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特集「ザ・クラシックス」

2015年5月15日

特集ザ・クラシックス シシリアン(1969年 犯罪映画)

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監督 アンリ・ヴェルヌイユ
出演 ジャン・ギャバン/アラン・ドロン/リノ・ヴァンチュラ

三人の男 

 主役の3人にそれぞれ因縁があります。1960年代といえばフランスの、といわず映画の黄金期です。とくにアラン・ドロンは日本で絶大な人気を誇り、フランス映画のドル箱となっていました。ジャン・ギャバンはドロンの後方支援の形で本作の3年前、同じアンリ・ヴェルヌイユ監督で「地下室のメロディ」を撮っています。リノ・ヴァンチュラの出世作はフランスのギャング映画の古典である「現金に手を出すな」でした。当時レスリング選手だったリノが負傷して試合に出られず、その間映画に出演した。共演したギャバンが素質を認めて映画への転身をすすめ俳優リノ・ヴァンチュラが生まれました。リノはアラン・ドロンと「冒険者たち」で共演します。ラストは語り継がれる名シーンです。無骨な男リノが、被弾したドロンを抱き上げ「レティシアはお前が好きだったのだ」と教える。ドロンが虫の息の下で言い返す「このうそつきめ」。どっちもしびれるくらい、いい男でした▼ジャン・ギャバンはシシリアのギャングのボス、ヴィットリオを演じます。シシリアの島という島を買い占め、悠々と老後を暮らしたいと思っている。「5月の蝿」と呼ばれるサルテ(アラン・ドロン)の脱獄を手伝う。サルテがもちかけた5000万ドルの宝石の強奪話にのり、ニューヨーク・マフィアの組長トニーを仲間に引き入れる。パリで開催する宝石展に出展する世界的な宝石を、ニューヨークに空輸中飛行機ごと奪う大胆な計画を立てる。サルテはヴィットリオの息子の嫁と不倫関係になる。シシリア人の家族の結束は固い。ヴィットリオはサルテを許さず、ハイジャックは成功したがサルテへの分前はなし。ニューヨークからパリにもどり、金を取り返すために現れたサルテの足元に、ヴィットリオは現金入りのケースを投げる。中を確かめケースを取り上げようとしたサルテを射殺、いっしょにいた嫁も殺す。情け無用である▼なにごともないふうに家に戻ったヴィットリオを待っていたのはゴフ警部(リノ・ヴァンチュラ)だ。サルテの脱獄からハイジャックに至るまで、後手にまわり煮え湯を飲まされていた。警部はヴィットリオに近づき、コートのポケットにこげた穴があいているのを見る。拳銃をにぎったままコートの下から撃ったのだ。観念したヴィットリオは「では行こうか」と警部を促す。ゆっくりとドアに向かう背中に孫が声をかける。「おじいちゃん、何時に帰る?」ふりむいたおじいちゃんは「うむ。今夜は帰らないよ」とやさしく答える。クマみたいにノソノソ動くジャン・ギャバンですが、父親は下町のミュージックホールの役者、母親は歌手、ギャバンもまた若くして芝居の道に入り、歌もダンスもああみえて筋金入りです。名作「望郷」のシャンソンは自分で歌ったほどです。リノの警部も男の中の男である。そういえば出演する3人の容貌上の特徴として、額に刻まれた深いしわがあります。アラン・ドロンの眉間の縦ジワ2本は当時からもはやトレードマークとなっていました。ジャン・ギャバンは豊かな白髪、太い数本の額のしわはまさに男の履歴書である。リノ・ヴァンチュラの苦みばしった表情は額のシワによってより引き立つ。彼はハンサムどころかお腹は出て背は低いほう。ずんぐりと風采のあがらないスタイルなのに、男の精気とか気概とかいうオーラを放っています。関係ないことですがセシル・ド・フランスは彼の大ファンで、はじめて生まれた男の子に「リノ」と名づけたくらいです▼この映画でアラン・ドロンはジャン・ギャバンにコテンパンにやられる。公開当時アラン・ドロンがものもいわず撃ち殺されるラストに、御大ジャン・ギャバンに花を持たせたのだともっぱら言われたが、そうかしら。アラン・ドロンのマゾ好きを思えば喜んで死に役を買ってでたのだと思うわ。彼は悲劇の男が好きなのよ。本作でも一匹狼の殺し屋です。甘いマスクに「五月の蝿」という、悪のいやらしさを感じさせる異名もドロン好みです。

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