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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年3月17日

特集 LGBT-映画にみるゲイ117
ダラス・バイヤーズクラブ(2013年 ゲイ映画)

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監督 ジャン=マルク・ヴァレ
出演 マシュー・マコノヒー/ジャレッド・レト/ジェニファー・ガーナー

使い果たした命 

 事実に基づく物語。エイズで余命30日と宣告された男ロン(マシュー・マコノヒー)が、生きるためになんでもすると決めた。エイズの猛勉強を始めた。ありとあらゆる治療薬を求めて世界中を飛びまわり、使えそうな薬を持ち帰り売りさばく。日本の林原生物科学研究所にも来た。神父や学者、パイロットなどに変装して薬を密輸する。効果があるとされる薬を求めたのはエイズ患者、当時ほとんどがゲイだった。彼は7年余生きた。舞台となったのは1985年のテキサスだ。ロンに協力するゲイのレイヨンがジャレッド・レト、ロンを見る女医のイヴがジェニファー・ガーナーだ。マコノヒーもいいがジャレッド・レトがいい。同性愛を嫌悪しゲイの男たちを「オカマ野郎」と侮蔑し、レイヨンのこともバカにして最初相手にしなかったロンが、エイズに効き目があると期待できる薬に巡り会うが、それを売りさばくてだてがない。そこで病院でみかけたエイズのレイヨンに声をかけ、ひとり400ドルの会費制にし、米国で未承認のエイズ治療薬を会員に無料で配るシステム「ダラス・バイヤーズクラブ」を立ち上げる。レイヨンは病気の仲間たちに薬の存在を知らせる。バイヤーズクラブの事務所には行列ができた▼ロンは電気技師だがろくに仕事をせず、ロデオ・カーボーイで金を稼ぎ、博打と酒と女のその日暮らしだ。ロンはときどき咳き込むし体重が減ってきた。ある日貧血をおこして倒れ、かつぎこまれた病院でエイズの宣告を受ける。AIDS(後天性免疫不全症候群)というと名付けられたのが1982年だ。HIVウイルスの発見が1984年である。ロンがHIV陽性と診断された1985年とは、エイズに関して治療法はもちろん、まだまだ情報不足であり、ゲイのかかる病気だ、くらいの認識しかなかった。ロンは治療法のない不治の病の宣告に一時絶望するが「だれが30日と決めた、ふざけるな、バカヤロー、オレは生きてやる」と決心する。図書館で本を読みあさり、独学で当時使用を認められていない試験薬AZTを知る。病院で自分を診察してくれたイヴをたずね、AZTの処方を頼むが未承認の薬を医師が処方できるはずもない。ロンは病院の職員を買収、AZTを入手する。しかし毒性と副作用のきつい薬であることがわかり、メキシコで開発されたペプチドTを求めてメキシコへ。アメリカで医師免許を奪われた医師を説得し入手に成功、神父に変装して大量のペプチドTを持ち帰る。ロンはレイヨンを引き入れ販路を拡大する▼同時期にアメリカのFDA(食品医薬品局)は、製薬会社と歩調をあわせ、AZT販売と投薬を推奨する。AZTの毒性と副作用を知っているロンは、説明会の会場に点滴しながら姿を現し、その薬は人殺しだ、だまされるなと叫ぶ。ロンは飛び回り未承認の薬を密輸しては患者に分け与える。政府からの圧力がかかり、ロンとレイヨンの事務所は強制捜査と今後の活動を制限される。個人が生きる権利をはばむ法律なんか、法律がまちがっているとロンは国を相手に訴訟を起こす。訴訟は却下されたが、事務所にもどってきたロンをレイヨンやゲイの会員らは拍手で称える。ロンがてれくさそうに笑う▼映画がこのあたりになると、胸が熱くなるのを感じるだろう。ロンは最初金が目当てだった、しかし生きる権利がだれしもにあり、それがおびやかされるなら生きる可能性を追うことを、国だろうと法律だろうと、だれしも阻むことはできないことを訴える。忌み嫌っていたゲイの存在を、ロンはレイヨンを通じて理解し直す。レイヨンはあれほど自分をバカにしていたロンが、なんら抵抗なくゲイ仲間と握手し、わけへだてなく接するのを見る。ロンはレイヨンにドラッグをやめろ、やめないといくら薬を使っても効果がないと口をすっぱくして忠告する。レイヨンが命を落としたとき、ロンはどれだけ自分がレイヨンを愛し信頼していたかを思い知る。イヴはロンの味方をするため、辞職勧告する病院に「だったら解雇すればどうですか」と開き直り、ペプチドT承認の運動に参加する。ロンの訴訟は却下されたが、ねばり強く訴え続ける運動と、治療薬の試験結果もふまえ、政府はAZTを限定付き使用とし、ペプチドTを承認した。エイズ発症を告知されてからロンは7年半生きた▼ヒューマンという旗印はどこにもないのですが、いい加減な男を絵に描いたような、差別意識の固まりだったエゴイストな男が、いつのまにか人のために、自分が助かりたいだけでなく人も助かりたいのは当たり前だと思うようになる。ロンには感傷のかけらもなければ自己憐憫も、被害者意識もありません。一日一日を必死で生き延びるだけ、エイズであることを彼は忘れているのではないかと思うほどの没我です。でもときどき我に返り疲れを覚える。彼はイヴにいいます。「ときどき思うのだ。こんなふうに生き延びようとする以外の人生もあったのではないかと」確かに。あっても気づかない人生がほとんどだけど。

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