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特集「男前」

2015年2月15日

特集「男前2」 ペネロペ・クルス 美しき虜(1998年 コメディ映画)

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監督 フェルナンド・トルエバ
出演 ペネロペ・クルス/アントニオ・レシネス/ロサ・マリア・サルダ

焦点はペネロペ 

 ペネロペ・クルスが24歳のとき。いま(2014)40歳だけどあんまり変わらないのよね、この人。そういう人っているのよ。年齡とともになにがしかの変化があることは誰しもなのだけど、感性とか感じ方とか物事への取り組み方とか受け止め方とか、一言でいうと時間や経験や人間関係、たとえば恋愛の失敗などで損なわれない、左右されないものがある人。この映画、主演女優がのびのびしていてわりと気にいっているのです。ペネロペが好きな女優かというとそうでもないのだけど、吸引力のある女優だとは思うわ。ただしスペイン映画に出たときに限ってだけど▼彼女、ハリウッドに進出してそこそこ活躍はしているけど、正直いってパッとせんな。ラテン系の美女だというだけのカスの役ばかりだわ。ペネロペのいいところを思い切り「撮ってやったぞ」という監督にめぐりあっていない。たとえばこの映画のフェルナンド・トルエバとか、ペドロ・アルモドバルとかね。トルエバは彼女がデビューした年に「ベルエポック」で起用し同作はアカデミー外国語映画賞を取った。アルモドバルの映画ではペネロペはミューズだった。本作にこういうシーンがあります。ペネロペが劇中の撮影シーン(第二次大戦中ゲッペルスの肝いりで、ドイツ・スペイン合作映画を撮るのが本作の舞台)で、どうも演技に気が入らない、ノリが悪い。エキストラに捕虜のロシア人やユダヤ人ばかりをかきあつめたので、ペネロペが踊るフラメンコに手拍子が合わないのだ。ペネロペは片言で「リズムが狂っている。こうなの、こう」説明するがキョトンとしている。なにしろ陽光あふれるアンダルシアと、湿っぽいベルリンまして雪と氷のロシアとは風土がかけ離れている。ペネロペは囚人たちの手をとり、彼らの胸にあて「ここで感じるの、ここで」と教える▼監督がつぎに撮るペネロペの歌と踊りのシーン。ペネロペに対するこういう撮り方をハリウッドはしない。する気もない。ペネロペという女優の美しさに焦点を絞り切り、まるでプロモーション・ビデオにしてしまったような大胆さ。同じような撮り方がアルモドバルの「 ボルベール<帰郷> 」でもありました。ペネロペが母親の思い出のタンゴを歌うシーンです。歌っても歌わなくてもどっちでもいいと思えるのだけど、アルモドバルが撮りたいのです。それくらい監督の思い入れが映画を動かす。このシーンはじつによくできていて、同作でペネロペはアカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされ、いっきょに国際女優として注目されます。彼女はやはりスペインの光を浴び水と空気を呼吸し、スペインの風に吹かれているときがいちばん精彩を放つ。ロスに居をかまえて喜んでいるなんて、田舎者のすることではないか。スペイン・ハプスブルグ帝国の文化と栄光が泣くぞ、ペネロペ▼トルエバとペネロペが組んで、スペイン映画界のベテランが脇をかためた本作、面白いですよ。なにしろゲッペルスが無類の女好きで、ペネロペに一目惚れしたという想定です。いうことをきかないとベルリンで映画をつくらせてやらん、まあ早く言えば彼の恫喝をめぐるスペイン側のかけひきがこの映画。スペインからきた8人の映画人とは、監督(アントニオ・レシネス)、ヒーロー役のフリアン、美術監督でゲイのカスティーヨ、アルコール依存症の女優ロサ(ロサ・マリア・サルダ)ら。ロサは「 オール・アバウト・マイ・マザー 」でペネロペの母親を演じました。本作ではきつい冗談をいいながら、ペネロペをゲッペルスの毒牙からかわしてやろうとする。監督は妻子がありながらペネロペと関係中。映画を完成させるためには(ゲッペルスと寝てくれ)と喉まで出かかっている。自分を守ろうとしない男にペネロペはいらつく▼終始エゴ男、ダメ男で通してきたこの監督が、最後に逆転の男ぶりを発揮します。ペネロペを脱出させるため、ゲッペルス夫人を相手に大芝居を打つ。彼は夫人に面談し、慎重に言葉を選びながら言う「大臣は離婚して外交官となり、スペインでマカレーナ(ペネロペ)と結婚すると言われました。尋常とは思えません。助けてください」夫人は冷静に「どうすれば?」「マカレーナと乳母をパリへいかせ大臣と引き離します。飛行機のご手配を」「映画は中止になり、あなたのキャリアも終わりよ…わかったわ、あの娘の怖さが」夫人はテキパキと指示をくだし「パリ行は2時間後よ。この書類で問題なく乗れるわ。この借りは必ず返すわ」。中央空港でペネロペを見送りに集まったスペイン人たち。ここでの別離のシーン。監督「パリで友人が仕事をみつけてくれる」。ペネロペ「あなたは?」「明日のことはわからない」どことなくカサブランカふうでしょ。ね。離陸寸前ゲッペルスの配下が取り囲み、映画製作のキャンセルと全員の強制送還をいいわたし、監督だけを残留させる。それぞれの運命が別れ道にきたところで映画はエンド。笑うところはいっぱいあるのに、全然軽くなっていない映画でした。

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