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特集「アニマルフェスティバル」

2015年1月8日

特集「それいけ、アニマル・フェスティバル3」 ファンタスティックMr.FOX (2009年 ファンタジー映画)

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監督 ウェス・アンダーソン

野生動物だからさ

 「ゆるキャラの哲人」ウェス・アンダーソンと児童文学のロアルド・ダールの個性がピッタシ。ダールはご存知「チャーリーとチョコレート工場」「マチルダ」の原作者です。「マチルダ」はハリポタシリーズの「賢者の石」が出版されるまでイギリス児童文学書のトップを独走していた人気作品でした。声の出演が狐の夫婦に扮するジョージ・クルーニーとメリル・ストリープのほか、ビル・マーレイ、ウィレム・デフォー、オーウェン・ウィルソンというアンダーソン組。ごちゃごちゃ言わなくても、阿吽の呼吸で自分の意図を理解するキャストで固めるのはいつもの通り。当然といえば当然すぎますが、彼の映画はすべて彼の世界観で構築される。ファンタジックで風変わりです。主人公たちはどこかネジが一本足りないけどとにかく一生懸命、作品にはブラックな部分もけっこうあるのに温かな気持ちになれる。この映画で父さんキツネが「野生動物だからさ」とボソッとつぶやくのはキメ台詞のひとつです▼父さんキツネは泥棒をなりわいとし、牧場からニワトリやウサギを盗んで暮らしている。ある夜人間に発見され窮地に陥ったとき母さんキツネがいう。「明日の朝まで生きていたら、二度と盗みはやめましょう。わたし妊娠しているの」以来、父さんキツネはきっぱり足を洗い、新聞記者となり「穴蔵は狭いし汚い、貧しい気分になる」と父さん。「でも幸せよ」という母さんのいうことをきかず、息子のアッシュの教育にもいいといって父さんは説得。大きな木のふもとに新居をかまえた。アッシュは内気な子だ。従兄弟キツネが同居することに。彼は瞑想好きな変わったキツネである。父さんキツネはフクロウといっしょに、近所で名高い人間三悪人の牧場からどっさり獲物を盗る。母さんは「わたし、切れたわ!」とカンカン「2年(キツネ時間で12年)前約束したでしょ。ニワトリも七面鳥もヒナ鳩も二度と盗まないと。わたしは信じたわ、なぜ裏切ったの」父さん「野生動物だから」狩りをしなくちゃおれないのです▼ところがキツネに牧場をあらされた人間たちは「ただではおかない」。キツネ一家を兵糧攻めにするため木を切り倒し、川を埋め、森を破壊し、108人の男たちがキツネの穴を包囲した。アナグマ、カワウソ、イタチ、野ねずみ、モグラウサギらがやってきて「お前のおかげで森を追い出された」と訴えた。人間たちは父さんキツネを捕まえ剥製にするまで兵糧攻めをやめない。穴蔵では水も食料もつきてきた。そこへ偵察にでたアッシュと従兄弟キツネがみつかり、従兄弟が捕虜になったのだ。人間たちは父さんと交換だという。父さんキツネは出て行く覚悟を決める。息子が言う。「父さん、僕も行く。あきらめることはない」みんなハッとする。そうだ、おれたちは野生動物だ、魂を売ってまで何を求めていた。決死の人質救出作戦だ。サバイバルをかけて攻撃に打ってでる。こうなるとモグラもアナグマもそれぞれの得意技は強い。母さんは再び妊娠していたが気丈に父さんを励ます。ロアルド・ダールもウェス・アンダーソンも人間嫌いなのですかね(笑)▼とにかく映像がキュートで技術が高度です。これ「 チキン・ラン 」といっしょのクレイアニメですね。個性的な動物たちの造形が、身悶えするほど可愛くてスマートだ。穴を掘って地底深く逃げるキツネや動物たち、悪役のネズミとの決闘、オオカミとの遭遇、いたるところにユーモアとギャグとインテリジェンスがあふれていて、アニメの絵そのものが美しく、精巧で表情豊かだ。父さんキツネと母さんキツネのまばたきのひとつ、ひとつ、キスシーンなんか上手ねえ。従兄弟へのコンプレックスでへこたれていたアッシュが、野生に呼びさまされる。文化づけになって、それこそ自然の本能を低下させている人間への皮肉みたいね。アッシュが才能ある従兄弟が泣くのをみて、夜中に電車の模型を走らせてやる、こんなムクのシーンがあるいっぽう、悪役の人間たちの造形がじつにわかりやすい「チビ・デブ・ヤセ」で、殺してやる、ただではおかぬとすごむわりにはすぐドジをふむ。余りに堂々とした予定調和に観客はみな(任せるわ)って気になるのでは。まちがいないファミリー映画の一本。

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