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特集「ナンセンスは素敵だ」

2015年1月18日

特集 ナンセンスは素敵だ ベルベット・ヴァンパイア (1971年 ホラー映画)

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監督 ステファニー・ロスマン
出演 セレスデ・ヤーナル/シェリー・マイルズ

口説き上手な女吸血鬼

 なにを隠そう、制作総指揮がロジャー・コーマンですね。コーマンのビアンなヴァンパイアものとなると、どこまでナンセンスを極めているのか、ぜひ見なければ。コーマンとはB級を撮らせたら、この人の右にでる製作者はいないハリウッドの大プロデューサーです。およそ「シネマ365日~」で彼の名が出てきた以上、ケチをつけた映画は1本もないという、それほどわたし「B級の帝王」のファンです(笑)。そこでこの「ベルベット・ヴァンパイア」とは副題「トワイライト吸血レズビアン」という、もうB級どっぷりとしかいいようのない、いやらしいところがまったく素敵(笑)。コーマン映画の魅力を一言でいうと、黄金時代の東映時代劇に似ている。ワンパターン・類型・お定まり・マンガ、ありとあらゆる悪口にもかかわらず、びくともしないみごとさがあるのよ▼日本では当然というか未公開。こういうムチャクチャでナンセンスな文化はお呼びじゃなかったのでしょうか。後日「吸血女ダイアン」というタイトルでテレビ放映されたようです。映画は場所にも時代にもノータッチでオープニング。都会だとはわかります、砂漠が近いところをみるとまあロスでしょうね。コーマンがわざわざ経費をかけて遠くへロケするとは思えない。夜が更けた大都会に女がひとり、それも神秘的な美女が物憂げに歩いている。男が襲う。女は待っていたようにナイフで反撃、あっさり男を刺し殺しておもむろに噴水で手を洗う。意味不明にもかかわらずジャラジャラした説明が一言もないのがミステリアスだわ。考える手間を省いただけだと思うけど。とにかく時間を食う映画はコーマン組ではご法度なのよ。美女は単身ナイトクラブに入っていく。そこに居合わせたのが新婚の若い夫婦、カールとスーザン(シェリー・マイルズ)。オーナーは美女をふたりに紹介する。彼女の名はダイアン(セレスデ・ヤーナル)だ。これで本作の主たる登場人物は勢揃いです。簡潔を絵に描いたような進展です▼ダイアンは物静かな声で「わたしの家に遊びにいらっしゃい」と誘います。若い夫婦はヒマらしく数日後さっそく車を走らせる。ガススタで店の男にダイアンの住まいをたずねたら店主は急にしゃべりたがらなくなる。カールはぶつぶついいながら車を走らせたが今度はエンコだ。なんと都合よくダイアンの車が通りかかり、夫婦を同乗させる。到着した家は砂漠の真ん中。執事のような番頭のような若い男性が女主人ダイアンを迎える。ダイアンの家に泊めてもらうことにした若夫婦。その部屋には大きな鏡があり、ダイアンは隣の部屋で一部始終を見ることができる仕組みになっている。その夜ふたりそろって同じ夢をみます。真昼の砂漠に置かれたベッド。アラビア風の幻想的なサウンドが砂漠の風のように奏でられる。この音楽なかなかいいですね。ベッドのそばには大きな鏡が立っている。ベッドインした夫婦が抱き合っていると、鏡の中からダイアンが現れ、近づいてきて無言で夫を引き離し連れていこうとする。カールとスーザンは同じ悪夢にうなされる▼翌日カールは気色悪くなり、早くこの家を出ていこうというがスーザンは留まりたがる。ダイアンはあたりを見物に連れて行くといい(砂漠以外になにもないのに)、やってきたのは墓地だった。ダイアンの家は代々続く家柄で、夫は死んであの家には自分一人だというわけ。墓地には石の墓が並んでいる。ダイアンは「砂漠の日射は半端じゃないから、なるべく肌を露出させないで」と注意していた。せいぜい半袖の夫婦に比べ、ダイアンは長袖にスカーフ、帽子に手袋と完全装備であった…昼寝をしているカール。プールにいるスーザン。どちらのシーンでもダイアンの熱視線が交互に注がれる。夜になるとふたりはやはり同じ夢を見る。場所は砂漠のベッドだ。夢の内容はだんだん具体的になり、たくましい裸身をむきだしにしたカールが、ダイアンのドレスを脱がしていくのだ▼ダイアンの誘惑は現実になる。スーザンが入って行くとダイアンがひとりベッドにいる。彼女がいうには「カールはあなたに忠実じゃないわ。男性はわたしたちを羨んでいるのよ。それに気づいている?」「なにを羨むの」とスーザン。「わたしたちだけが感じられる快感よ。自分ではどうにもできない。男は心の底でそれを憎んでいるわ」そのせいかどうか、カールが再度「帰ろう、この家を早く出よう」と言ってもスーザンは「もっといたい」と言い出した。カールはムカッとして「彼女が欲しいのか」と聞く。ちょっと単刀直入すぎない? でもスーザンは「たぶんね。どんな気持ち?」と落ち着き払って逆にカールを焚きつけるのだ。カールは怒ってダイアンに自分はひとりで出て行くと告げる。ダイアンはしんなりとそばにきて「あなたに抱かれたかったの」と胸も露わに広げる。カールは夢遊病のようにふらふらとダイアンを抱きしめガブっと首を咬まれるのである▼つぎのシーンではダイアンがスーザンにささやいている「あの晩からずっとあなたを思っていたの。あなたを欲していたの。ここにいて、ずっと」「ええ、いいわ」なんてことになるのだから、口説き上手なヴァンパイアなのだ。いつまでもこんなことを書いていても仕方ないが、真昼の砂漠のベッドシーンなんてシュールでカルトチック、じつに新鮮です。カールの死体を発見したスーザンはダイアンの家を脱出、彼女を追うダイアンの影のような追跡シーンも、この世の女とは思えない不気味な雰囲気がよく出ていてじつによかったです。

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