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特集「男前」

2015年2月23日

特集「男前2」 ジャネット・マクティア 歌追い人(2000年 社会派映画)

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監督 マギー・グリーンフィールド
出演 ジャネット・マクティア/エイダン・クイン/パット・キャロル/エミー・ロッサム

さわやかな佳品 

 知性的でタフで気難しい女という役がジャネット・マクティアにはよく合いますね。シェイクスピアの舞台も評価が高いけど「 レッド・バレッツ 」の殺し屋のカッコよさときたらじつにクールでした。「ハンナ・アーレント」では主人公ハンナと生涯の友情を結ぶアメリカの作家メアリー・マッカーシーを演じました。舞台で女優が男役をやるのに先鞭をつけたのもこの人です。ジャネットの堂々とした舞台に惚れ込んだグレン・クローズが楽屋を訪ね「アルバート氏の人生」で共演を熱望したことは何度か書きました。マギー・グリーンフィールドは女性監督です。辺境で暮らす女性たちとの交流を通して、閉鎖的で偏見のあったヒロインの感じ方や生き方がだんだん自由に奔放に、強くなっていく。それをアメリカのカントリー・ミュージックのルーツをたどる「歌追い」を通じて描いています。劇中タージ・マハールがほんのちょっとですが出演して雰囲気をもりあげました▼時代は1905年。大学の音楽博士リリー(ジャネット・マクティア)は実績にもかかわらずまたもや昇進を見送られ辞表をたたきつけ、妹が入植者の土地で学校を開いているアパラチアの僻村に行く。そこで孤児のディレイディス(エミー・ロッサム)の歌に衝撃を受ける。それはすでに失われたとされる幻の歌、スコットランドやアイルランドからの移民の古謡だった。リリーは彼らの歌を採譜、出版しようとするが「石炭のつぎは歌を盗むつもりか」と村人たちは疑う。この映画、非常に静かでおだやかに進行しますが、いくつものエピソードがていねいに重なり、ひとつも退屈させません。単調な村の生活にもかかわらず、豊かな文化と自然に恵まれたアパラチアと、そこに登場する人物たちの個性がきちんと浮き上がってきます。リリーはトム(エイダン・クイン)という恋人を得るのですが、同時に多くの土地の女性との交流を通じて自分を再発見します。それら女性陣のなかの最たる存在がトムのおばあちゃん、ヴァイニー(バット・キャロル)です▼11人の子を産んだこの肝っ玉母さんは、猪突猛進のリリーがどこか気に入ったのでしょう、村で暮らすいろんな知恵を授ける。「いいかい。森を歩いていて妙な鳴き声、女の悲鳴みたいな声が聞こえたらヒョウだよ。つかまったら命はないよ。着ているものを一枚ずつ脱いで走りな。ヒョウが服を破いているあいだに必死で逃げるのだよ」そしてリリーが求めている伝統歌の採集に協力して、村の歌い手を紹介します。ディレイディスはすっかりリリーになつき採譜の助手となります。医者のいない村でお産は命がけでした。難産にでくわしたヴァイニーがリリーに手伝えという。仰天するリリーに有無を言わせず「合図したらお腹を押せ」とか産婦に声をかけろとか、お湯をわかせ、きれいな布を用意しろ、戦場のような騒ぎのなかで無事出産。血を浴びて汗だくのリリーを尻目に、婆ちゃんは抱き上げた赤子にいいます「いい子だよ。リリーのような賢い女におなり。独り身のままで」▼もうひとりの女性はほかならぬ妹のエルナです。学校で教える同僚の女性ハリエットと愛しあっている。現場をみたリリーは飛び上がる。「なぜこんなことに!」「姉さん、父親みたいな言い方はやめて」「あなた方は先生よ。よき手本であるべき存在が。吐き気がする」「彼女は立派な人よ」「ハリエットはあなたより年上だし、人生経験も豊かなはず。だから彼女のせいよ」妹ヒイキ丸出しの発言に笑いますが、妹は言い返す「愛しあうのはだれのせいでもないわ」トムまで「妹さんとハリエットはつまり、好き同士だな」と笑っている。大自然のふところでは人間おおらかになるのである。リリーは頭をかかえる。エルナはしかし女同士の関係が人の知るところとなり、ハリエットが姿を消したにもかかわらず村に残る決心をします。同性愛嫌悪者はどこにでもいますが、ここでもヴァイニー婆ちゃんが味方になります。「ばかなことをいうものじゃない。エルナが来て学校ができてからいいことばかりじゃないか」村人のほとんどは字が読めなかったのです▼三人目は孤児のディレイディスです。リリーについて歌を採譜しながら自分の母が、その母が、そのまた母が伝えてきた歌をリリーが認めたことで、歌が表現する祖先たちの生き方に誇りを見出す。劇中いくつもの歌がギターやバンジョーで、ディレイディスやトムやヴァイニー婆ちゃんや村人たちによって歌われます。どのバラッドもみな情熱的でメロディが優美で歌詞がいい。「はじめてこの国に来たのは1849年のこと/きれいな女を大勢みたけどおれの愛する女はいなかった/あちこち回ったけどいつもひとりぼっち/寄る辺ない異邦人/故郷ははるか彼方/さらば、なつかしいおふくろ、なつかしい親父/おれはひとりぼっちでさまよう、このだだっ広い大陸を/ユリのような彼女の腕のなかで/ひとばん身を横たえたい」リリーは言う「あなたがたは音楽で人の心をつかめる」。リリーは地上げ屋が犯罪に近い値段で土地を買収していると村人に教え、大学からの誘致を断りトムと村を出る決心をします。蓄音機が「もうすぐ10ドルで市場に出るようになる、そうすればいい歌を聴きたい人はいくらでも出てくる」とリリーは読み、伝統の歌を今でいうCDにしようと計画する。古い体質の大学に未練はなく女性起業家となるのね。リリー・トム・ディレイディス。社長社員あわせて三人ね(笑)。俳優たちはみな水を得た魚のように演じています。マギー監督のさわやかな女子隊応援歌です。

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