女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ナンセンスは素敵だ」

2015年1月19日

特集 ナンセンスは素敵だ デスウィンズ 官能の深紅 (1990年 サスペンス映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ピーター・ケグレヴィック
出演 エリザベス・ハーレー/パッツイ・ケンジット/ユルゲン・プロホノフ

狂うのに理由は要らない

 この映画のナンセンス度も相当なものです。エリザベス・ハーレーとパッツイ・ケンジットにユルゲン・プロホノフがはさまれている、という図を想像するだけで本作の粗筋が見えます。ユルゲンがこのとき49歳。彼の当たり役だった「Uボート」の艦長は40歳でした。ドイツ人らしいカチンカチンの堅物男にガールズがふたり絡みます。元祖スーパーモデル、エリザベス・ハーレーは25歳ですでにヒュー・グラントといっしょに暮らしていました。のちにラブコメの帝王とよばれるヒューは当時30歳。「モーリス」で頭角を表したイギリスの若手注目株だった。ハーレーとの仲は13年にわたって続き破局したものの、ハーレーの息子の洗礼式に代父として出席するなど友情は続いていた。パッツイ・ケンジットは22歳だった。父親はパッツイが生まれる前獄中にいたギャングだったという話だ。彼女はバンドマンと結婚離婚を繰り返し、2009年4度目の結婚をしたが2010年離別した。ハーレーとは私生活でも親友で、ハーレーの息子の名付け親だ▼ヨットの船長スキッパー(ユルゲン・プロホノフ)は嵐の海で相棒のポールを事故死させてしまい、それ以来酒浸り。ポールはスキッパーの妻と不倫していたから、当然スキッパーが殺したのではと疑われている。鬱々と日を送る彼の前に、ピチピチのイギリス娘が現れる。酒場のダンサーをしているルー(エリザベス・ハーレー)とスー(パッツイ・ケンジット)だ。ふたりからバルバドスに連れていってくれないかと頼まれ、スキッパーは海にでる決心をする。酒場でふたりが歌うシーンは、本職の歌手として日本でも大人気を博したパッツイが、キラキラのスパンコールのステージ衣装でわざと下手くそに歌っている。ハーレーはまだ初々しいといってもいい。このふたりの関係は友達にしたら近すぎる。ルーとスキッパーができちゃうのだけど、スーは物陰からそれを垣間見、ほろほろ泣いて抱き合っているふたりのそばにきて「ルー。お願い、ひとりにしないで」。ルーは「おいで」と言ってスーを抱いてやるのだ▼スーは小悪魔的にスキッパーを挑発する。ルーはその点良識派で甲斐甲斐しくヨットの操舵を手伝い、ルーとスキッパーは日に日に親密度を深めていく。目的地まで4週間の航海だが、なにしろ海の上だからどこに出かけるわけにもいかない。ひがな一日寝転んでいる女ふたりはだんだん退屈になり、特にスキッパーの手伝いをひとつもしないスーは、野放図にわがままを発揮しだす。スキッパーとルーが凪の海で泳いでいるのを横目に、スーは船腹のはしごをはずす。ふたりは船にあがれない。はしごをもどせとスキッパーは叫ぶがスーは知らぬふり。やっとよじ登ったスキッパーがはしごを海になげルーは助かる。しかしこんなことは序の口。スーはスキッパーが必要とするインシュリンを隠してしまうのだ。注射できないスキッパーは昏睡寸前、ルーが探し出し、九死に一生を得る▼しかしである。スキッパーのやることも決死の男の行動とは思えない。冷たい汗をタラタラたらしながら「どこに隠した、薬を出せ、あと1時間待ってやる」なんて悠長な。死にかかっている男が言うことかよ。スーなんか所詮小娘でしょう。ぶん殴るなりしめあげるなり、サメが泳いでいるのだから綱を巻いて海に放り込むなりしたらイチコロじゃない。そうか。そういうリアリティで判断してはいかんのだね、この映画は。つぎのシーンは注射一本で元気になったスキッパーと女ふたりがシャンパングラスをあげ乾杯し、歌い踊る真昼の宴。もうどうでもいいからさっさとバルバドスに着いてくれよ、と思っていたらルーが些細顔にふいっと船室の影に入る。彼女はなにやら細長いものを手に…白状するけどそれが銛(もり)であり、さらに彼女のとらんとする行動のわかった人、いるだろうか。これがスーならわかる。もともと頭がおかしくなりそうな娘だったのだから。一瞬にして狂ったのはルーだったのだ。この転換マアみごとというしかないですね。狂うのに「理由なんか要らんッ」と叫ぶがごとき監督の決意にとびあがる。ついでに筋書きも「要らんッ」といいたいのではないか▼銛を発射、スキッパーの喉にぶすり。もちろん即死。ルーはぺろり血を舐めニヤニヤしながらスーに近づく。「来ないで、来ないで。なぜ殺したの」「あなたが邪魔だって言ったからよ。どうしたの、スー。やっとふたりに戻れたのに」「人殺し」「黙って。静かにして」ルーはスーにかぶさり枕を押し当て窒息死させる。彼女は殺人鬼だったってこと? そのあとである。おだやかな海にヨットが浮いている。テロップはこうだ。「3週間後ヨットはセント・ルシア島に漂着した。船の中にはだれひとりいなかった」。ルーは死体を海に投げ込んで魚のエサにし自分は泳いでずらかったのね。そういうごく自然な推量すら「要らん」といわれそうなプッツンのエンド。ここまでくるとナンセンスってホント素敵だわ。

Pocket
LINEで送る