポラ
出演 エマ・ワトソン/ケイティ・チャン

桁ちがいのセレブ社会 

 2008~2009年にかけハリウッドのセレブの家を荒らしまくった高校生5人の窃盗団。名づけてブリングリング。輝く指輪という意味から「きらきらしたやつら」となるらしい。彼らに6回も侵入されたパリス・ヒルトンの自宅がそのまま撮影に使われています。パリス・ヒルトンって、あのヒルトンホテル創業者一族のお騒がせお嬢さんね。女優やってもモデルやってもプロデューサーやっても、パリス・ヒルトン以外のなにものにも見えないということで有名な人。ある夜彼女が帰ってくると足あとが階段から寝室まで続き、手当たり次第かきまわしたあとが。宝石、シャネル、バルコン、ルイ・ヴィトン、バーキンなどハイブランドもごっそり。逮捕後の調べでは彼らはヒルトンの家に6回侵入、パーティやったりカラオケやったりわがもの顔でうろついていた。ヒルトンは「彼らのやったことは悪事なのよ。この映画をみてそれを自覚してほしい」と訴えていましたが、馬の耳に念仏でしょう。かれらは一躍「時の人」となったのですから。テレビのインタビューでも懲りているふうなど全然ない。むしろ英雄気取りです。こういう異次元の連中をなぜか温かく描く監督がソフィア・コッポラなのです。映像はきれいだし、映画にはいわく言い難いものが「なにかある」ようなのだけど、結局は空の向こうへ雲が流れて行った、というみたいな感慨が残るのが特徴です▼一言でいえば彼らがセレブに憧れ、セレブの身につけるものをごっそり盗んでせっせと自分を飾るのは、セレブと同じ価値を共有することによって、自分もそのステイタスに達したと錯覚する疑似体験でしょう。窃盗団の中心人物はレベッカ(ケイティ・チャン)とマークね。内気なうえにダサイ転校生としてばかにされていたマークに、気さくに声をかけたのがレベッカ。マークとレベッカは最後までプラトニックな関係です。いちばんさきに逮捕されたマークがすべて白状して、ブリングリングは一網打尽になるのですけどね。しかしまあ幼稚というか幼いというか怖いもの知らずというか、計画もなにもなくネットで簡単に検索し鍵の場所まで知って自由自在に出入りし、盗みばかりか飲み食いして歌うたって隠れるふうもなく、ぞろぞろ豪邸を出て行く。まるで遠足帰りの小学生です▼窃盗に入ったセレブはヒルトンのほかオーランド・ブルーム、ブリトニー・スピアーズ、ミーガン・フォックス。セレブのいきつけのレストランやクラブで情報を仕入れ、つぎの獲物候補を選ぶ。彼らの予定をネットで入手し「明日からどこそこへロケだ」とか「夕方はデミのパーティに出席する」とか、その空隙を狙って侵入する。フラッシュの嵐を浴びながらクラブに入ってくるセレブたちをみて、そっくり彼らの真似ができたら、自分も富と名声が手に入ると思うのでしょうね。被服による自己操作ね。そんな軽い彼らの感覚を、社会派とはそれこそ異次元のセンスでコッポラ監督は映画にしています。繰り返し空き巣に入る若い窃盗団グループの手口を根気よく映しているだけで、それをいいとも悪いとも主張せず、あまりにさらさらしている流し方は、ひょっとして「永遠の青春」とはこの人の映画作りのことではないかと思ってしまうのであります。それくらい「成熟」とはかけへだたった感性です。そもそも自身が超セレブであるコッポラ監督には、彼らの若さと掟破りに対する特別な理解と関心があるのでしょうか▼エンド・クレジットのトップはエマ・ワトソンですが彼女は完全に脇役です。ガラでもない役を引き受けたことに首をひねります。彼女の持ち味と全然ちがうし、比べたくないけどダーレン・アロノフスキーの「 ノア 約束の舟 」で、産まれた双子の娘を殺せ、なんてむちゃくちゃいうラッセル・クロウにひたすら耐える嫁を演じたときのエマと、役者って役と監督によってこうまで存在感が違うのかと思わざるをえませんでした。本作の窃盗団とはとどのつまり軽薄なワルがつるんだだけのグループです。足がつくのは時間の問題でした。優等生のエマが演じたニッキーという女の子は、なにをするにもぎこちなく苦笑ものでした。もうひとつ。実写されたヒルトン邸の内部。ヒルトンは「ごっそりやられた宝石」と言っていたけど、この意味〈宝石箱〉なんてちょろいものじゃないです。〈宝石室〉なのです。クローゼット(トよぶのが妥当な規模なのかはさておき)にはどこまで続くドレスの列。この世の値打ちはブランド品でしか知らない高校生が、アタマのネジ飛んじゃってもおかしくなかったわね。

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