女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「アニマルフェスティバル」

2015年1月12日

特集「それいけ、アニマル・フェスティバル3」 クジラの島の少女 (2002年 家族映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ニキ・カーロ
出演 ケイシャ・キャッスル・ヒューズ/クリフ・カーティス

愛と幻想のクジラ 

 原作者のニュージーランドの作家ウィティ・イヒマエラは、この映画を「世界の少女たちに見てほしい」とインタビューで答えている。特に少女たちにと断ったのは、主人公パイケア(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)が、運命と伝統に挑戦し愛と挫折を通して勝利し、自らの在り方をつかむ、その勇気ある生き方をわかってほしいということだろう。リーダーシップとか判断力、どんなときにも持ちこたえることのできる体力とか忍耐力とか、13歳の少女が経験するには重すぎる課題が、どっさりパイケアにはかぶさってくる。同時にこの映画を作り上げたことについては女性の力がとても大きい。監督・脚本のニキ・カーロ。彼女は本作のあと「スタンド・アップ」でシャーリーズ・セロンとフランシス・マクドーマンドをそれぞれアカデミー賞主演・助演賞にノミネートさせた。音楽のリサ・ジェラルド。彼女はアイルランド移民の子としてメルボルンに生まれた。「ヒート」「グラディエーター」と続いたハリウッドの大作のあとだったので、ニュージーランドを舞台としたこの映画に新鮮なイメージで取り組み、荒涼とした海と雄大なクジラと伝説を音楽でマッチングさせた。キャスティング・ディレクターはダイアナ・ローワン。「ピアノ・レッスン」のアンナ・パキンに白羽の矢を立てたのは彼女である。大勢の子供達の中から的確に素質を見抜く目で、本作の主演に選ばれたのがケイシャ。彼女は13歳にしてアカデミー主演女優賞候補となった▼ニュージーランドの海辺にあるマオリ族の村ファンガラ。勇者がクジラに乗り遠いハワイキからこの地にやってきた、その子孫がマオリ族だという伝説が伝えられ、代々男を族長としてマオリ族の系譜は受け継がれている。ときは現代。族長の長男ポロランギに娘が生まれた。双子だった男子は母親といっしょに死んだ。娘はパイケアと名付けられ成長するが、自分は祝福されない子だったというコンプレックスから抜けられない。父親のポロランギも跡継ぎを作れなかった、責任を果たせなかった負い目から村を出て行く。パイケアは祖父コロと祖母フラワーズに育てられる。祖父母から充分な愛情を注がれてはいたがパイケアはなぜか満たされない。遠い海から自分を呼ぶ声が聞こえる。娘を迎えにきたポロランギに連れられ村を後にするが、途中で引き返す。祖父は村中の長男を集めいくつかの試験をやりぬいた者を指導者にすると決める。棒術、格闘技、水泳、潜水。パイケアは自分にもできると思うが、現族長である祖父は女には受けさせない。伝統に従って族長はあくまで男なのである▼コロがすこぶる付きの頑固者である。孫娘の素質を見抜いているのは祖母だ。ぐうたらだが棒術は天下一品の次男ラウィリのところにパイケアを行かせる。ラウィリは独裁的・高圧的な父親の鼻をあかせるので大喜び。パイケアはメキメキ上達する。しかし孫娘がひそかに指導者養成のトレーニングを受けていることに激怒した祖父は叱りつけ、彼女の出生がそもそも不幸の原因であると思い込む。パイケアは学芸会の朗読で祖父と一族への尊敬と愛情を読むが肝心の祖父は欠席。彼は学芸会にくる途中、浜辺に打ち上げられた6頭のクジラに出会ったのだ。村人たちも総出でクジラを海にもどそうと徹夜で作業するが、数トンもあるクジラを動かせない。海にもどさないとクジラは死んでしまう。一頭さえ海に帰ればあとのクジラも動く。コロはあらゆる方法を試みるがクジラは無残に横たわったままだ。パイケアはクジラが自分の呼びかけを聞いてやってきたのだと確信する。それがこんなことになってしまった▼打ち上げられたクジラを見てパイケアは「生きる意味を失って死にたがっている」と感じる。万策つきた村人たちが諦めて浜辺を去ろうとしたとき、パイケアがクジラに近づく。壁のように横たわるクジラの胴にてのひらを当てる。クジラが身動きした。両手を当て目を閉じた。クジラが微かに潮を吹いた。パイケアはクジラによじのぼった。胸ヒレが砂を叩き、尾ヒレが水を打ち、クジラの胴がゆるいだ。パイケアが言う「行こう」。クジラはブルっとみぶるいすると巨大な胴体はすべるように海に入って行った。最初にパイケアのいないことに気がついたのはおばあちゃんのフラワーズだった。孫がいない。振り向いたら浜辺にクジラもいない。すぐわかった。パイケアについて行ったのだ。海へ。村人たちの叫び声。遠い波間にクジラにのった少女が見える▼カーロ監督の社会派の感覚からいうと、この映画は伝統という名の制度や文化に縛られて、力を発揮できなかった女性たちに捧げる鎮魂とリスペクトでしょうか。監督は映画化の打診があったとき原作を読んで「これは素晴らしい映画になる」と確信、脚本も自分で書き、英国アカデミー賞や数々の映画賞を受賞、ノミネートの対象になりました。パイケアの父親役のクリフ・カーティスは「コロンビアーナ」でヒロインに殺しのテクを教えるおじさん。殺し屋にも学問は必要だと姪を学校にやらせるおじさんでした。

Pocket
LINEで送る