女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年3月19日

特集 LGBT-映画にみるゲイ119
恋のモンマルトル(1975年 ゲイ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ラズロ・サボ
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ/ベルナデット・ラフォン

可愛げのあるドヌーヴ 

 1970年代という時代の制約があって、ラブシーンはあれが限界であったものの、どう見てもバレバレのゲイ映画なのに、そうだと指摘する人が不思議と少ないのよね、この映画。その原因のひとつはラブコメみたいな邦題にあるわ。内容はかなり辛辣で切ないのです。原題の「ジグ・ジグ」はつまりセックスのこと。劇中ドヌーヴとラフォンがデュエットで歌う歌のタイトルがそれ。簡単にいうと「やりましょう、やりましょう」と女ふたりで謳歌しているわけで、まあズバリそう題するわけにはいかなくても「ジグ・ジグ」のままにしておけば、もっとよくこの映画のイメージを伝えられたのに▼パリ随一の歓楽街ピガール(モンマルトルの片隅)にあるキャバレーの、美しい踊り子マリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)とポリーヌ(ベルナデット・ラフォン)は幼なじみ。マリーは少年院、ポリーヌは孤児院出身で身寄りのないよく似た境遇を助けあって生きてきた。いつかスイスに山荘を建てるのが夢だ。今いっしょに暮らしている猥雑な狭いアパートではなく、ヒュッテ風の家には広いリビングと大きな暖炉があり雪が降っても暖かく、窓の下を鹿が歩いているような大自然に囲まれている。マリーもポリーヌもその家を「わたしたちの子供」と呼んで夢を育てている▼彼女らの「育て方」はすこぶる現実的である。お金を作る方法は体を売る、つまり売春だ。君らのような良識ある女性がなぜそんなことを、と常連の「閣下」こと元警部ジャンは嘆くが、マリーはケロリ「キャバレーの人気者だけではお金にならないの。別の芸で身を助けるのよ。体は自分のものだし人をだますわけじゃないわ。一回20フラン。一日10回でいくらになる?」「家のために寝るのか」「お客が増えると家が建つのよ」マリーは大事そうに模型の家を運んでくる。「いいお家でしょ。わたしたちの赤ちゃんなの」。キャバレーがはねると近所の酒場に繰り出す。たちまち男たちが取り囲み、マリーとポリーヌは手帖を出して予約を取る。「順番よ、待って。土曜日の5時半ね、オーケーよ」自宅を使うのは「ホテル代節約」のため▼もうひとつの筋書きの流れは大臣夫人の誘拐だ。ある日マリーは買い物の帰り刑事に尾行されぷんぷんおこって帰ってくる。ポリーヌが風邪をひいて寝ている。添い寝して「暖かいスープでも作るわ」というマリーに「子供のころ父がしてくれたのだけど、背中に辛子を塗って蒸しタオルを当てるの」。マリーは大きな辛子の瓶詰めを出してくる。「お話もしてね。マリー。辛子がヒリヒリするから。歌ってよ。あなたの歌、好きよ。私の声は蛙だけど」マリーは背中に辛子を塗ってやりながら「看護師役とはわたしも落ちたものね。患者はブスで歌もヘタ、熱があって嫌われ者。髪の毛はくしゃくしゃで子供のように礼儀知らず」ポリーヌは笑っている。「今朝刑事に会ったわ。大臣の奥さんが誘拐されたのだと。160キロもあるのに…」「マリー」急に話を遮ったポリーヌは「いつもの技師が息子を連れてくるの」「あっそ。筆おろしね」「わたしが父親、あなたは息子をたのむわ」。これは伏線である。90分足らずの尺でこの映画は変化に富む▼マリーと別れたばかりに酒に溺れた元医師は、よりを戻そうと毎晩酒場に現れまといつく。しみだらけのシャツにどろどろのマフラー、汚らしくのびたひげは鼻汁で濡れそう。マリーに抱きつこうとして他の男にはねつけられ屋根によじのぼって窓からマリーの部屋をのぞく。元警部ジャンはいつも生卵を脇の下にかかえていないと風邪をひくという風変わりな男。オペラの大ファンで、ヴェルディの歌劇「アイーダ」のキイを巡ってキャバレーのバンドリーダーと意見を交換するほどの玄人はだしだ。じつはこれが誘拐事件解決の「キイ」になる。刑事の妻は刑事の部下と不倫をしている。夫の留守中行為に及んだ部下は、風呂場の水道に人差し指を詰めて抜けなくなり、指を切って逃走する。刑事が帰宅してみるとバスルームは血だらけで、蛇口には指が詰まっているというブラック▼こういう小技を映画はつぎつぎ展開させながら、真相にたどりつく。家を作るお金をいっきょに得たかったポリーヌが、バンド4人組の企てた誘拐と身代金の話に乗ったのだ。マリーは激高し怒りながら泣く「あの家のためにわたしは体を売ったわ。でもわたしの体よ。あなたは心を売ったのよ、最低よ、軽蔑するわ。迷惑ばかりかけてもう我慢できない。歌もダンスも才能のないあなたのために、これだけ尽くしてきたのになぜ簡単に裏切るのよ」「わかっているわ、わかっているの、マリー。泣かないで、もう忘れて」警察がキャバレーに踏み込み、主犯のバンドリーダーは石油をかぶって焼身自殺。火がまわりてんやわんやのさなか元医者がマリーをめがけ発砲する。かけつけた刑事が男を射殺。弾丸はポリーヌに当たっていた▼ドヌーヴってけっこうグラマラスです。ステージは網タイツで登場、アフロの金髪、身長168センチ。特に脚が長いわけでも顔が小さいわけでもなく、際立ったスタイルではありませんが、トリガラみたいな今の女優さんたちと比べると豊かで堂々としています。相手役のラフォンも同じです。痩せていればいいってものじゃないですね。マリーはポリーヌを抱きしめ「愛している」と繰り返す。辛子を塗るシーンでもラフォンにさわることが、ドヌーヴは終始ニコニコしてとてもうれしそうでした(笑)。ドヌーヴはこのとき32歳です。本作の前に「反撥」「昼顔」「哀しみのトリスターナ」に出演し、人気実力ともフランス映画界のトップになっていた。女同士のラブシーンだろうとキスシーンだろうとこわいものなし。1980年代でさえ思いきったベッドシーンといわれた「ハンガー」をまつまでもなく、この映画ですでにあっぱれなLGBTフレンドリーぶりです。「わたしたちの家は幻だったわね」と虫の息のポリーヌに「また作ればいいわ。わたしたちはいつもふたりよ、わかるわね」「マリー。生きるのは賭けよ。あなたは家作りを続け必ず完成させるのよ。マリー。もういいの。眠いわ」「わたしをおいていかないで!」涙ぽろぽろマリーがポリーヌにすがるシーンは、いくらベタだとケチをつけたところでドヌーヴの迫力勝ち。歌も踊りもたいして上手でもないのに、めげず臆せず、ヘッチャラでやっているところに笑いました。ドヌーヴって美神とかミューズとかいわれ、それはそれでホントなのですが、案外性格に可愛げのある人ではないでしょうか。

Pocket
LINEで送る