女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2015年1月29日

ブロークダウン・パレス (1999年 社会派映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジョナサン・カプラン
出演 クレア・デインズ/ケイト・ベッキンセール

アリスの選択 

 ジョナサン・カプラン監督独特の厳しい倫理観に(うわ~。ちょっとそこまでやるか)と沈黙してしまったところは「 ダイアナの選択 」のヒロインに似ている。ヒロインのひとりアリス(クレア・デインズ)にしてみれば、異国の女子刑務所(これがいわゆるブロークダウン・パレス=崩壊した宮殿)でふたりとも一生を終えるより、一人でも救われたほうがいい。そのためには自分が残ろう。そう判断したのですが「言うは易し」。友達の刑期まで引き受けて服役を延長され、刑務所で果てるかもしれない選択って、簡単にできるものじゃないですよ。それをあえて主人公にさせるのだからなあ。もう圧倒されるわね。この映画の基本にあるのは「人間の気高さ」です。たとえば、船が沈みかけている、ボートに乗れるのはあと一人だ、自分か友人かというときにアリスは友人を乗せるわけね▼国が変われば文化が変わり、文化が変われば法律が変わる。麻薬の運び屋(それも明らかに偽装された)に懲役33年なんて呆れてしまうけど法は法なのよ。日本じゃ可愛い女の子、それも高校を出たばかりの卒業旅行にはしゃいでいる女子旅のふたりに、大した罪なんかかぶせないだろうという甘い読みは完全に吹っ飛ぶ。本作はタイの女子刑務所に服役しているアメリカ人女性十数人に取材した。映画自体はフィクションだか、旅行者が、それも世間知らずのお気楽ツアーでやってきた若い女性が思いがけない長期刑をいいわたされ、収監されている事実はもっと知られてよい。映画では祖国も親も弁護士さえ無力であると思わせる。アメリカの考え方もやりかたも通じないのだから仕方ない。何を訴えたところで壁に向かってしゃべっているようなものである。ヒロインたちは絶望のなかで精神の活路を見出そうとする。とくにアリスは、自分が自分に誇れる決断をくだしたことによって、刑務所での残りの長い人生を胸を張っていきていけるのだと判断する。彼女がいつ覚えたのかタイ語で自分の友人が無実だと訴えた時、国王らしき最高責任者は母国語を習得した囚人に心を動かされる。たどたどしいが国王にすれば自分の国の言葉をしゃべる囚人に「いいたいことがあるなら英語でもよい」と許可する。ちょっとしたことだがタイが、さらにいうならアジアが、欧米に屈しないという姿勢がよく出ていた▼ハンサムでやさしい男に気を許し、香港に行くことにしたアリスとダーリーン(ケイト・ベッキンセール)は、搭乗間際に逮捕される。彼女らのカバンに大量の麻薬が隠されていた。刑期は33年。大使館もタイは麻薬密輸に厳しいから(しゃあないですな)という感じ。弁護士ハンクは損得勘定ばかりで頼りにならない。親からも国からも見放され、監房ではいじわるな女囚にいびられ、死にたくなったふたり。ホイホイ見知らぬ男の甘言にのって信用するなど、自業自得といえばいえる。ハンクはアメリカを追放されタイで女性弁護士と結婚、夫婦で法律事務所を開いている。彼の妻がアリスとダーリーンと同じ飛行機に8人ものアメリカ女性が乗りあわせ、アリスたちが逮捕される大騒動の間に搭乗していることがわかった。アリスたちは囮だったのだ。裁判で再審の道が開ける。ハンクは救出できると確信する。しかしそこから先に、まだ思いもよらぬ一撃が待っていた▼つぎからつぎ、逃げ道を塞がれていくプロセスは、まったくどうすればこの袋小路から脱出できるのかわかるまい。アリスもダーリーンもお互いに罪をなすりつけるし、捨て鉢になるし。ケンカして口もきかなくなったふたりを洞房の女囚たちは冷たく、あるいは興味ありげにみていたが、ふたりが脱獄を決行したときは看守の目と足をひきとめて時間稼ぎをしてやる。脱獄は失敗におわり刑期が15年加算された。48年である。彼女らが18歳だとして66歳まで塀の中か。しかも麻薬犯罪者に恩赦はないのだ。監督はアリスの選択を絶望ではなく可能性に賭けるものとしてます。まあそうでもしなければあまりにも救いがないですからね。できうればこういう人間の尊厳や気高さをふるいおこさずともすむ情況で生きておりたいですね。やっぱり海外は気をつけよう。

Pocket
LINEで送る