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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年3月18日

特集 LGBT-映画にみるゲイ118
チョコレートドーナツ(2012年 ゲイ映画)

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監督 トラヴィス・ファイン
出演 アラン・カミング/ギャレット・ディラハント

法も味方になれなかった 

 軽いゲイ映画がふえてきている最近、久しぶりに見応えがあったわ。ゲイに対する理解が進んだということは、長い差別と抑圧と迫害がなくなったということではない。同時に社会の受け入れが進んだことによって、ゲイがマイノリティであり、アウトサイダーだという位置に、とんがった意識がなくなってきつつある。クリエイトする感性とは独自であることにこだわる感性だろう。これまでゲイという反社会的とみなされていた場は、あえて求めなくても「独自」であることを自分自身に知らしめる動機だった。ゲイはいずれつぎのジレンマを自分に課さずにはおれないだろう。女性たちが差別と迫害を克服しつつ、徐々に復権を果たしてきたとき、皮肉なことにフェミニズムの思想が迷走しだしたのとよく似ている。いや、迷走でなく選択肢がふえ多様化したというべきか▼1970年代という本作の時代が、法律が壁になってはじき出されたゲイへの迫害と悲しみを際立たせている。法律のためというより、法律を運用する人間の考え方のためと言ったほうが正しい。主人公はゲイカップルとダウン症の少年である。ニューヨークのブルックリンで、薬物中毒の母親が育児放棄した事実に基づく映画だ。ドラグクィーンとしてステージに立ちながらシンガーを夢見るゲイのルディ(アラン・カミング)は、自分の歌を熱っぽい視線で聞いている弁護士のポール(ギャレット・ディアハント)とお互い一目惚れ。ルディのアパートの隣にダウン症の子マルコとジャンキーの母親が住んでいる。ある夜母親は大音量で音楽をかけたまま男といなくなり薬物所持で刑務所入り。マルコは施設に預けられた。ルディは子供を引き取りたいと、助言を求めてポールに会いに行くが、ゲイを隠しているポールはかかわりたくないから、家庭局に相談に行けと追い払う。翌日ポールが非礼を謝りにきた。ふたりは改めて強く結びつく▼ポールはルディの従兄弟だということにし、裁判所にマルコの監察権を申請して3人はいっしょに暮らす。マルコは初めて学校に通い、ポールはマルコの宿題を手伝い、ルディは毎朝食事を作り、寝る前にはマルコの好きなハッピーエンドの物語を読み聞かせた。ふたりは本当の親子のようにマルコを愛した。マルコの担任である先生は、しかし世間には理解のある人ばかりではないと危惧する。ルディはポールがプレゼントしたテープレコーダーでデモテープをつくり関係先に配った。幸福な1年が過ぎるころポールが従兄弟ではなくルディと恋人同士だとわかり、ポールは職場をクビになる。「オレはクビになった」とポール。ルディは動ぜず「よかった。偽りの人生を捨て本当の自分になるチャンスよ。くだらない理想論はたくさん。世界を変えたくて法律を学んだのでしょう。今こそカムアウトして世界を変えるチャンスよ」。同性愛者は子供を養育するのにふさわしくないと、家庭局はマルコを再び施設に戻そうとする。ゲイの愛情は人間の愛情ではないのか。ふたりは裁判に訴える。学校の担任は「おふたりほど愛情深い両親はいません。最初は懐疑的でしたがたいへん好感を持ちました」と、ふたりの日常を知る女性は「マルコはいっしょに暮らしたがっていましたよ、とても」と証言。しかし反対尋問に立った弁護士は男二人の性関係に的をしぼり、マルコが人形を大事にしていることまで、異常愛に毒された結果だとする。ポールが立ち上がる。「これはマルコの審理です。ゲイだの人形だの、マルコとはなんの関係もない。本題をお忘れです。マルコはどこかの施設に入って永遠に出られない子です。だれもマルコを欲しがりません。背の低い太った知的障害者を養子にする者はいないからです、わたしたちはあの子を愛している。面倒を見て教育し、大切に守りよき人に育てます。彼にチャンスを与えてください。それは過ぎた望みですか」ポールはいつか泣いていた▼しかし検察側は母親を繰り上げ出所させ、ルディたちが育てる必要はないとして引き離した。母親は麻薬常習にもどり男を引き込み、マルコは男が帰るまで廊下で待たされた。マルコは行くあてもなく夜の町を歩き始めた。ある日、検事局および判事や裁判の関係者に封書がとどいた。小さな新聞記事の切り抜きに添えた手紙があった。手紙には「記事にあるように、マルコは3日間家を探して歩いたすえ、橋の下で一人死んでいたそうです。マルコは心やさしい賢く楽しい少年でした。彼の笑顔はあたりを明るくしました。チョコレートドーナツに目がなく、ディスコダンスの達人でした。寝る前の物語が好きでせがむのはハッピーエンドでした…」▼監督と主演のアラン・カミングはインタビューで答えている。「これはダウン症の子供をめぐる法廷の闘争劇だ。ゲイへの差別や偏見は身の回りにある。法律でも冷遇されている。問題ばかり提議されるより、人を好きになるという普遍的な人間の姿を誠実に描くほうが効果的だと思った」。ルディの送ったデモテープがクラブのオーナーの目にとまり週2日の出演が決まる。ルディが歌うのは「アイ・シャル・ビー・リリースト」。アラン・カミングはベット・ミトラーの歌をあげていたが、ボブ・ディランが1967年に作詞作曲し、ベット・ミトラーのほか、ビートルズ、プレスリーら数えきれないアーティストによってカバーされてきた名曲。アラン・カミングはゲイであることを公表し、2007年グラフィック・アーティストの男性と同性婚をあげている。

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