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特集「男前」

2015年2月11日

特集「男前2」 ケイト・ベッキンセール リーガル・マインド 裏切りの法廷(2013年 法廷映画)

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監督 カレン・モンクリーフ
出演 ケイト・ベッキンセール/ジェームズ・クロムウェル

アブナイ弁護士

 この映画どうもよくわからないわ。ヒロインの弁護士ケイト(ケイト・ベッキンセール)は検事のとき、無実の青年を冤罪で11年間刑務所に入れ、後悔して弁護士に転身し、殺人犯の弁護を引き受けたところ、彼女の空涙に騙され無罪にしてしまった、そういう頼りない弁護士である。大丈夫なのでしょうか。ざっと97分わたしたちはこの不安な弁護士を見守っていくわけね、監督はいったいどんな弁護士像におとしこむのでしょう。それだけで挑戦意欲を感じるわ▼カレン・モンクリーフは女性監督です。だからというわけでもないでしょうが、離婚したケイトがアルコール依存症になり、親権を取り返すために断酒サークルに通い、娘との絆を守ろうとする一連の関係を繊細に映しています。ケイトは過去に法廷で相手側弁護士とトラブルをひきおこし、それにより現在保護観察処分、弁護士の資格剥奪スレスレでしたからもともとアブナイ女性です。だから法曹界復帰を狙うなら点数を稼ぐためにも、分の悪い仕事くらいやれと監察局に助言され、どうにも勝ち目のない訴訟の弁護を引き受けさせられる▼殺人事件で有罪判決を受けた被告人レーシーは、彼女が犯人だという証拠がいやというほど揃っているのに自分は殺していない、無罪だと主張し涙ながらに訴え続け、悲嘆に暮れ、ケイトをも信用せず本当のことを言わなかった。しかしレーシーのちょっとした言葉尻や、くちごもる言い方に疑問を感じたケイトは調書や捜査資料を当たり直す。自分のキャリアと娘を取り戻すため、事件の真相究明に取り組んだところ、警察による偽証だとか、証拠の隠滅・偽造だとかを、つぎつぎケイトは暴いていきましてね、サンプター裁判長(ジェームズ・クロムウェル)も警察とグルになった検察の腐敗に口あんぐり、おまけにレーシーは看守の暴行、警官のレイプを語り、そのいやらしさとすさまじさの叙述に法廷はシーン。ケイトの最終弁論のあとレーシーの無罪を裁判長が言い渡した時、ひとりだけ初老の婦人が「ノー」と叫ぶのだが…▼最初にネタバレしちゃったから気取った書き方しても仕方ないわね。レーシーというのがとんだアバズレで、ケイトはまたもやこの殺人犯を無罪にしちゃったのよ。二度目の大チョンボ。 普通なら再起不能よ。でも彼女はあきらめない。どうやったらレーシーを再逮捕できるかに挑戦。もちろんベッキンセールありきの映画ですから、そこのところはちゃんと辻褄を合わせるのですが、わからないのはこういうところなのよ。レーシーが「わたしは刑事にレイプされた」と法廷で発言し、ケイトは刑事に「あなたはレイプしましたか」と聞く。彼は「していません」これだけで終わるのです。こんなあっさりした証人喚問でなにがわかるの。刑事はそのあと車で追いかけてきてケイトをひきずりだしぶん殴ってひきあげる。これが修羅場なの?▼どだい修羅場なんかどこにもないのよ。場面ごとの構成はうまくて雰囲気もいいのだけど、この映画のいちばん気に入らないところは内容そのものが「こけおどし」なのよ。たいして中身がないのにもったいぶっているだけじゃない。正直な観客は思うでしょうね。弁護士が手品みたいにビデオやらテープやらつぎつぎ偽証の証拠を提示するのだけど、検察がそれらの証拠を処分もせず残しておくなんて、ケイトのために見つけてくださいと言っているようなものじゃないですか。そこに現れるのがサンプター裁判長。彼はUCLAでケイトの恩師だった。彼が裁判を担当することを知ってケイトはサンプターの豊かな学識、高潔な人格に、万軍の味方を得たと思う。じつをいうと映画の粗筋には関係なくジェームズ・クロムウェルが長身痩躯を裁判長の荘重なガウンでまとい、沈思するにピッタリのあの容貌で登場したとき(おや、こんどは正義の役なのね)と思ったわ。それくらいこの人「逆転の人」なのよ。「ベイブ」の牧場主だけは例外だったけど。でもやっぱりやってくれたわ。彼の決め台詞をひとつだけ紹介するわね。「裁判とはウソつき大会さ」この映画ホラーじゃない。うそつき同士で辻褄をあわせるばかりの世界だから、弁護士は最悪のドジ踏んだって生き残っていけるのかよ▼映画の後半はケイトの失地回復です。これが妙にサクサクと進み、あっというまに彼女は娘といっしょに暮らしている。めでたいことなのだが、観客は置き去りである。ケイトは検察を訪ね、レーシーの人身保護条例の請求に不備があったことを教え、レーシーは再び召喚され、事実上裁判はやり直しになる。しかしこの「人身保護云々」のやりとりは映画が始まってまもなく、ケイトがレーシーに始めて接見したときに交わされる会話である。伏線といえば伏線だが、冒頭の数秒のシーンと台詞を映画が終わりに近づいて、ヒョイと蒸し返されてもだれが覚えているだろう。レーシーの偽証が明らかになる。彼女は殺人犯として逮捕。ケイトは良心の呵責から救われ、また健全な社会人として娘の養育権を認められる▼ケイトの後見人みたいな経験豊かなベテラン弁護士をニック・ノルティが扮しています。彼がいう「君は特別なのだ。偉大な人間なのだ、レーシーが殺人犯だったのが問題ではない、君が訴訟を処理する方法が問題なのだ」小理屈をひねくりまわすなよ、じゃ殺人犯を無実にしたのは問題じゃないのか? おまけにケイトは「わたしのどこが偉大なの?」と涙を浮かべ無邪気に聞き返す。知ったことかよ。ベッキンセールは「 アンダーワールド 」に帰りな。そこがあなたの男前の世界。

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