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映画監督特集

2015年5月27日

特集 監督ロバート・ワイズたたり(1963年 ホラー映画)

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監督 ロバート・ワイズ
出演 ジュリー・ハリス/クレア・ブルーム

異界愛

ロバート・ワイズには「サウンド・オブ・ミュージック」もある、「砲艦サン・パブロ」もある、「ウェスト・サイド物語」もある、これらオスカー受賞あるいは候補作を、すばらしいと思うのは当然ではあるものの、その一方でどうしてもあげずにおれないのが「キャット・ピープルの呪い」に始まる一連のホラーものだ。「死体を売る男」「生まれながらの殺し屋」、本作の後の「オードリー・ローズ」。この監督にはどうにもこうにも、健康度満点の映画だけでは我慢できない、異界好みの性癖があると思えるのだ。「アンドロメダ」や「地球が静止する日」にしても、宇宙という、地球の日常とかけへだたった領域を異界といわずなんという。特に本作はワイズの異界ものの傑作だ。優れた作家はどこかに他の追随を許さぬものを持っているが、ワイズの場合はB級ホラーの完成度の高さだと思う。ヒッチコックのサスペンスともちがう。ワイズの演出はもともと控えめだが、白黒スクリーンが好きなことではワイズもヒッチに劣らない、黒い空を銀色の雲が奔るように流れるシーンの不安感や、尖塔がそそりたつゴシックふう城館の、人一人いない孤絶空間は「異界への進入路」を思わせるに充分だ▼控え目な演出と書いたが、この映画の暗示のうまさは秀抜だ。ライティングによる陰影の深み、暗闇の誘惑、効果音、風のざわめき、半開きのドア、いろんな暗示を駆使して「好きなように演出できた」とワイズは本作に自信のほどをうかがわせている。いい映画にはそれまでにない試みがある、というのも彼の持論であり、本作におけるその部分はゲイだ。本当は「シネマ」の「ゲイ特集」に収めようかと思ったほど、1960年代においては「控えめにせざるをえなかった」のであるが「脚本にはもっとしっかり、ベッドで抱き合うことも描かれていたが、映像にしなくともわかること」として、これまたムード満点の暗示にとどめている▼ゲイを演じる女優は、超自然現象研究家のマークウェイ博士の心霊調査記録係として幽霊屋敷に招かれたふたり、エレノアのジュリー・ハリスとセオドラのクレア・ブルームである。ニューイングランドの人里離れた片田舎の丘の上の豪壮な城館、90年前に建ったクイーン家の家は呪われた屋敷だった。クイーンの妻は来る途中馬が暴走し、大木に馬車は激突、夫人は遺体となって屋敷に入った。夫ヒューと幼い娘アビゲールが残されヒューは再婚した。二人目の夫人は階段から転落死した。ヒューは旅行中事故で水死した。アビゲールは成長し、成長しても保育室で暮らし、一歩も部屋の外に出ず年を取った。彼女は寝たきりになり村娘が介護にあたったが、雇い主が必死で助けを求めているときベランダで男と逢引していた。その村娘が全財産を相続したが、村人は彼女が女主人を殺したのだと噂した。まもなく彼女は精神に異常をきたし、屋敷の頂上の部屋で首を吊った。彼女の遠い親戚が屋敷を相続し、呪われた幽霊屋敷といわれる家の真実を解明したいと超自然現象の権威、マークウェイ博士に調査を依頼した。博士が助手に選んだのは前述の女性ふたりと、依頼人の甥、ルークだ▼エレノアは10歳のとき「ポルターガイスト」の現象に見舞われたことがあった。セオドラは超感覚的な鋭い感受性をもっていた。ルークはこの屋敷の不動産価値を調べにやってきた。3人はサイコキネシス(念動力)が実際にこの家にあるかどうか半信半疑だったが、エレノアは危険だとわかりつつ拒否しがたい力で家に引きつけられていく。いつしか博士に惹かれているエレノアを、セオドラは冷たく眺めるが、エレノアが家に飲み込まれていくような気配に危機を感じ家から逃がそうとする。博士の妻グレイスが屋敷に夫を追ってきた。彼女は超自然現象など歯牙にもかけない合理主義者だ。そんなものどこに生じるのかと訪ねる夫人に、エレノアは嫉妬の裏返しのように、アビゲールが死んでから開かずの間になっている保育室を教える。夫人は行方不明になる。博士をはじめエレノア、セオドラ、ルークたちは探しまわるが行方はわからない。家の霊はますます強くエレノアに近づき、博士らは無理やり彼女を車にのせ出発させたが…エレノアの車は奇しくも90年前、ヒュー夫人が事故死した同じ大木に激突して死亡。エレノアと入れ替わるようにグレイスが傷だらけで姿を現した。博士がいうには「家は満足している。少なくとも当分は」▼もともと犯人とか謎とかではなく、スキャンダル、殺人、精神異常、自殺といった出来事がふくらませていくイマジネーションを、いかに効果的に恐怖に結びつけるかです。健全で健康で、関係者が口をそろえて「穏やかな紳士」というロバート・ワイズのどこに、こんな嗜好があるのか「?」と思うのですけど、好きなのね、彼も変態が。

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