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シネマ365日

2014年11月22日

特集 ガーリー女子会 ベッカムに恋して (2002年 青春映画)

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監督 グリンダ・チャーダ
出演 バーミンダ・ナーグラ/キーラ・ナイトレイ/ジョナサン・リース・マイヤーズ

応援歌 

 ヒロインはサッカー好きな18歳の高校生ジェス(バーミンダ・ナーグラ)。いつも公園で男子とストリートサッカーに夢中だ。彼女のプレーをみた地元女子サッカーチームのジュールズ(キーラ・ナイトレイ)は、いっしょにやろうと自分のクラブに誘う。同じ年頃の女の子たちがキャアキャア出演してスクリーンの華やかなこと。グリンダ・チャーダ監督はインド系イギリス人です。ほりさげていけばこの映画には複雑で深刻な人種差別問題があります。本作にもジェスの父親がクリケットの速球ナンバー1投手だったにもかかわらず、インド人だという理由でイギリス人に無視され「白人どもはわたしのターバンをからかい」チームを追い出された苦い経験があります。インド人がイギリスで生きるのは大変だと父親は劇中述懐する。母親は伝統的なインドの習慣を守り、「男の前で半裸になり脚をむき出しにして走るサッカー」のような競技を断じて許さない。だからジェスは両親に隠れてサッカーしている▼ジェスはコーチのジョー(ジョナサン・リース=マイヤーズ)にも認められ、ジュールズとの友情も育っていく。ジュールズの父は娘がサッカーの才能があることを認め、父娘で練習するくらい理解があるが、ママはサッカーの「サ」も知らないし無関心。ジェスの姉は婚約したが嫁ぎ先のママが、バス停でジェスとジュールズがキスしているのを見かけ、恥ずかしげもなく衆人環視のなかで抱き合うような娘のいる家とは結婚しないと破棄を申し込んできた。ジェスのママはカンカン。姉は泣き「ジェスのせいよ。その子(ジュールズのこと)はレズよ」いっぽうジュールズのママは娘の部屋で聞こえるケンカの文言を早合点し「娘には恋人がいる、女の子なのよ」とパパに報告する▼こういうガーリー系エピソードがつぎつぎ展開され、他愛ないとは思うもののけっこうおもしろいのは、鋭角なキーラの演技と、彼女のパパ・ママ役フランク・パーカーとジュリエット・スティーヴンソンのとぼけた味わいだろう。コーチのジョナサン・リース=マイヤーは、家族のしがらみをかかえて身動きできないでいるジェスに突破口をみつけてやりたいと「娘さんの才能をのばしてあげてほしい」と父親に頼みにいく好青年を演じる▼しかしながら、インド人家庭の伝統と習慣、文化の違いはあってもヒロイン、ジェスがちょっと受け身すぎるのよね。わが日本の「なでしこ」の活躍以来、日の当たらなかった女子サッカーで頑張るガールズたちを、応援するのはやぶさかでないけれど、ジェスってちょっとスポーツするわりには性格が面倒くさくない? 「あなた、人生を自分で決めることはできないの。いわれるままね」ってジュールズに指摘されるはずだわ。父親や母親や家族親戚が祝福してくれるのをひたすら待つ。ジェスにすれば理解のあるジュールズの、しかもイギリス人である家庭環境と、社会の少数派であるインド系の自分とはいっしょにならないと思っている。そこをハッキリ言うなら、家族というしばりに対してジェスががんじがらめになっていることに、インド人の彼女が背負ってきた文化の抑圧と重さを感じる▼コーチとの恋愛が生じるジェスとそれに嫉妬してとじこもるジュールズとか、ジェスが決勝戦にかけこみ出場で優勝をもたらすとか、ガールズ系のありふれた展開は完全にコミック調の予測調和だわ。最後はもちろん大団円です。レズ疑惑に凝り固まっている母親にジュールズは「わたしが好きだったのはジョーよ。男のコーチよ。でももし女だったら何だっていうのよ」で解決。ジェスもジュールズもアメリカの一流クラブから大学の推薦入学を受け渡米。ジョーはジェスに愛の告白。ジュールズは失恋することになるが前途洋々のサッカー人生に比べたら男のひとりやふたり、いい男なんかアメリカで、いくらでもみつけてやるわって感じね。こういう乾いたキャラがもっとあればよかったのに、一言でいうとテレビのホームドラマに終わってしまった。でもしつこいようだけど、いっぱい問題をかかえているのよ、この映画。女子サッカーが男子に比べて格下で、女子サッカーの監督なんかしていたら「父親が聞いたら反吐を」なんてジョーは言っているのもそのひとつでしょ。そんな世界でサッカーに賭けてやろうというガールズたちを扱ったのは、自分自身言うに言えない差別を味わい、文化と伝統の重さに呻吟したに違いない監督の、ガーリー応援歌ね。

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