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シネマ365日

2015年1月6日

特集 お正月いっしょに笑いたい男 ジム・キャリーはMr.ダマー (1994年 コメディ映画)

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監督 ピーター・ファレリー/ボビー・ファレリー
出演 ジム・キャリー/ジェフ・ダニエルズ/ローレン・ホリー

カルトをつくった映画 

 昨年(2014)11月の全米ボックスオフィスで、本作の続編がオープニング興収でみごと首位デビューを飾った。20年ぶりに再会したロイド(ジム・キャリー)と相棒ハリー(ジェフ・ダニエルズ)が、ハリーの娘を探す旅に出る。批評家からは厳しいコメントがよせられたが、観客はキャリーのバカキャラ復帰に歓迎ムードだと映画サイトが報じていた。同作はキャリーの「ブルース・オールマイティ」(2003)に次ぐ自身の歴代2位の記録であり、最近シリアスなドラマに挑戦し続け、キャリアが低迷気味だったキャリーが、この大ヒットを機にマネーメイキングスターとして返り咲く可能性があるとしている。本作はことほどさように、公開当時2億4700万ドルという異例の興収をあげ、20年後にして続編が大ヒットするという、カルト的伝説の映画なのだ▼ジム・キャリーの顔は異様なほどよく動く。顎関節を自由自在に外せるのかと思うほどパックリと口は開くし、目を見開くと顔中が目になり、目を細める、しかめる、口を引き結ぶ、口角を上げる、下げる、鼻をひくひくさせる、そのたび顔面の筋肉という筋肉が自由自在に収縮する。神業のような「顔芸」にさらにダイナミックな動きを与えるのは彼の肉体である。しなやかなだけではない。よくのびること、のびること、柔らかい体はネコ科の動物も顔色なしだ。だから彼が黙って座っているだけでもセリフにまさる顔と肉体のアクションに、観客の目は吸い込まれる。徹頭徹尾スラップスティックコメディなのだ。主人公のロイド(ジム・キャリー)はロードアイランドでリムジンの運転手をしている。同居人かつ相棒のハリー(ジェフ・ダニエルズ)はグルーミング稼業だ。かれらはミミズ専門のペットショップを開くため資金稼ぎをしているのである。ある日ロイドは空港まで送り届けた美女メアリー(ローレン・ホリー)に一目惚れ。彼女が車に置き忘れたスーツケースを届けようと、ロイドは後を追いかけるが、一歩のところで飛行機は離陸した。その夜ロイドはハリーといっしょに彼女のスーツケースを届けようともちかける。ふたりは犬の形に改造したワゴンに乗って、ロードアイランドからざっと5000キロ離れた高級リゾート地、コロラド州のアスペンに出発する▼しかし今から見れば辟易するドタバタも少なくない。ハリーが可愛がっている小鳥の頭がちょん切られるとか(映りはしないけど)、追手のひとりを殺鼠剤で殺すとか、ビールの空き缶に排尿し、スピード違反でおいかけてきた警官が飲むとか、口いっぱい食べ物を詰め、クチャクチャ咀嚼し口の中をみせながらしゃべりまくるとか、シャンパンのコルクで野生動物保護対象のシロフクロウを殺してしまうとか、グロテスクで露悪的で不快なシーンがいくつもある。ところがジム・キャリーが一瞬のうちにそれらを吹き飛ばす「全力バカ」を発揮するのだ。こうなるとこのおバカ映画はエネルギーのかたまりみたいなもので、過剰な熱線放射能を浴びて、なにかいいかけた観客は口を封じられるのである▼ロイドのハチャメチャぶりにアタマにきたハリーは、おれは歩いて帰ると、長いはるかな一本道を歩き出す。途中ヒッチハイクを試みるが車もトラックもとまってくれない。そこへダッダッダッ。音からしてドン臭いスクーターが走ってきた。みればヘルメットをかぶったロイドである。動かない車を売ってスクーターを買った、二人乗りできるからこれでアスペンまで行こう…。大の男ふたりがちょこんとスクーターにまたがり、よく動くなと思うが、スクーターは健気に「ダッダッダッ」と走るのである。理由はないが、このシーンにはどこか哀切感がある。どうみても世間に通用する人並みの経歴も職歴もなく、なけなしの金をはたいてグルーミング業らしいワンちゃん型バンを走らせ、ミミズショップを開く計画だった、でもお嬢さんに一目惚れした相棒は無謀な旅に出て誘拐事件の巻き添えを食い、車は動かず、小さなスクーターでひたすら目的地に走る男たちの、明日の心配を解脱した明るさが切ないのである。この感覚は「俺たちに明日はない」とか「イージー・ライダー」に通底する。とはいえ公開から20年後に見なおしてもやはりジム・キャリーの肉体まるごとを投入した全力芸には圧倒される。シリアスな役で低迷したとか映画評は書いているけど、そうかしら。「トゥルーマン・ショー」とか「フィリップ・きみを愛してる!」は傑作だった。二作ともどこか哀歓があったのは「Mr.ダマー」に似ている。ジム・キャリーとはもともとコメディだけの役者ではないのだ。

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