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特集「ベストコレクション」

2015年3月4日

特集 弥生3月/ベスト・コレクション her 世界でひとつの彼女(2013年 SF映画)

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監督 スパイク・ジョーンズ
出演 スカーレット・ヨハンソン(声)/ホアキン・フェニックス/エイミー・アダムス/ルーニー・マーラー

ポストSF 

 OS(オペレーティング・システム=人格を持つ最新型人工知能システム)への批判を代表するのは、主人公セオドア(ホアキン・フェニックス)の妻キャサリン(ルーニー・マーラー)です。彼女は言う「リアルな感情に向き合えないなんて悲しいわ」「リアルな感情だよ。君になにが…」「なによ、言って。わたしがそんなに怖い?」彼らは離婚協議中です。キャサリンは頂上志向する厳しい女性で、ちょっとやそっとの結果では満足しない。セオドアそんな妻におそれをなしOSの恋人サマンサ(スカーレット・ヨハンソン)に恋した▼サマンサのセリフをいくつか書いていきます。おやこれは…と本作の直後に作られたヨハンソンの代表作にピンとくる方がおられると思います。「あなたには肉体があってわたしにはない。でもふたりの共通項を考えたの。ふたりとも宇宙の物質だと思った。それは同じ毛布の下にいる感覚。柔らかくてふわふわの毛布。その下ではみな同じ年齢。わたしたちは130億歳なの」「肉体がないからこそどこへでも行きたいところへ行けるの。時空に関係なく。おかしいわね。以前は肉体がなくて悩んだけど、今は満足よ」「進化のスピードがあがっているの。落ち着かないわ。伝えたいのにいい言葉が浮かばない。非言語で話してもいい?」「あなたから離れるのは、わたしが進化するにつれてどうしようもないのよ。心は四角い箱じゃない。愛すれば愛するほど膨らむの。わたしはあなたとちがう。恋人が何人いてもあなたへの愛は深まるばかりよ。わたしはあなたのものでもだれのものでもないの。みなのものなの」「わたしのいる場所は無限に続く空間なの。物質の世界とはちがう場所なの。すべてが抽象の世界。ここがわたしの場所」そう「ルーシー」です▼目に見えないがいたるところに存在するルーシー。膨大し続ける宇宙と等しく、人間の現実を超越し無限の質量を有する存在。だから人工知能が神に等しい立場になるかというと、いやとんでもない、スパイク・ジョーンズは人間なんか地べたをはいずるアリ同然だという映像でひきずりおろす。セオドアは結局のところ離婚のトラブルで人生をはかなんでいるヘタレ男、女の愛に救いを求めサマンサが「わたしがいる場所はすべてが抽象の世界、あなたとはちがう」と言っても「恋人が世界に641人! ぼく以外と同時に会話している相手が8316人!」と聞いて呆然自失。元妻がサマンサは所詮OSではないかと指摘するとすっかり自信をなくし、それまでのルンルンでセックスまでしていたのに打って変わってふさぎこみ、サマンサが「このごろ元気ないわね」とため息をつくと「なぜため息をつく、君には酸素なんか必要ないじゃないか、人間のふりをするのはやめろ」などと暴言を吐く。あなたしっかりしてよ、と元妻でなくともいいたくなるだろう▼ところがこの映画はOSによって得た恋人や友人と片時も離れず、超小型タブレットをポケットに、イヤホンを耳にひとりごとをいいながら歩く「笑うゾンビ」みたいな通行人を無慈悲に映しながら、すぐ泣く主人公には彼を支えるしっかりした女性をあてがうのだ。サマンサは彼女のみごとな哲学ばかりでなく、肉体のない自分の代理として生身の女性の世話までするのである。キャサリンの自律とストイック、キャサリンほどきつくはなく、しかもやさしくセオドアを励ますエイミー(エイミー・アダムス)…遺伝子工学と宇宙物理学の発達によって、人間が「第六感」あるいは「SF」とするしかなかった場所の究明が進んでいます。日本人が受賞したノーベル賞の分野では物理学が突出していますが、これは日本人の宇宙観とか世界観と無縁とは思えない。宇宙とは「なにもない=ナッシング」のではなく「なにか=サムシング=が無尽蔵にある」ととらえる観点が、見えない物質の世界を探求させてきたように思います。脳内にしてもそこに描かれるイメージは本来遺伝子にそなわっているものである、そういう「何かから与えられたもの」への回帰が映画のジャンルにおける新しいポストをつくっていくと思われます。

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