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映画監督特集

2015年5月7日

特集 監督 ジュゼッペ・トルナトーレ 教授と呼ばれた男(1986年 事実に基づく映画)

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監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 ベン・ギャザラ/ラウラ・デル・ソル

暴力と支配 

 原題は「カモッラ」。映画のなかで何度もでてくる単語です。意味は「ナポリを拠点とする犯罪組織」。ナポリの監獄で発生した組織といわれ、地元の警察・政治家に強い影響力を与えました。本作における組織同士の激突と陣取りは、旧カモッラと新カモッラの勢力争いです。後年「教授」と呼ばれることになる男(ベン・ギャザラ)は、姉ロザリア(ラウラ・デル・ソル)と雨の中エンコした車を押していたところ、若い男たち数人に絡まれる。かれらのひとりがロザリアに手を出し、激昂した教授は相手をガンガンになぐりつけただけでおさまらず、窓ガラスに首をつっこませ殺してしまう。なんともはや血の気の多いうえに腕っ節が強く、姉思い、というか「ゴッド・ファーザー」にみるように、家族思いなのだ▼弟は30年のムショ入り。彼は法律に明るく受刑者たちの相談にアドバイスを与え「教授」と呼ばれるようになる。いろんな受刑者がいた。盗みの名人のサルヴァトーレ。詐欺師のドメニコ。強盗のステファノ。教授は字の書けないアルフレードのために恋人に代筆してやる。「愛していると書いてくれ。いっしょになりたい。断れば殺す」。教授は念を押すがアルフレードは「そのまま書いてくれ」と頼む。教授は刑務所でカモッラを作り、絶大な権力を所長や職員にふるっているマラカルネと対決し、アルフレードやサルヴァトーレを仲間に自分の新カモッラを組織し、マラカルネを殺す。全員見て見ぬふりである。釈放になるアルフレードに教授は姉が差し入れてくれた新調のコートをやり、姉を訪ねていけという。アルフレードの訪問を受けた姉は、苦しい家計の中から当座の金を用立ててやる。「ロザリア様」アルフレードは辞を低くし「わたしとわたしの家族はあなたに忠誠を誓います。どんなこともやります。おいいつけください」▼刑務所では教授の権力はますます強くなった。「姉さん、家に金はいくらある」。ロザリアが答えると、ある手下の息子に学費をだしてやると約束し「一流の弁護士になっておれを弁護しろ」。面会にきたロザリアは「つぎからつぎお金の要ることばかり。どうするつもりなの」「姉さん、人生は笑顔だよ」。教授に言わせれば「賄賂、ゆすり、ショバ代は、みなが豊かになるために必要だ。厳しく平等な掟をもつ組織を作らねばならぬ。裏切った奴は命で償い、忠実な者は報われる組織だ。収益は構成員とその家族に、残りは投資し、旧カモッラの連中には、やつらが平和を望むなら税金を払ってもらう。われわれ新カモッラに必要なものは完璧な組織・司法と警察を買収する充分な資金・全員の命は組織がにぎっているという教えだ」。鉄壁の組織力で教授は刑務所にいながら勢力を拡大していく。アルフレードは壁の外で実行部隊を指揮する。ロザリアは朝から晩まで陳情の処理に忙殺される。ある日夕暮れになって少女だけが残っていた。ロザリアが部屋にいれわけをきくと「男がつれてくる友達にまで相手をさせられ、ずっと稼がされてきた。だれかに言えば殺すと」言葉を失うロザリアに「ロザリア様」アルフレードが低く声をかけた。青ざめて黙ったままの彼女に「承知しました」とだけ言い残して去る。もちろん殺しに行ったのである▼法律の勉強をさせた少年は青年弁護士となり、教授を精神異常にして刑務所から病院に移し、手下は病院を爆破してボスを脱獄させた。教授は少年の日、家の前にたって「この家を買う」と誓った家(というより城館)を手に入れ、姉をつれてくる。「全部で365室ある。1日1室使って1年だ。みな姉さんのものだよ」この弟はよほど姉が好きらしいのだ。しかし思うままにふるまえる余りにも大きな権力を得た代償として、教授は失ってはならないものを失う。正しい判断力である。隠れ家を襲われた教授は、そこを知っているのはアルフレードだけだということから、彼が裏切ったと思う。刑務所に入ったアルフレードのもとに教授の刺客が来る。アルフレードは「教授に伝えろ。おれは裏切っていない。やれ」いっさい抵抗せず刺されるままになって死ぬ▼彼の妻は昔アルフレードが刑務所からラブレターを送った彼女だ。出所した彼は女にあい、求婚し断られ、その場で女を撃つ。肩か腕である。悲鳴をあげて倒れた女に「本当に殺す。おれといっしょになるか」と迫りさらに足を撃つ。こういうものすごいプロポーズで結婚したのである。妻は復讐を誓った。裁判の証人にアルフレードの妻が立つと知った教授は妻も息子も(教授が名づけ親にもかかわらず)殺させる。アルフレードというキーマンを失った組織は鉄の規律を崩し、解体していく。ロザリアも教授の暴走に疲れ果てる。孤島の刑務所に移送された教授の面会にきたロザリアは幹部の名をあげ「彼は裏切ったわ。死んだか、裏切ったか、これから裏切る者ばかりよ。わたしの人生はあなたの命令ばかり。あいつを殺せ、こいつを殺せ…」。教授は独房で幻想の日を送る。戸外に与えられた空間は高い塀に囲まれた、空の見える細長い通路だけ。彼は歩きながら声高に言う「わたしの軍団が助けに来る。復讐の日だ。大虐殺するのだ」▼ジュゼッペ・トルナトーレが30歳のときの監督処女作です。そもそも処女作に3時間の長尺を充てるというところに、彼の叙事する自信が表れています。

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