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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年3月16日

特集 LGBT-映画にみるゲイ116
アデル、ブルーは熱い色(下)【ゲイ映画】

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監督 アブデラティフ・ケシシュ
出演 レア・セドゥ/アデル・エグザルコプロス

「私を愛してない? ほんとうに?」 

 アデルは幼稚園の補助教員となりエマと暮らしている。エマは絵の製作に励み展覧会への出展を準備中。友人や画廊関係者を招きパーティを開く。朝からアデルが台所に詰め切りで料理の支度をする。エマが客を連れてきてパーティが始まった。エマはアデルのために乾杯する「わたしの美の女神にして創造の源泉であるアデルに」掲げられたグラスを、アデルは恥ずかしそうに受け、すぐ台所を出たり入ったり。客たちは「疲れたでしょう、アデル。ひとりでこれだけ用意したのだもの。いいからおすわりよ」とねぎらうがじっとしていない。大盛りのパスタの皿を運び込む。料理がうまいものだから話がはずむ。俳優志望だという青年がアデルに好感を持つが、エマと暮らしていることを知っている。「前からずっと女が好きか」と聞く。「恋人はエマが初めて? 男とは?」「少し」とアデルは言葉少なに答えているが、じつはエマが「昔の友達」だと紹介してくれた女性客のリーズが気になって仕方ない。彼女は臨月の大きなお腹をして、エマは無遠慮になで「あなたもどうぞ」とリーズは言ってくれたものの、アデルはお義理にちょっと触り、とまどいを笑いに隠してそばを離れる。パーティの間ほとんどエマはリーズと並んで座っていた▼パーティは大成功だった。山のような洗い物を片付け、ほっとしたアデルがベッドに入った。エマが言う。「ジョアキムに好印象だった」「だれ。それ」「大画廊のオーナーよ。インテリで天才、途方もない博学」「インテリばかりで居心地悪かった」「あなたも好きなことをすれば?」「働いているわ」「なにか書けば? 上手なのに」「人に見せようと思わない」「せっかくの才能がもったいないわ」「子供にきかせるような話を作ることが?」「あなたに好きな道を進んでほしいのよ。明るさに満たされて料理や家事をするのもいいけど」エマの調子にはでも熱がない。アデルは「わたしはこうしているだけで幸せよ。これがわたしの場所なの」「ならいいけど」(どうでもいいような感じである)「責めないで」「責めてない」(ト気のない語気)「リーズは昔の恋人?」「違う。画家よ」「キスして。そうじゃなく本当の」抱いてくれと頼むのだがエマは「できない」「…早いわ」「来たものは仕方ない」アデルはそれ以上ねだらず体を丸めエマにひっつく。ふたりの愛の、おだやかな暮らしはこのあたりから変質してきています。展覧会の準備がトラブル続きでエマは毎日不機嫌だ。すでに実社会で揉まれているアデルは「イザコザなんて普通よ。わたしも同僚とよくもめる」となぐさめるが、エマはどこかにアーティストでない者にこの悩みはわからない、といいたげな自負と特権者意識がある▼エマがアデルを一方的に棄てるという形でふたりは別れます。アデルが幼稚園の男の教師と寝たことをエマは許さなかったのですが、もとはといえばエマの撒いた種である。展覧会の準備に忙しいとエマはリーズの部屋に入り浸りで帰ったり帰らなかったり、アデルはさびしくて仕方ない。隣のクラスの担任から何度もデートに誘われていたがエマのことを考えて断っていたのに。その夜もエマは遅くなるという。さびしくなったアデルは同僚たちの飲み会に行くことにした。そんなことが何回か続いた夜。送ってもらって帰るとエマが待ちかまえていて「あの男はだれ」と詰問する。アデルの説明に耳もかさず「いつから寝ているの」「酔ってキスしただけ」「何回寝たの?」エマの追及、というより尋問に耐えかね「二、三回寝た。さびしかったの」アデルはもうぼろぼろ涙をこぼしています。エマは容赦ない。「女と暮らしているのが恥なの?」「職場に知られたくない。無責任なことを言われる。あなたを傷つける気はなかった」「恋しているの?」「彼はなんでもない。なりゆきなの。ごめんなさい」「手遅れよ、この売春婦、アバズレ、許さない、出て行って」レア・セドゥの鬼のような形相です。かわいそうにアデルはしゃくりあげながら夜の町に出て行く▼思うにエマは確信犯で、別れるチャンスを狙っていたみたいね。アデルは別離のつらさを耐え、小学校の正教員となり勤務を続ける。エマに逢いたくて、逢いたくてたまらない。子供たちを連れて遠足で海に行き、ひとりで波に身を浮かべ空をみる。そんなシーンがなぜかダイレクトにエマに結びつく。アデルが連絡してふたりが再会する。エマはリーズといっしょに暮らし、リーズは子供を出産していてその子は3歳。アデルがエマの好きな白ワインを注文しておいたのに「飲まない。コーヒーにする」完全拒否モード。アデル「新作をみたわ」エマ「書き込みがたくさんあったわ、レスビアンから」「絵を買うわ。それが大事なの。あなたが望むなら体で払ってもいい」アデルが痛々しくなる。エマはパーティのころからリーズとよりを戻しており画家同士志も同じくして、幼稚園の教師は平凡にしかみえなかったのだろう。アデルの浮気ももとはいえばエマがなおざりにしたからでしょう。エマにしたらアデルの相手が男だったから、自分が排除されたという拒否感が強かったのかもしれないけど。アデルがわけてもさびしがり屋ですぐ泣く女の子だったのはわかっていたのに。アデルは黙りがちなエマに話しかける。「よく一人で家に帰るの。ひとりぼっちなの」「恋人はいないの? 女ともだちは?」「その場限りならあるけど、結局のところ自分が燃え上がらないの。幸せ?」「そうね」「よかった。いい人?」「いい人だよ。リーズと娘のオード。それがわたしの家族」アデル、テーブルひっくり返して帰っておいでと言ってやりたくなる(笑)▼でもアデルは肝心なことを聞きたいのだ。「セックスは。満足している?」アデルはエマにうかんだ表情をみて「全然だめ?」「ダメじゃないけど」エマは歯切れが悪い。アデルは食い下がる「退屈?」「わからない。あなたとはちがうわ」アデルは続ける「さびしいの。触れ合えないことが。会えないのが。息を吸えないのが。ほしいの、いつも。あなただけが。すべてが恋しい。触れさせて」エマの指を銜える。アデルの頬を滂沱と流れる涙。「わたしが恋しくない? ほしくない? さわって」エマが引く。「やめて。できない」ふうん。あっさりしたものだな。「ごめんね、我を忘れて。もう会えない?」「そうよ」「わたしを愛していない?」エマは首を横にふる。「本当に?」もうそれくらいにしたら、と言いたくなるほどアデルの断ち切れない思いが熱い。「そうよ。今は別の人がいる。わかるよね。でも想い続ける。死ぬまで」このきれいごとのセリフ、しらけるな。死ぬまで想うなんて先付小切手ではなく、今なんとかしてやるのが愛情だろう。そうか、愛はもうなかったからこんなおためごかしがいるのか。アデルはエマに「行ってもいいよ」と促しエマは「じゃ」と店を出て行く。アデルはひとりでワインを飲み干す。ここでエンドでもおかしくない。でも監督はやめないのだ。つぎのシーンでアデルが足の爪に真っ赤なペディキュアをし、鮮やかなブルーの服を選ぶ。初めてすれちがったときのエマの髪の色だ。画廊へ行く。エマとリーズの展覧会をしている。盛況である。アデルは自分をモデルに描いたエマの絵を見る。いい絵である。俳優志望だった青年は不動産屋になっていた。彼はアデルが今でも好きだ。「エマと会ってつらくないか」と聞き「わたしたちの中はすっきりしているの」「やあ、ようやく笑ったね」とやさしく言う。エマとリーズは画廊の中でもくっついて抱き合っていたがアデルはきちんと招待の礼を述べ辞す。外に出て煙草に火をつけ、ゆっくりふかしながら歩いていく。ここでエンドである。おかしいだろ。「もう会えない?」と聞いたアデルに「そうよ」と答えたにもかかわらずエマは招待状を出しているのよ。エマは自分がすてた手前、弱みはみせられないけどアデルの真っ正直な追及に口をもごもごさせていたし。監督は会心の作だったはずだし、続編にその気充分だったわ。主演女優ふたりが難役に再度挑むかどうかは知りませんが。高校生の幼さ丸出しだったアデルが、社会人となりエマとの別れを経て孤独に耐え、現実の重さをかみしめながら、それでも仕事では責任を果たし、しっかりした大人の顔になっていく成長がよかったわ。アデルの演技、力強かったですね。さすがのレアちゃんも押されていたわね。

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