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特集「フリーク/変態の詩人たち」

2015年2月4日

特集 フリーク/変態の詩人たち ビデオドローム (1982年 ホラー映画)

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監督 デヴィッド・クローネンバーグ
出演 ジェームズ・ウッズ

あなたも、よ。 

 これ大コケしてクローネンバーグが破産しかけた映画ね。無理ないわ。主人公マックス(ジェームズ・ウッズ)はラストで自殺する。仕方ないわね。死なせる以外におさめようはなかったと思うわ。本作はデヴィッド・クローネンバーグの作品中とくにカルトとされています。クローネンバーグは枕詞によく「鬼才」とつくのだけど、人が思いつかない奇妙な現象や機能の映像化に血道をあげる妙なやつが鬼才なら、確かにそうでしょうね。本作とよく似た発想は後年の「イグジステンス」にもありますが、「ビデオドローム」で懲りたのか、内容はかなり楽しくわかりやすくしています。でもどこかで書いたかもしれないけど、クローネンバーグっておかしなやつかもしれないけど、あれでとても律儀な性格で、支離滅裂(ト一見思える)映画でも、その映画の種明かしみたいなものを劇中どこかでバラしているのよ。この映画でいえばマックスが訪問するビデオ制作会社のオフィスね。マアあまり急がずにいきますね▼テーマは監督が大好きな、破産しようが刑務所に入ろうが、三度のメシをやめてもこれだけは映画にするにちがいない「バーチャル・リアリティ」の世界。ビデオの映像にはまった男が頭脳をビデオにのっとられ、仮想と現実の区別がつかなくなっていくプロセスを、つぎからつぎ、シチュエーションを変え小道具を変え、人物を変え、彼や彼女を生かしたり死なせたりしながら、魑魅魍魎の世界にひきずりこもうとする変態デヴィット・クローネンバーグ(笑)。セックスと暴力を扱う刺激的な映像を流すケーブルTV局の社長、マックスは「ビデオローム」という海賊版の存在を知る。社のエンジニアが衛星から盗んだ映像には拷問や殺人のシーンが延々と繰り返されていた。筋書きもなにもない、ただひたすらムチでひっぱたく、殴る、蹴る、刃物で傷つける、切り裂くなどの残虐行為が映るだけ▼マックスはマゾなのよ。だからサドにのめりこみ、もっと見たい、もっと見たい、どこが発信源だとさがしまくる。そこまで観客をひきつけたクローネンバーグが、もったいぶったセリフでさらに混乱させにかかる。たとえば彼の女友だちが言う「マックス、ビデオロームは忘れたほうがいいわ。危険だわ。あの中の行為は本物よ。彼らにはあなたにないものがあるの」「それはなんだ」とだれでも聞きますよね。彼女「哲学よ。その哲学が危険なの」要はマックス、あなたのアタマではついていけないと言っているのね。マックスはファイト! しつこく問いただし発信者はオブリビアン教授だとわかる。訪ねて行くとそこは「ブラウン管伝道所」とあり、教授の娘ビアンカが対応し「父は20年間だれともあわない」と言う。このあたりからマックスはおかしくなります。理由? 知りませんよ、デヴィッドの考えることだから。会社にもどったマックスは、指示通りしないと怒り秘書の頬を張り、すぐ「すまなかった、叩いたりして」秘書は「叩く? だれを? マックス大丈夫? はい、至急便。オブリビアン教授からよ」▼帰宅してビデオにかぶりついたマックス。教授の解説は「北米の精神の格闘技がビデオロームで行われている。TVの画面は心の目の網膜だ。すなわち頭脳の一部ともいえる。ゆえにTV画面に現れたものは見ている者の体験となる。つまりTVは現実だ」本作は脚本もデヴィッドです。こういうまことしやかなデタラメを大真面目に書く男です。現実は現実でも脳内現実、バーチャル・リアリティではないか。ホント香具師か、お前は。まだある。「マックス、君は半分ビデオの幻覚世界にいる。とても素敵な新しい世界だ。わたしは脳腫瘍があった。幻覚のせいでできたと信じている。幻覚が溶けて肉体の一部となったのだ。腫瘍を取り除いてみるとそれがビデオロームだった。わたしがビデオローム最初の犠牲者だ」。マックスはビアンカを訪問する。彼女は「父は11ヶ月前に亡くなりました。父はビデオロームを作りつぎはテクノロジーを操る人種の時代だと。でもそれが相棒に悪用され取り戻そうとして殺された、音もなく。父は生身の人生よりTVの真実性を選んだのです」「ぼくになにが起こる?」「父が知っているわ。これを」と差し出したビデオで教授がいう「ビデオロームの大量投与は新たな頭脳の成長をもたらす。それは幻覚を自由にあやつり現実を変えてしまうほどに。現実とはしょせん認識の問題でしかない」わかった、現実とはしょせんその人の「思いよう、取りよう」だというのね▼マックスは幻覚にからめとられる。腹筋が割れる。この割れ目にマックスは拳銃やビデオテープをいれたりだしたりします。お腹がポケットみたいになるのです。ひとつの肉体に別の生物仕様をつくるという、これまた彼の愛するテーマを入魂の特撮と、盟友ハワード・ショアの音楽が雰囲気を盛り立てます。そうだ、教授を死に追いやった「敵」を書かなくては。ビデオロームを独り占めした男バリーとはメガネ屋である。このあと映画はバリーとマックスの会社の技術者がつるんでのっとりを計っていたこと、なんのためかというと「北米は弱くなった。世界は過酷で荒廃した世界だ。われわれは純粋で直接的で強くなければならぬ。生き残るために。君やTV局という不浄な場所にいる連中は視聴者を内側から腐らせている。君を殺して新チャンネルを我々のものにする」長広舌は続くのですがマックスの幻想ですから省きます。彼は廃船に来てオンボロTVに映ったビデオロームに、お腹のなかから取り出した拳銃(というより拳銃と手がつながって肉体の一部となっています)をぶっ放す。すると、ああ、やっぱり…TVからグニャグニャうねる内臓の塊が悶える大蛇のごとく吐き出されるのです。大量の内臓と血を映さんと気がすまんのですな。こんな映画だれが見たいのよ(笑)▼最後にデヴィッドがちょっとだけみせる種明かし。マックスが入っていったライバル男の事務所ですけどね。淀んだ空気。小さなボロデスクに汚い壁。掃除したこともない床と回収屋業者も知らん顔するような古いパソコン。ここが世界制覇を狙うメディアのハイテク先端事務所ですか、デヴィッド? デヴィッド「…」(ニヤニヤと沈黙)。こいつらのやっていることはすべからくインチキだ、真に受けたらマックスみたいになると彼は言っているのです。真実もあります。生身の現実よりビデオの真実性を選ぶ人種がいるという教授のセリフに(どきっ)自分のことだと思い当たる人、あなたも、でしょ。(笑)

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