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シネマ365日

2014年11月25日

特集 ガーリー女子会 コヨーテ・アグリー (2000年 事実に基づく映画)

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監督 デヴィッド・マクナリー
出演 パイパー・ペラーボ/マリア・ペロ/ジョン・グッドマン

魅力の「コヨーテ」たち

 ニュージャージー州の田舎町からソング・ライターめざしニューヨークへ出てきたヒロイン、ヴァイオレット(パイパー・ペラーボ)。お定まりの苦労話があれこれあるのだが、ヒロインはいつもだれかに助けられ、幸運に恵まれ、励まされ、心底困ったことなんかひとつもないのだ。こう書くと人の不幸を待ち望んでいる、どうにもいやらしい性格に思われるだろうが(それもいくぶんあるとはいえ)、この映画に終始貼り付いている現実感の薄さというのは、いつもうまくいくヒロイン像からきているといってもいいと思うのだ。父親ビル(ジョン・グッドマン)は男手ひとつでヴァイオレットを育て、都会にやるのが心配でたまらない。音楽の才能のある妻を家庭に閉じ込めたまま、若くして死なせてしまったという後ろめたさから、音楽で身をたてる娘を成功させてやりたいと心の中では思っている、いいパパである。思えばこの映画には悪役がひとりもいないのだ▼ヴァイオレットの親友グロリアがこれまたいいやつで、ニューヨークまでわざわざ荷物を乗せて車で送ってきて、ヴァイオレットの間借りした安アパートのひどさに仰天、ヘソクリをカンパする。ヴァイオレットはこれもお決まりのコースで、空き巣に入られ虎の子のヘソクリも盗られ意気消沈して早朝のダイナーでコーヒーを頼む。そこにケバイ女達が数人、札びらをきって気勢をあげていた。あれは娼婦かときくヴァイオレットに「仕事あがりで息抜きしているところさ、彼女らはコヨーテだよ」とオーナーは教える。コヨーテ登場である。気取らずに書けばこのビッチな彼女たちだけがこの映画で精彩を放っている。品行方正な女がみたら身の毛もよだつ風体をしている連中だ。人相も読み取れない濃いメーク、燃え上がる髪の毛、超ミニに網タイツ。あたりはばからぬ態度物腰で、彼女らはラジオから流れてきた曲にあわせ、いきなりみごとなダンスを踊りだした▼女たちが「コヨーテ・アグリー」というバーのバーテンダーだと教えられたヴァイオレットは、開店前の店に行く。オーナーのリル(マリア・ベロ)は、「働きたい」とおずおず言うヴァイオレットに金曜の夜に店にくるよう指示した。「コヨーテ・アグリー」は異次元の世界だった。狭い店内にひしめく男客。彼らをエクスタシーに導くのは、バー・カウンターのうえで踊る、全員が女のバーテンダーたちだ。アクロバティックなダンス・パフォーマンスは過激で過剰で、エロティックでダイナミックだ。彼女らは男たちの熱い視線を吸いこみ、挑発し、跳ね返す。カウンターに流されたウォッカが燃え上がり、炎の上にステップが鳴る、汚いヤジをとばす客には氷がぶちまけられ用心棒がつまみだす。店にはルールがふたつ。恋人を店に連れてこない。客とはデートしない。出す酒はストレートのみ。水割りお断り。客は酒が飲みたいから来るのではなく、「コヨーテ」の刺激と興奮に酔いにくるのだった▼ヴァイオレットは仕事にも都会生活にもなれ、ボーイフレンドもでき、いうことなし。客がオーバーヒートして騒乱寸前になった夜、マイクをにぎったヴァイオレットが歌い出し、その歌に聞き惚れ、暴動寸前に騒ぎはおさまった。ヴァイオレットが歌手ではなくソング・ライターをめざすのは大衆恐怖症による。大勢の前ではあがって声が出なくなる。オーディションも受けたがマイクの前にたつと緊張し「すみません」と言って帰ってくるのだ。ボーイフレンドを店に連れてきて、ルールをやぶったヴァイオレットはクビ、故郷の父親のもとに帰る。ケガで足を折って入院した父親はヴァイオレットに初志貫徹するため二度と帰ってくるなと言う。グロリアは結婚したが「彼とは結婚したばかり、あなたとはもっと前からのつきあいよ」といってこの優柔不断の友だちを見捨てず、いつも励まし背中を押す。ヴァイオレットのキャラが、そもそも音楽で成功するような激しいものを備えていないのだ。ほどほどに悩み、ほどほどに愛しあい、ほどほどに傷ついて、ほどほどに疲れる。これならわざわざニューヨークにでてこなくとも、田舎のスポーツジムに通っているほうがましではないか。どうにもこうにも退屈なヒロインを補って余りあるのがカウンターで踊り狂う「コヨーテ」たちだ。このバーで稼ぐだけ稼ぎ、大学に戻って法律の勉強をする、だれにもしばられない生き方を経験する、自分の力でどこまでやれるかためしてみる、彼女らにはそんな体を張ったエネルギーが充満し、どこにもためらいがない。リルはそんな女たちをたばねている。小さな店だがここは自分の「家」だといい、自分の生き方にだれにも口をはさませない。鋭角である。ぼっさりしている鈍角のヒロインよりよほど小気味よい▼ヴァイオレットのCDがオーディションに通り自作を歌う日、リルは店を早仕舞いし、コヨーテたちを連れて会場に詰める。パパとグロリアが来て、恋人がこっそり隠れて来る。できすぎシーンのオンパレードであるが、のりかかった舟、最後までみなくては仕方なくなる映画なのだ。パイパー・ペラーボの劇中の歌はみなリアン・ライムス(ソルトレイクシティ・オリンピックの歌を開会式で歌った)が吹き替えています。最後にちょっとだけご愛嬌に本人が登場します。

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