女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2014年11月23日

特集 ガーリー女子会 女はみんな生きている (2001年 社会派映画)

Pocket
LINEで送る

監督 コリーヌ・セロー
出演 カトリーヌ・フロ/ラシダ・ブラクニ

16歳の娼婦 

 コリーヌ・セローの監督だからコメディの佳品だと思うのは当然かもしれない。テンポのいいコミカルな筋運び、達者な役者、転換の巧みさなど映画を成功させるすべての要素を彼女の作品は持っている。でも「16歳の移民の娼婦」というヒロインはコメディにふさわしいキャラだろうか。この映画が快作であることに文句はないが、ハッピーエンドだけで片付けてしまえない重いものがある。セロー監督が映画のエンディングにもっていくまでに描き連ねる、人間の精神の腐った部分ときたら、スクリーンからでも腐臭を発する。平凡で裕福で、夫や息子のいいなりになってなんの疑問も持たなかった妻エレーヌ(カトリーヌ・フロ)が、娼婦ノエミ(ラシダ・ブラクニ)を助ける。ノエミはアルジェリアの移民の娘で16歳のとき50代も半ばをすぎている男と結婚させられることになった。2万フランの結納金が父親に入るからだ▼夫になるはずの男が初めて彼女にしたのは唇をめくって歯を調べることだった。中東の奴隷市場で20世紀になってもまだ残っていたといわれる、奴隷を選ぶときの方法だ。ノエミは男のもとから逃走しマルセイユを逃げまわり、組織の男に拾われ、彼らは娼婦にするため女を監禁状態にして「調教」する。ヘロインを打たれ、たとえ逃げたとしても禁断症状を発症し、ヘロイン欲しさに舞い戻る。半死半生のリンチを受け再び街に立たされる。稼ぎのいいノエミに男たちの監視がゆるんだのを見計らい、ノエミは徐々にヘロインを減らし8カ月かけて元の体に戻す。一方で吸い上げられる稼ぎのごく一部を貯め、さらに上前をはねたヘロインを売りさばいて金にした。もともと頭のいい彼女は新聞を読み経済欄に熟通し、株の運用で組織に儲けさせ、ますます自分の立場を有利にしていく。彼女は洗練された頭脳と性の技巧で、どんな男もとりこにした。彼女は大富豪に狙いをつけた。身につけたテクニックで男の心身をつかむ。男はすべての遺産をノエミに残すと言う。自分は娼婦だから金をくれたらいいというノエミに、男はすべての銀行口座にある現金をノエミの指示通りの手順で処理する。男は死に、ノエミは組織に男が自分に預けた金を明け渡し、組織は億の単位に満足してそれですむはずだった。しかし男の遺族がすべて空っぽになっていた口座に疑問をもち調べ、父親の遺産が死ぬ前に処分されていたことを知る。組織はノエミのもとに巨額の現金が残されたことをつきとめ、それを巻き上げる「委任状」作成に合意させようとノエミを凄惨に傷めつける。ここでノエミは独白している。「こいつらに金を渡すくらいなら死んでやる」。隙をみて脱出したノエミは血まみれで車の前に飛び出し、助けてくれとドアを叩いた。ドライバーはドアをロックし、路上で殴打されるノエミをそのままにして走り去った。車に乗っていたのがエレーヌとその夫だった▼救急車を呼んであげなくてはと、ケータイを取り出した妻に夫は余計なことをするなと止める。それでも気になった妻は翌朝、ノエミの収容された病院をつきとめ様子をみに行く。昏睡のうえ危篤である。エレーヌは夫が会社の経営者。彼は田舎から年に一回出てくる母親にあおうともせず、追い返すような男だ。大学生の息子は女と同棲し、ガールフレンドがいながら二股をかけ、女がどっちも自分に夢中になっているといい気になって自堕落な関係を続け、様子をみにいったエレーヌは息子が居留守を使って自分を追い返したことがわかる。エレーヌは空虚だった。病院で組織の男たちの襲撃を受けたノエミを、すんでのところで救出したエレーヌはノエミを夫の母マミーの家に連れて行く。手厚い看護でノエミの体力が戻ったところで、初めてエレーヌはノエミの過去を聞かされたのだ▼エレーヌが家をあけている間、夫は狂ったようにケータイに連絡をいれてくる。洗濯物ひとつできない。息子は女たちを家に引き入れ台所は汚物の山。家に戻った母親に当然のごとくソファにふんぞりかえってメシ・フロといいつけ、つくった料理に「魚はきらいだ、クソ」と言った息子に「も一度言って」とエレーヌ。鼻しらんだ男たちにこういう。「あなたたちに食事を作るのはこれが最後よ 」。ノエミが底辺からボロボロになった体で、機知と勇気をかきあつめ、脱出した生き方に比べたら、妻を家政婦としかみない夫、母を下女のように扱う息子、彼らのふるまいを受け入れることが愛だと思っていた自分。「こいつらもわたしも一体なにをしていたのだろう」。ノエミには最後の大仕事が残っていた。組織に奪われたパスポートを取り返し、現金を引き出し、叔父の家に預けられたままの妹を引き取り…なんとなれば叔父は彼女を結婚させようとしていた、年の離れた男に。その男は自分のときと同じように妹の歯を調べ売春組織に売るのだ…二度と自分に手をだせないよう組織ごと警察にやつらを引き渡す。これだけのことを終えるためノエミはエレーヌに協力をたのむ▼海辺の家で女たちが入り日をみている。マミー、エレーヌ、ノエミと妹。流れる曲はバッハの「ゴールドベルグ変奏曲」です。破滅的だった人生を再生させるため、暴れまくった女たちがききほれるにふさわしい鎮魂曲ですね。

Pocket
LINEで送る