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特集「ベストコレクション」

2015年3月11日

特集 弥生3月/ベスト・コレクション ラストベガス(2014年 コメディ映画)

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監督 ジョン・タートルトーブ
出演 マイケル・ダグラス/ロバート・デ・ニーロ/モーガン・フリーマン/ケヴィン・クライン/メアリー・スティーンバーシェン

60年

 4人の主人公は70歳前後ですね。唯一独身のビリー(マイケル・ダグラス)、妻に死に別れ生きる気力をなくしたバディ(ロバート・デ・ニーロ)、脳梗塞で倒れ、回復したものの次の発作で死ぬと言われているアーチー(モーガン・フリーマン)、フロリダに住むサム(ケヴィン・クライン)。彼らは子供時代からの親友4人組だった。ビリーがついに結婚する、それも父娘ほど年の離れた若い女性と。ラスベガスのバチュラーパーティで久しぶりの再会を果たそうと4人は集まることにしたが、問題はバディ。妻ソフィア(彼女も4人の幼なじみだった)の葬儀にビリーが参列しなかったことを根にもっているのだった▼女同士が言いたい放題言いまくり、好き勝手にやり放題「セックス・アンド・ザ・シティ」の男子高齢者版でしょうか。70歳のご老体ばかりがなんでこんなに幸運と体力に恵まれ、女にもてるのか、いくらなんでもできすぎでしょう、ばかばかしい、とは思えるのですが、監督は縫い目すらみせないので不自然さが目立ちません。そもそもソフィの葬儀に出席しなかったのは、しなかったのではなくビリーもまたソフィを愛しており、告別に耐えられなかったからだ。そう、女を中にはさんだ確執が、ふたりの間には60年にわたって潜んでいたのだ。ところがベガスでも歴史は繰り返す、ビリーとバディは同じ女性ダイアナ(メアリー・スティーンバージェン)を好きになる。ちょっと待て、ビリーは婚約者がいるのではないのか…そうなのだが、バディはこういう「友人の葬儀の席でプロポーズするなんて、バレバレだろう。お前ひとりで暮らす老後のさびしさに耐えられず、発作的にプロポーズしたのだろう。だいいちそれだけ年が離れていて、彼女を幸福にできる自信があるか。自信だけあっても現実は役に立たんことがある。よく考えろ」ご指摘の通りだったからビリーは「大きなお世話」だとも怒れない。バディというのが口うるさく文句タレで、すぐひねくれるし、単独行動をとる。すっかり嫌われキャラになった意地悪じいさんを、デ・ニーロが演じます▼ビリーとバディの半生に及ぶ溝を、アーチーもサムもいやというほど知っているので、ふたりが角付きあわせても(またか)という感じで取り合わない。アーチーは年金の1年分か、貯金の半分かを賭けて10万ドルの大儲け。部屋はスウィート、ワインは1本1800ドルのボトルを注文し、ボーイに金をつかませプールサイドの水着コンテストの審査員におさまる。ビリーは内心くよくよ。若い婚約者や彼女の友達と話はかみ合わず、不安は増大する。そこで彼は一大決心、ダイアナと差し向かい「バディは君が好きだ、いいやつだ、結婚を考えてやってくれ」。ダイアナもバディに好意は持っていたが、いい年をした大人同士がホイホイ返事できる問題でもあるまい。それに、ビリーは30年前ソフィに言ったのと同じことをダイアナに言っているのだ。それがわかったバディはショックのあまり、夜明けのベガスをひとり歩く。ホテルに戻ってビリーに言う。「妻はちゃんとおれを愛していた。だからもう一度きく。お前は婚約者を愛しているか」▼ビリーは婚約解消し、バディはダイアナと結婚を決めた。4人は空港でそれぞれの家に帰る飛行機の搭乗口に別れる。やっぱりひとりになったビリーは「アーチーは脳梗塞、サムはフロリダへ。人生も終盤だ。おれは孤独な老人さ」。サムが言う「おれたちがついている」。ビリーは「そうだな。お前たちはおれの宝だ」。ここでモーガン・フリーマンがあの低い声で言うのです。「60年だ」。ビリーもサムも、バディもうなずく。「そうだ」。主役4人のカッコよさをバランスよくみせるために、かなりいい加減なところもある映画ですが、いいたかったことは最後のこのセリフ「60年」なんです。考えてもみよう。学校を出て就職して、結婚して子供ができて、孫もいて、伴侶に死に別れて、あるいはずっと独身で、病気もして先は短くなり、それでも続いている友情ってそんじょそこらにあるものじゃない。日本でいえば小学校1年かそのへんから、後期高齢者になるまでのほぼ全生涯におよぶ「ともだち」である。ある意味親とも妻とも夫とも、息子とも娘とも、兄弟とも異なる絆がそこにはあったからだ。「60年だ」そう言ったときのモーガン・フリーマンの声の、顔の表情が、空気がしびれます。

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