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特集「男前」

2015年2月17日

特集「男前2」 クロエ・グレース・モリッツ キック・アス(2010年 アクション映画)

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監督 マシュー・ヴォーン
出演 アーロン・テイラー・ジョンソン/クロエ・グレース・モレッツ/ニコラス・ケイジ

破壊力ノンストップ 

 この映画を見ていてつくづく思わずにはいられない。女というのはいつからこんなに暴れだしたのだろう。映画史の上の画期的な作品として「エイリアン」や「エイリアン2」からとはいえるだろう。男性の独占市場だったアクション映画で、アカデミー主演女優賞に初めてノミネートされた女優はシガニー・ウィーバーだった。あれからざっと半世紀である。「暴れる女」も変貌した。熟練した銃器の扱い、ハイテクの専門知識、地球のみならず宇宙空間への進出、悪の天才科学者、殺し屋、業種業界を問わず、女は暴れているがこれだけはまだだった、というジャンルに年齡がある。確かに「レオン」の少女マチルダ・ランドーは、映画が公開されたとき演じたナタリー・ポートマンは13歳だった。父親の仇を討つため殺し屋にしてくれとレオンに頼む少女だ。ゾーイ・サルダナの「 コロンビアーナ 」のこれまた殺し屋に志願する少女は小学生だ▼本作だってヒロイン、ミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)は子供じゃないかと言われるかもしれない。でも前述の彼女らの登場と根本的に違うのだ。ミンディは11歳にしてすでに殺し屋である。パパ(ニコラス・ケイジ)は愛する妻を麻薬のシンジケートに殺され、復讐を誓った。妻のお腹にいた赤ん坊は奇跡的に助かり生を得て、パパは娘に殺しの特訓をする。パパ、ニコラス・ケイジの笑顔と声のやさしさは妖気さえ放つ絶品である。この映画はこれまでの傑作に追うところは多々ある。クエンティン・タランティーノの「キル・ビル」や「子連れ狼」女子版が彷彿とする▼本作は女の子に「あんなこと」をさせていいのかと物議をかもした。なにしろ殺しまくるのである。殺しのメカのような残虐性と機能性を噴出させるのだ。厳密にいえば主人公はヒーローオタク・デイブに扮するアーロン・ジョンソンだろうし、現に彼はとてもいい。甘い、それでいてたるくない容貌と美々しい肉体を持ち、「アンナ・カレーニナ」の世紀の恋人・ヴロンスキー伯爵に抜擢され、みごと大役を果たしたのも「かくや」と思われる。しかしクロエが登場したとたん、スクリーンの温度がガラッと変わってしまうのだ。クロエは映画が始まってまもなく、パパが冗談みたいに彼女の胸を撃ち抜くショッキングなシーンにチョコっと現れ、その後の前半ほぼアーロンの「キック・アス」が活躍する。ボコボコにやられてばかりいるダメ男が絶体絶命のとき、マスクをかぶった謎の男女(というより父娘)が現れ、ピストル、機関銃、ナイフを駆使し、ギャングたちを皆殺しにする。バズーカ砲まで出てくる。ためらいもヘチマもあったものではない▼ミンディの台詞はまったく「11歳の女の子にこんなことを言わせていいのか」と飛び上がり、◯◯と伏せ字にしてしまった大人の判断はよくわかる。よくわかるが納得してしまう破壊力がノンストップで映画を疾走させる。ギャングどもに(殺しの)「ショーは終わりよ。クソブタども」また挿入歌では「評判なんて気にしない/古いよ、オッサン/時代は変わった/わたしは女の子/好きなことをやる」。おずおずと名を名乗ろうとするデイブにはニベもなく「知ってるよ、マヌケ」。デイブは「僕は一度でもヒーローだったか。正義に燃えたが何もできず、ただ殴られただけ」なんて自省的な青年に設定されているのですが、ミンディはその真逆だ。自信にあふれ一方的で独善的で、暴力的で残虐です。反省も後悔もきれいさっぱり、帽子でも脱ぐようにどこかに置き去った。これまでのアクション・ヒロインは少なくとも思索的で、復讐なり何なり、地球防衛戦とか人類の危機を救うとか、悪漢をやっつけるとか、それなりの「暴れる理由」があって、使命を帯びた宗教者のような厳粛な顔をしていました。ミラ・ジョコヴィッチなんか「バイオハザード」の長いシリーズを通して、終始ニコリともしていないし、アンジーのアクション映画の傑作「ソルト」のイヴリン・ソルトだってやすやすと笑顔はみせていない。ところがこの女の子、登場した冒頭からニコニコ、天使のようにパパと笑っている。しかもニコラス・ケイジの笑顔はそれだけでアブナイものを予感させる。小さな天使は放送禁止用語をいいまくり立板に水のごとく罵り倒し、悪魔のように強い。女たちが先祖伝来備えてきた、魔性の女の原型みたいなものを保ち、キャッキャと爆発させる無茶苦茶な女の子を、女たちはどこかで愛しているように思います。アクション映画へのオマージュとしては「夕陽のガンマン」のサウンドトラックまで入っていました。

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