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シネマ365日

2015年1月27日

ずっとあなたを愛してる (2008年 家族映画)

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監督 フィリップ・クローデル
出演 クリスティン・スコット・トーマス/エルザ・ジルベスタイン

ずっとあなたたちを愛している 

 一定の評価を得た作品だから「いい映画」だということはわかっているという前提で、でもちょっと腑に落ちないことを書きます。ヒロインのジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)は医師。激痛を伴う不治の病にかかった6歳の息子を安楽死させた。裁判でも本当の理由を言わず殺人罪で15年の服役。年の離れた妹のレア(エルザ・ジルベスタイン)は両親から「姉はいないものと思え」と教えられた。ジュリエットのもとに15年間だれも面会にこなかった。出所する直前面会にきたのが妹だ。「若い女性が椅子に座って微笑んでいた。だれかすぐわかった」とジュリエットは言う。ジュリエットは出所まで数日となってから毎夜同じ悪夢に悩んだ。刑務所の外にでると何もない空白。「刑務所にいるほうがよい」と思う。レアは結婚し夫と養子の娘ふたりがいる。なぜ自分で産まなかったのか。「原因はわたしね」と姉はつぶやく。妹の夫は「いつまで滞在させるのだ。家族のことも考えろ」(妹の姉は家族じゃないのか)。姪たちは好奇心から「おばちゃん、いままでどこにいたの」と聞く。妹はそのたび躍起になって話を変える。しまいに姉のほうが「もっと冷静になって」とたしなめる▼姉は福祉事務所の支援で就活にまわる。受刑者であったことはあらかじめ言ってあるが罪状をきかれ「6歳の息子を殺しました」というと追い出された。妹の夫でさえ「子守は姉に頼んだ」という妻に「自分の子供を殺した女だぞ」と色をなす。こんなふうに、ジュリエットの再出発阻害装置ともいえる状況を監督はつぎつぎこしらえています。妹だけは姉の味方だ。でも心を閉じた姉は妹にもつらく当たる。せっかく迎えにきてくれてもろくに口をきかないばかりか「わたしは頼まなかったのに、福祉事務所が勝手にあなたに連絡したのね」余計なことをしたといわんばかりである。それでも妹は「正解よ」と姉に会えたことを喜ぶ▼姉妹はスポーツジムで水泳したりする。姉は「わたしのこと忘れていたでしょ。15年のあいだ」と切り口上でいい、ぷいと泳いでいく。帰宅して妹は一冊のノートを見せる。「毎日書いていたの。姉さんとこの中で会っていたの」15年間一日も姉のことを書き付けていない日はなかった。姪は母親にたずねる。「おばちゃんとママはいつもいっしょだったの?」「そうよ」「おばちゃんはママを守ってくれたの?」「ええ、いつも」。娘はジュリエットを慕うようになる。ピアノを弾きたいがママは「フルートを習えというの」ジュリエットはピアノを教えてやる。「ママに叱られる」「庭にいるから聞こえないわ。それにママはピアノが上手よ」肉親にしかわからない親しさが会話ににじむ。寝る前の本の読み聞かせをジュリエットにしてほしいと娘は父親に頼む。朗読する声を聞きながら眠る子供の頬にジュリエットがキスする。それを妹は見ている。救われたような目で。ある日妻が夫に言う。「わたしは会議であなたも遅くなる。子守は約束があってその日はこられない」夫が答える。「ジュリエットに頼むさ」▼ジュリエットが息子を殺した真相がわからない。裁判でもジュリエットは緘黙した。弁護士もお手上げだった。妹はジュリエットの部屋に落ちていた息子ピエールの書いた詩をみつける。それは姉が勤めていた医学研究所の診断書の裏にかきつけてあった。妹は診断書にあったデータを専門医に見せる。事実を知った妹は姉に詰問する「なぜ本当のことを言わなかったの。知っていれば助けられたわ」姉は「言ってどうなるの、最初からわかっていた、息子は助からない、息もできない激痛に耐えられず泣き叫ぶ子になにがしてあげられる。もう動けなくなったあの子といっしょに歌って笑った。愛しているといって注射を打った。朝までずっと小さな遺体のそばにいた。我が子の死以上の苦しみはないわ。一生逃れられない」▼さてそこで、つけたくないケチをつけるときになったのですけどね。わたし妹の感覚に同感なのよ。それに助からない息子を安楽死させるって、母親にしかできないことでしょ。それにやってしまったジュリエットにしたら、だれかに打ち明けたところで軽減されるような罪の重さじゃないだろうけど、でもそれはいいの。ジュリエットの自責についてはね。でも監督の作劇術といってしまえばそれまでだけど、真相を最後まで隠しすぎるのは不自然だわ。息子は殺されたのなら当然変死として解剖されるでしょ。マレな難病であったことなど、いくら本人が黙っていても捜査の課程でわかるじゃないの。ジュリエットの両親の設定だっておかしいわ。仮にも医師をしている頭脳明晰な娘が孫を殺すなんて、なにかわけがあると直感するのが親でしょうが。それをなんですって。姉はいないものと思えって妹に指示するのかよ、おい。15年間一度も面会に行かないってことは家族の面汚しだって意味? イカレタ親だわ。子供の罪なら自分がかぶってでも子供を守ろうとするのが親だわよ。ジュリエットだって刑務所に入っていればせめてつぐないとして気がやすまる、みたいなこと言っているけど、自分の罪と悩みのことばっかり考えているのね、この人。なによそのしんきくさい顔。15年間自分のことを思い続けてきた献身的な妹や理解ある同僚や、また共感に至ってくれた妹の夫や自分を親愛する姪や、再就職するまで経済的にも精神的にも支え続けてくれた人たちや、なんだかんだ言ったって彼女恵まれていたのよ。ずっとあなたを愛しているって、だれがだれに向かって言っているの。もしジュリエットが息子に対してそう言っているなら、いまはそれに加えてこう言ってあげれば? 「そしてずっとあなたたちを愛している」それがジュリエットの心の再生だと思う。

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