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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2015年3月27日

特集 LGBT-映画にみるゲイ127
赤い航路(1992年 ゲイ映画)

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監督 ロマン・ポランスキー
出演 ヒュー・グラント/クリスティン・スコット・トーマス/ピーター・コヨーテ/エマニュエル・セニエ

 壮絶ですね。陰極まれば陽となるというけど、究極の愛って変態の一種なのでしょうか。少なくともこの映画ではサド・マゾの航路が二人の愛の旅路なのよ。相手を痛めつけなければ確認できない愛情なんてインチキくさいと思うのは余計なお世話で、本人たちには自然な世界なのよ。車椅子のオスカーの台詞がふるっているわ。「君ら夫婦の愛は健全で退屈だ。倒錯したセックスが卑猥だと? 君は女を崇拝したことがあるか」冗談じゃないわよ。痛い目にあい虐待されてまでだれが崇拝してほしいのよ。でもそれは凡庸の愛ということらしい。凡庸でも退屈でもいいけど、この映画にテンコ盛りなのは所詮「不毛」よ。ただしロマン・ポランスキーの描く不毛とは、乏しいとか欠損という意味ではないの。過剰で暴力的で人を傷つけ、落ち着く場所のない愛憎のぶつかりあいです。収まるところのない過剰であり、責めるほうも受けるほうも疲れきる愛情です。本作の主人公はパリにきた作家志望の40歳、莫大な遺産を相続した裕福な男オスカー(ピーター・コヨーテ)と、彼が出会った「運命の女」ミミ(エマニュエル・セニエ)、彼らと豪華客船で乗り合わせた結婚7年目のイギリス人夫婦がナイジェル(ヒュー・グラント)とフィオナ(クリスティン・スコット・トーマス)です▼バーでナイジェルはミミに声をかける。「退屈な男ね。こっけいなピエロだわ」初対面でこんな不躾なことを言うミミにナイジェルは毒気を抜かれる。そこへ夫オスカーが車椅子で忍び寄り「彼女に用心しろ。男を破滅させる女だ。僕は夫だ。この脚をみろ」「でも美しい人だ」「勃起したか。彼女のことが知りたいだろ」そういってオスカーはパリでの出会いを話す。純愛物語である。モンパルナスを走るバス96番でミミをみたオスカーは彼女が忘れられず96番のバスを張り込む。食堂のウェイトレスをしている彼女を探し出し、3日間オスカーの部屋にこもり昼も夜も愛しあい口にするのはクロワッサンだけ。オスカーが言うにはこうだ「ミミの花弁は上品で慎み深い。ところが愛撫されると野獣の本能を剥き出し、慎みをかなぐりすて食肉花としてわたしの指を貪欲に飲み込む」きかされるナイジェルこそいい面の皮のはずなのに「まいったな」なんて言いながら、オスカーの表現するミミの世界にのめり込んでいくのだ。男ってホントしょうがないわね▼オスカーがはまりこんだミミとのセックスを聞くに及んで、ノーマルな青年は茫然自失。オスカー「ミミの神秘は色褪せず肉体は甘美だった。頂点を極めた愛は下降線をたどる。だが新境地が開けた。ある日ミミはテレビにまたがり放尿を始めた。わたしはミミの股間めがけて身を躍らせた。目から火花が散った」こいつらは変態だ、倒錯だとナイジェルは思うがオスカーの話に吸い込まれる。オスカーの描写がドラマチックだ。「性のルビコンを渡り、わたしとミミは新しい性典を開いた。美女にいたぶられる無常の快楽。何日も部屋にこもりだれにもあわずプレイに明け暮れる」が「やがて食傷しSMは幕を閉じた」そうなると男は冷たい。「ミミへの情欲は冷めていった。破局だよ。愛情が消えないうちに別れよう」ミミは妊娠し「赤ちゃんを産むわ」「ありがた迷惑だ」と男。「わたしのどこが悪いの、言って」「君はどこも悪くない、君の存在に耐えられないのだ」…ここまで言ってやるか▼子供を中絶し男に「捨てないで」とすがるミミを「傷つけるのは簡単だった」。旅行に連れていってやると男は言い、飛行機に搭乗しミミだけ座席に残して降りてしまう。飛行機は飛び立った。「ミミから解放されわたしの女あさりが始まった。ブタのように女の肉体をむさぼり、ファックしながらつぎの獲物を狙っていた」そんな生活が2年。交通事故で入院する。ケガは骨折だけ。不意にミミが見舞いにきた。ベッドから男をひきずりおろし床に突き落とす。男は下半身麻痺。一生車椅子となった▼おりしも船は新年を迎えるカウントダウンでパーティのさなか、ナイジェルはミミをだきよせ「君を心から愛している」なんて言っているではないか! ミミは「奥さんは?」「何も知らない」とナイジェル。ミミがささやく。船酔いでキャビンにいるはずのフィオナがドレスに着替え会場に来て、さっきから「見ているわ」。おたおたする夫を尻目にフィオナは艶然とミミに近づきダンスの手を取った。オスカーが「これは意外だ。ミミを射止めたのは奥さんだ」密着して踊るふたりはキャビンに消えた。追おうとするナイジェルをオスカーは制止し「そっちに行くな。二度と立ち直れないぞ」でもナイジェルは行っちゃう。彼が船室で見たのは抱き合って眠る裸の女。台詞は刺激的だけど、行為としては全然エロチックじゃないこの映画で、女ふたりが視線をからませ、クリスティンがまっすぐセニエを見て、脇見もせずつかつかと歩み寄る。そこから始まる数分のダンスシーンの大胆なエロチシズム。この間ヒュー・グラントは完全無視よ。泣きそうなナイジェルにオスカーが「これほど美しい光景をみたことがない。愛撫に疲れ眠るニンフ。君の負けだ。フィオナは啓示を得た。神秘のベールを脱いだ」どう言われようとおさまらないのはナイジェルである。変態男の勝手な打ち明け話を聞いてその気になったばかりに、嫁はとんでもない性典を開いた。「このブタ」とののしるがオスカーは「愛に貪欲すぎた」言うなりミミを射殺し自分の頭を撃ちぬく。ナイジェルとフィオナは憑き物が落ちたように元の静かな夫婦に戻る。セニエがはまり役でした。「エディット・ピアフ~愛の讃歌」で、父親も母親もいなかった子供のピアフを、無条件で可愛がる娼婦ティティーヌを覚えておられません? 大歌手となったピアフが、忘れられない恩人として名をあげた女性。彼女を演じたのがセニエです。

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