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特集「男前」

2015年2月13日

特集「男前2」 キーラ・ナイトレイ プライドと偏見 (2005年 文芸映画)

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監督 ジョー・ライト
出演 キーラ・ナイトレイ/マシュー・マクファディン/ロザムンド・パイク

毒りんごを食らわなかった女 

 「ジョー・ライト組」で作ったみたいな映画ですね。ヒロイン、エリザベスのキーラ・ナイトレイは後の「 アンナ・カレーニナ 」で、彼女の恋人ダーシーのマシュー・マクファディンは同映画でアンナの兄オブロンスキー公爵を。エリザベスの姉ジェーンを演じたロザムンド・パイクはライト監督と婚約し結婚式直前にキャンセルしたという人。ジェーン・オースティンは創作したエリザベスを「自分の娘」というくらい愛していました。本作は興行収入1億2000万ドルという大ヒット。恋愛映画としては定評のある古典ですが、書かれてから200年後にも古くならない女性像を創っていたオースティンがすごいですね▼オースティンの没後すぐ生まれたメリー・エリザベス・コールリッジに「鏡の奥」という詩があります。大意「ある日女が鏡の前に座り、何の飾りもつけない姿を魔法で浮かび上がらせた、そこには荒々しい女の姿が映し出され、絶望に怒り狂っていた」という節から始まります。怒り狂う囚われ人とは詩人本人のことで、当時詩や小説など、何かを書こうとする女は狂気の沙汰としか見られなかった、自分の才能が閉ざされ進むべき道を塞ぐ社会に、エリザベスの怒りは狂気のような「荒々しい女」の表象を映し出す。それよりまだ50年も前の時代にオースティンは小説を書いたわけです。男性支配の文化と制度が与える「女のつつましさ」という毒リンゴを食らわず、男性作家の物真似もせず、それを乗り越えて書きたいものを書くという難事をオースティンはやりとげた。極めて穏健とみられるこの小説を、とにもかくにも出版し「最愛の娘」エリザベスや、ベネット家の娘たちを生き延びさせるために、当時の男社会の反感を買わないために、オースティンは知恵をしぼったはずです▼小説の女性像の「穏健でない」部分を受け持ったのがエリザベス(キーラ・ナイトレイ)です。自分の考えを変えない女は信じがたい利己主義者とみなされていたときに、いやなことをいやとハッキリ言う彼女にダーシー(マシュー・マクファディン)は呆気にとられる。それでなくともベネット家の女性たちは母親を始めとして「品性がない」と彼は思う。母親が五人の娘を嫁がせることに血道をあげるのは、女に相続権がない当時を思えば仕方ないことです。父親が死ねば息子のいないベネット家は親戚のちびの牧師のものになり、女達は追い出されても文句はいえない、一日も早く資産家の男をみつけて嫁ぐことが女の生き延びる方法だった。エリザベスのように「ダーシーさんは我が家の女を侮蔑している、姉の結婚の邪魔をした、許せない」と怒っていたのではだれにも貰い手はないと嘆く。現代の母親と変わりません。オースティンはことほどさように、恋愛の裏にある現実の利得損失をテキパキと書き出していきます。そのリアリティが、彼女の小説ならびに登場人物が「不易」として愛される一因でしょうね(笑)。エリザベスの「穏健でない部分」の「毒消し」に、この母親やつつましい姉のジェーンを配することによって、オースティンは成功しています▼原作の小説や映画が読者や観客の共感を呼ぶのは、オースティンが愚かな女もきっちり描いていることでしょう。彼女は辛辣でした。ダーシーに「あなたの家族は、あなたと姉上(ジェーン)以外は品性がない」といわせたのもアタリです。しかし教育が充分になされず、学ぶ機会もなく、結婚前の娘といえば男にとって従順なしつけがなされているか、それだけで評価されてきたといってもいいすぎではない。まして本を読んだり文章を書いたりする女など「荒々しい顔」をしたクレージーな女であるとされた、品性だって教養だって磨くものだ、磨く機会も与えられないから、もともと頭の悪い女はさらにこんな愚かな女になってしまうのだと、オースティンの筆は容赦ありません。映像ではなおさらハッキリ映しだされ、今の時代の女自身が彼女らをみてさえ、ほとほとパッとしない「女の自画像」にため息をつくしかないと思います▼エリザベスの女友達のシャーロットがおもしろい。エリザベスが振った従兄弟の牧師と結婚すると決めます。あんな男のどこがいいのか、思いとどまるようにというエリザベスに「わたしは27歳よ。両親の重荷になっているの。快適な住まいと安定した暮らしが手に入るなら結婚するわ」。彼女だって生涯設計にのっとって、勇敢に自分の人生を切り開こうとしているのです。結婚したシャーロットを訪問したエリザベスは、家刀自として家内を仕切っているシャーロットの生き生きした姿に(こういう人生もある)と感動します。それにひきかえ、自分は姉を、自己主張できない頼りない性格だとか、ハッキリものもいえないなさけないやつだとか、姉の長所に気がつかずこきおろしてばかりいたと反省しきり。これも「毒消し」ですね▼イングランドの田舎の明媚な風景が美しい。なかでも、エリザベスが徒歩でダーシー家に向かう広大な野原にエリザベスの影ひとつ。そして風の吹く断崖に立つエリザベスの孤影。絵になる断崖のロケはピース・ディストリクトで行われました。

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