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映画監督特集

2015年5月30日

特集 監督ロバート・ワイズオードリー・ローズ(1977年 ホラー映画)

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監督 ロバート・ワイズ
出演 マーシャ・メイスン/ジョン・ベック/アンソニー・ホプキンス

人は生き返る

1970年代には子供のホラー映画が続々と作られました。たいていの場合子供に霊が取りつくのですが、どこからともなくやってきた異星人が人間をたぶらかすとか、母親の強い念力が悪魔的な子供をつくるとか、いま見ても見応えのあるサイコホラーの優品が少なくありません。順不同で例をあげればほとんどの方が、このうち1本くらいはみておられると思います。みなヒット作です。「ローズマリーの赤ちゃん」(監督ロマン・ポランスキー)、「ラビッド」(デヴィッド・クローネンバーグ)、「エクソシスト」(ウィリアム・フリードキン)、「オーメン」(リチャード・ドナー)、「ザ・チャイルド」(ナルシソ・イパニエス・セラドール)、「ザ・ショック」(マリオ・バーバ)。後者2本はスペインとイタリアの映画です。大げさにいえば「子供ホラー」の製作は世界的な傾向にあったわけです。そこへロバート・ワイズの本作が加わりました▼テーマはリインカーネーション(輪廻転生)つまり霊は生まれ変わり、不滅であるということ。交通事故で車に閉じ込められ焼死したロンドンの5歳のオードリー・ローズが、11年後ニューヨークでアイビーという少女に生まれ変わっていた、それを調べあげた父親エリオット(アンソニー・ホプキンス)は、アイビーの父親ビル(ジョン・ベック)と母親ジャニス(マーシャ・メイソン)に、ストーカーと間違えられながらも接触、訪問をとりつけきちんといきさつを説明するが、自分の娘が他人の子の生まれ変わりだといわれ信じる親はいない。特に父親はエリオットを変質者扱いし、警察に突き出すと言う。しかし母親はアイビーが誕生日を迎える前に限って夢にうなされていたことに思い当たる。エリオットの話によればオードリーは炎上する車で苦しみながら無念の死をとげた、仏教の言葉で言えば成仏していない霊がアイビーのなかで生きている、このまま放置しているとアイビーが狂い始めるという。まもなく錯乱を起こしたアイビーは、冷たい窓ガラスに触れたのに、火傷を負っていたという現象を現す、アイビーに事故の日の苦しさがよみがえっているのだ▼オードリーの霊を天国に帰し、アイビーを救うには親たちが力をあわせねばならないとエリオットは言うが、パパは相手にしない。ママがエリオットの肩を持つのも気に入らない。エリオットは誘拐罪で訴えられ裁判に。この法廷は霊魂があるかないか、生き返りはあるかないか、格好の話題をマスコミに提供することになった。はたしてアイビーの中にオードリーはいるのか。精神医学の権威が逆行催眠でアイビーの記憶をさかのぼることになった。ママは反対だったが、パパはエリオットへの対抗策として承諾してしまったのだ。これが悲劇を呼んだ。結論をいうとアイビーは無理やり逆行する催眠誘導に耐え切れずショック死するのである。精神科医のアイビーにほどこす指示は、素人がみても過酷で、もっと先、もっと先にはなにが見える、では君が生まれる前に行こう、そこはお母さんの胎内だ、君はだれだ、などと尋ね、本人の記憶にないことを脳から強制的に引きずり出すのである。ママは娘がのたうつ苦しみを見て、涙ながらに耐える。見ている方も「やめてやれ、くそヤブ」といいたくなる拷問である▼思うのだけど、パパにしてもママにしても、まだ30代か、せいぜい40になるかならないかの親で、それに子供はひとりだけでしょう。考えることが切羽詰まってこんな野蛮な方法しか浮かばなくなるのよね。父方でも母方でもいいから子供を何人も育てたおじいちゃんやおばあちゃんがいて「生まれ変わりだって? へ。そういえばどっかで似たようなこと、聞いたこと、あるよな、お前」「ありますよ、ほらあそこの末っ子がいきなり妙なこと言い出したときでしょう、あのときはこんな方法で助けたのよね、おじいさん」とか、でなければ黙々と編み物しながら「そんなことやめたほうがいいわ」と静かに別の解決策を示すミス・マープルみたいなおばあちゃんがいれば、死にまで至る最悪の状態は回避できたように思う。だいたいこの映画で子供が、アイビーがオードリーの成仏する代償として死ななければならないのが気にくわないのだ。霊魂が不滅だが、ひとり助けるために生きている人間をひとり犠牲にするなんて、そんな不公平があっていいのか、おい。霊とか魂というのはそもそも人間の一部ではないのか、いやさ、人間の肉体は霊の一部ではないか。ワイズ監督もこのあたりになると解釈が行き詰まったらしい(だれでもそうなると思うが)。「終わりは存在しない。魂は誕生とともに死を超越してとどまることなく未来永劫不滅である」というバガヴァッド・ギーター聖典を引用してエンドにしている。アイビーの霊がどこかで生き返る輪廻転生の思想に母親が救われる、それをきちんと描いたのは、監督はやっぱり魂というこの世のものではない「異界」の存在が好きなのね(笑)。

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