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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年3月25日

特集 LGBT-映画にみるゲイ125
胸騒ぎの恋人(2010年 ゲイ映画)

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監督 グザヴィエ・ドラン
出演 グザヴィエ・ドラン/モニカ・ショクリ/ニールス・シュナイダー

快いセンチメンタリズム 

 この映画のオマージュの使い方って、クエンティン・タランティーノのお株をすっかり奪ったみたいね。グザヴィエ・ドランがスローモーションやポップな映像、それにノスタルジックな歌を使って叙情をかもす手法は、まるでやり手婆みたいに上手だわ。ファッションも60年代のフレンチ・テイストが、おしゃれな若い子らしく決まっている。「バンバン」やバッハの「無伴奏チェロ組曲」や、オードリー・ヘップバーンの写真や、ジェームズ・ディーンにマーロン・ブロンド、ポール・ニューマン。映像の視覚センスだけでなく意味ありげな映像の雰囲気が、なんでもないのにその気にさせる。セリフもこんな調子「あのアンドロイドはだれ?」「彼のママよ。名前はデジレ(欲望)。彼女、わたしが昔の主婦みたいだっていうの。自分はスポック船長の乳母? ブレード・ランナーの娼婦?」スポック船長は「スター・トレック」の宇宙船の船長です。グザヴィエが好きだったにちがいない昔の映画がどしどし出てきます。主人公ふたりがジェームズ・ディーンとオードリー・ヘップバーンのヘアスタイルで登場するにおよんでは、上出来の学芸会という感じでした▼ゲイのフランシス(グザヴィエ・ドラン)と25歳のキャリア・ウーマン、マリー(モニカ・ショクリ)は親友。ふたりはある日パーティで、ミケランジェロのアポロのような美青年ニコラ(ニールス・シュナイダー)に出会い、どっちも彼に恋してしまう。額にかかるブロンドの巻き毛、張りのある青い目、気高いまでにスジの通った鼻梁、厚すぎもせず薄過ぎもせず、閉じられていても語りかけてくる蠱惑的な唇。フランシスもマリーもたちまち心を奪われてしまった。この映画は、というより見た限りのグザヴィエの映画はときどき鼻持ちならぬ説明的なセリフがありますが概ねセンスがいい、それに彼の性格でしょうが、理屈っぽい映画を作りません。もっぱら感覚にうったえてくる映像でして、だから人物に関してはなにかというとすぐクローズアップする。後ろ姿の背中の一部とかお尻とか、正面の顔のド・アップとか、紋切り型の横顔とか。ラストでフランシスとマリーが並んで雨の中を歩く後ろ姿。マリーは、これが「昔の主婦」に間違われた理由か、と思い当たるレトロなブロック柄のジャケットとパゴタ傘、彼女はフランシスに「君は着るものが古いよ」といわれ「ヴィンテージだと言ってくれる?」とムキになるくらい、服選びに気合が入っています。フランシスはフランシスで、こまめにショーウィンドウを覗きブティックに入り、今風の若者らしく小粋なジャケットやステッチの入ったショートブーツで身を固める。またそれをグザヴィエはいちいちアップで映すのだから、おしゃれカタログみたいな、つまり前作「マイ・マザー」よりぐっとくだけた映画になっています▼フランシスとマリーはニコラを巡って等距離でつきあう。ニコラという惑星の軌道をまわる衛星みたいなものである。肝心のニコラは魅力的だがいっこう直接行動に出る気配はない。フランシスとマリーが行為するのは本命のニコラではない男である。フランシスはニコラの匂いの残る下着に顔を埋めオナルのだから、思い一途もいいところなのに、3人いっしょに同じベッドで寝るだけ、それ以上はなにもない。従ってだんだんこの映画は退屈になってくる。いつまで仲良し三人組の青春をバカみたいに見せられるのだろう。グザヴィエもそろそろと思ったのかフランシスにアクションを起こさせる。彼はニコラに「君といっしょにいたいのだ。いっしょにいたら楽しくてしかたないンだ」。まあ実に正直な告白で好感もてまくり。それに対しニコラはただ一言「ぼくはゲイじゃない」つめた~▼マリーのアクションはこうだった。道で会ったふたり。マリーの話を途中でさえぎったニコラは「その女ともだちって君の恋人?」「ちがうわ」とマリー。ニコラは無関心な目つきになり「ごめん。鍋を火にかけたままで来たから帰らなきゃ」。なんと。鍋と比べられて我慢できる女がいるだろうか。そうか。女と別れるときはこういえばいいのか。フランシスの嘆きは大きい。「もう二度と彼のように愛せない。セックスの、肉体の、というンじゃない。大切なのはだれかのとなりでめざめることだ」。さんざん悲しんだり怒ったりしたフランシスとマリーが、ニコラぬきでお茶する。いろいろあったがふたりはやはりいい友だちである。また魅力的な男にいっしょに恋しそう。ふたりが通りにでると雨が降っている。マリーはパゴタ傘をさしてさっさと歩いていく。フランシスが後ろからマリーにおいつく。マリーはフランシスのほうをみないまま、傘をさしかけてやる。ここでまたもや流れる「バンバン」まったく手際のいいセンチメンタリズムね。いくら別れがせつないと言ったってこの若さだからね、現実には心配することなにもないのだけど。

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