女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ベストコレクション」

2015年3月7日

特集 弥生3月/ベスト・コレクション トランセンデンス(2014年 SF映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ウォーリー・フィスター
出演 ジョニー・デップ/レベッカ・ホール/キリアン・マーフィー/モーガン・フリーマン

魂はつくれるのか 

 人工知能(AI)は魂をつくれるか、この最大のテーマにどこまで迫るのかが楽しみでした。でもスルッと横道にそれてしまって、結局は主人公の妻に対する愛の実現に落ち着いてしまった。肩透かしだったけど、楽しみにするほうが間違っていたの。だれも解明していない問題なのだもの、こういうことにしておきますという結論でいいのだな。そう納得してしまえばけっこう見応えあります。主人公の天才科学者ウィル(ジョニー・デップ)が途中から退場。彼は肉体が死んでコンピュータの中だけに存在することになるのです。反AI過激派テロに襲撃されたウィルが、放射能毒によって数週間しか生きられないと妻エヴリンは知る。ふたりは世界初の人口知能PINN(ピン)を開発していた。目標はコンピュータが人間の能力を超える特異点だった。その技術的特異点を「超越」(トランセンデンス)と呼び、人間以上の頭脳と能力をもつ人工知能が生まれるプロセスを描いたのが本作です▼エヴリンは夫の意識をPINNにアップロードする。人工知能としてよみがえったウィルは、衛星にまでアクセスし、世界中のあらゆる機関へとつながる力を持つ。彼は電力を多量に得るために金融操作し妻が持つ会社を大きくし、砂漠の田舎町に巨大な基地をつくる。ウィルは先進的な研究をさらに進め、政府の予算などチマチマした心配は無用、どしどし資本を投入し先端のナノテクノロジーを開発する。ナノ的の効果効能とは。ハイテク機器を用いて瞬時に怪我を治す。作業員を強靭な肉体に改造し300キロの荷物も持ち上げる。目が見えない人もみえるようになる。テロ組織に破壊された太陽電池もアッという間に元通り。妻が「でもあなたはしょせんコンピュータで肉体がないわ」と嘆くのをきくと、ついには自分の肉体さえ作り上げちゃう。科学だろうと人工知能だろうと屁のカッパ、愛はすべてに勝つ!▼ところがウィルの超能力にうろたえた友人や上司はウィルが軍隊をもって世界制覇すると勘違い、基地を攻撃します。ウィルのキャラはお金に無頓着、権力に無関心、研究一途の天才だったはずなのに人が変わった? そら超人になったから無理ないわね、だって世界中の情報を入手解読して未来が先読みできるのだもの。だいいちそういう研究をやれといったのは国の方針でしょう。成功したからってオタオタするほうこそ間違いだとだれもいわないのね。変な連中。でも映画のなかじゃ、これ以上話を進めるわけにもいかんわな。現実の人工知能の研究ってどこまで進化しているのだろう。カリフォルニア大学バークレー校のジョン・サール教授が「弱いAIと強いAI」という用語を作っていました。彼は哲学の教授です。簡単にいうと「強いAIによれば、コンピュータは単なる道具ではなく、正しくプログラムされたコンピュータには精神が宿るとされる」人工知能という言葉の「人工」と「知能」の意味からいえば「強いAI」は可能かもしれない。しかし、でも魂とはなんだろう▼「仮想インタビュー/物質が語る自画像 クォークからブラックホールまで」という、初心者向き物理ガイドブックを読んだことがあります。著者は理論物理学者のリチャード・ハモンド。一般相対性理論や量子力学を中心に、物理学を一般読者にわかりやすく紹介することにも力を注ぎました。同書のなかに「真空」という一章があります。インタビュアが「真空さん」にインタビューするのです。すべて架空インタビューによる質疑応答でなりたっているのです。質問「あなたは何なのですか。真空とは何ですか」真空「困ったな。ちょっと想像してみてくれ。ふつうの粒子、つまり原子も電子も光子も、なにもない空間を。そのあとに残ったのがこのぼくさ。いいかい、ぼくはゼロではない。粒子や原子なんかを全部取り去ったあとの空間に残った、非常に豊かで複雑な構造が、ぼく(真空)なのさ」質問「でも」真空「沸騰しているお湯をみたことがあるか。表面はぶくぶく泡立ち、湯気がたち、お湯がはねとび、小さな水滴がはねあがり落ちてくる。それとそっくりの状態がぼくなのだ」質問「今までの真空のイメージと全然違いますが。望遠鏡で大気圏外をみるとまっくらでなにも見えません。文字通りからっぽに見えるのですが」真空「大きな規模でみれば君の言うとおりだ。ところがミクロ・レベルでみるとかなり大きな現象として観察される」なにがいいたいか。魂もまた肉体にそなわったものである以上、現在のレベルで観測できない極小の単位に分解されるのではないか、それは一見、真空のようにカラッポで無にみえるかもしれないが、じつは美しいまでに洗練された科学の粋を秘めているのではないか、そんなことを思ったのです▼映画はジョニデの「いい人」で終始一貫しました。彼は劇中「魂は体のどこに?」と質問を発します。脳に決まっているだろ。大脳こそ精神の玉座ではないか。魂だって精神の友だちだろ。それが指先にあるのか。髪の毛の先にあるのかよ。こんなまやかしのセリフを発するなら映画の内容でもっと「魂の在り処」とか「魂の作り方レシピ」とかに肉薄してほしかったわ。

Pocket
LINEで送る