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シネマ365日

2014年11月27日

特集 ガーリー女子会 幻の薔薇 (2010年 社会派映画)

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監督 アモス・ギタイ
出演 レア・セドゥ

すれすれの女 

 土砂降りの雨の中を女の子がふたり、マルジョリーヌ(レア・セドゥ)と親友のセシルが走り去る。廃墟がある。時代は第二次大戦が終わったばかりのフランス。町は貧困と失業者にあふれ、マルジョリーヌはセシルの好意でいっしょに住まわせてもらい、貧しさからの脱出を考える。レアちゃんがワイルドなすべりだしです。落ちているリンゴを拾い、粗末な服の袖でごしごし拭きガブっとかぶりつく。生命力にあふれています。この映画を一言でいうと、お買い物中毒の女がローンで家具や衣装を買いあさり、借金地獄に陥って夫にも愛想をつかされ離婚、お金も愛も家も失い、本当なら破滅するはずですが(いやまて、どうもそうじゃないらしい)と思わせる。それがレアの持ち味なのか、アモス・ギタイ監督の意図なのか、ちょっと戸惑うのですが、いやどっちもだ、としておきます(笑)。破滅型の女をギタイは節度のある撮り方でとてもきれいに見せていますから▼その「きれいさ」ですが、白鳥麗子っていましたね。「白鳥麗子でございます」のあの子。全然脈絡がないのだけど、この映画を見ていてなんとなく、彼女の堂々たる自己肯定を思い出したのよね。自己肯定の仕方が、マルジョリーヌが陰だとしたら白鳥麗子は陽ね。だからってマルジョリーヌの肩を持つつもりはないのだけど、そのう…ちょっと言いにくいのだけど、女って結局きれいなもの、美しいものが好きなのよ。だから見境なく借金して買い物しまくってもいいというのでは、もちろん違います。そうじゃないのだけど、むしゃくしゃするとき買い物して気を晴らすってとき、だれにでもあるよな…それでなくとも女は買い物が好きよ。どうもわれながら歯切れが悪いけど、マルジョリーヌの所業を、まったくどうしようもないやつだ、と断罪する気になれないのよね。自分もタガがはずれるとやってしまいそうなところ、ないですか? ないか。劇中マルジョリーヌはいくら事実を指摘されても全然反省せず、謝りもせず夫に「愛しているわ」というだけね。愛された男はたまったものじゃない。彼女に浪費は罪だ、借金は悪だという観念など毫もない。全然ひるまないところがすごいと思うのよ。夫に見捨てられ、友達にも見放され、仕事は解雇され残ったのは借金だけ、それでもヒロインは(ふん)。傲然としている。へこたれない女をやらせたらレアは絶品です▼夫は地道な植物遺伝子の研究に従事し、花粉の交配や新種の薔薇作りに余念がない。夫の一家はみな研究肌である。つまり嫁だけが浮き上がっている。「あの女はよせ」と夫のお爺ちゃんは警告するが、そのときはラブラブだったから、多少のわがままは可愛いとしかみえなかった。あえていえば男が「ぼくがハゲになってもお腹が出ても愛してくれるかい」なんてきいているのに、マルジョリーヌは「あなたの泥はわたしがはらってあげるわ」と、乾いた言い方である。とうとう自宅まで債権者が取り立てに来る。彼は夫にしみじみ「ローン地獄ははまったら立ち直るのはほぼ絶望だ」といたく同情し、妻に向かってはいい加減にしないと取り返しがつかなくなると忠告し、次回は「裁判所で会うことにならなければいいのですが」と言いおいて去る。ストレスに悶える夫に「返せばいいのよ」と妻は動じない。どうやって返すのか、彼女は美容院に勤め、気がきいているし、腕はいいし、オーナーは頼りにし給料の前借りとかできる便宜は図ってやっていたのだが、店の客と裏取引し個人の仕事で収入にしていたのがばれてしまった。オーナーは激怒、マルジョリーヌは「給料が安いからです」しゃあしゃあ言い、怒髪天を衝いたオーナーはその場でクビにする▼ヒロインは買い物依存症だと書いたが、彼女が物欲の虜かというとそうではない。ただとめどなく欲しいものがある、それだけなのだ。だれにでも欲望はある。セックスか男か女か、金か権力か、なにかは知らんがほしいものはあろう。これは罪か。貧しい暮らしから抜け出た自分の夢見る生活があり、そのための品揃えをしたくてローンで買いまくった。夫と自分の収入の限界以上になっても歯止めがきかなかった。こういう女性って現実にいくらでもいる。彼女らはみな破滅するか。当然それなりのリアクションはこうむるが、破滅の恐怖は普通の人間だから持つのであって、もともと破滅型の人間は精神の古巣に帰るのと同じである。彼女にとっては良識と「しばり」によって評価されねばならない現実こそ異郷なのだ▼こういう女性はほうっておくしかないし、危険だとおもったら避けて通るしかない。理解しようとしても無駄だし受け入れもしない。だから堂々としている。そんな「すれすれの女」をギタイはスタイリッシュに描いています。レアはふてぶてしさと繊細さで適役でした。

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